「GHOSTWIRE: TOKYO」は、Tango Gameworksが開発するオープンワールドアクションアドベンチャーゲームです。
東京の人々は、謎の般若面の人物が引き起こした大規模な超常現象により一瞬にして消失してしまいます。
プレイヤーは、数少ない生き残りの人間・暁人となり、元探偵の亡霊・KKと手を組み、人体消失の原因を探り、神話や都市伝説の世界から現れた邪悪なるモノたちに抗い、超常の混沌から東京を救います。
リリースと同時配信の無料アップデート「蜘蛛の糸」では、新しい探索エリア、ムービーシーン、ゲーム品質の改善などのゲーム本編のアップデートに加え、新モードとなる「蜘蛛の糸」モードも追加。
同モードは、新たに制作された130以上のレベルからなる30階層の試練をクリアして最奥までたどり着くことをめざします。
Tango Gameworksは、「バイオハザード」シリーズの生みの親である三上真司を中心に2010年3月にTangoとして設立され、同年10月にゼニマックス・アジアと合併してTango Gameworksと改名。
Tangoは、三上真司がアルゼンチンタンゴが好きで、タンゴの楽曲は明るい側面と暗い側面を持つという厚みがあり、同社も楽しさとストイックさを併せ持ちたいという気持ちを込めて命名されています。
同社は、クリエイター目線でのゲーム創りにこだわり、世界に誇れるような日本のゲームを開発、ゲームに対する愛では世界一になれる開発スタジオをめざしています。
また、マイクロソフトが2021年3月にゼニマックスを買収したことで、同社もマイクロソフト傘下の開発スタジオ入り。
本作は、2022年3月25日に「PlayStation 5」と「Steam」で発売されたものの、時限独占契約が終了した2023年4月12日に「Xbox Series X|S」でも発売、それと同時に「Xbox Game Pass」に対応しています。
本作の主人公は伊月暁人。東京の大学に通う22歳の学生です。同居する妹の麻里がアパートの火事で渋谷中央病院に運ばれたためバイクで向かっていたものの事故に遭ってしまいます。
そこに現れたのが体を持たない亡霊のKKで、暁人に憑依することで街を救う戦いに挑もうとし、妹のもとへと駆けつけたい暁人もそれに同意します。かくして2人の戦いが始まります。
その舞台となるのが東京ですが、渋谷駅を中心としたオープンワールドになっており、超近代的な街並み、古式ゆかしい寺社仏閣、狭く入り組んだ路地裏などが一体になっています。
これらは驚異的なディテールとレンダリングで描写されていますが、渋谷を忠実に再現したというわけではなく、ゲームを楽しむための舞台としてデフォルメされたものになっています。
そのため、私のように渋谷は何度も行ったり通ったりはしているという人なら渋谷をそのまま再現したと言われれば信じてしまいそうですが、そこで暮らしたり働いたりしている人ならそうではないということが分かるかもしれません。
とは言っても、渋谷駅やスクランブル交差点、渋谷駅周辺の商業施設などはそれとなく描かれており、忠実に再現されたかのようなリアリティを十二分に感じながらプレイすることができます。
本作はオープンワールドアクションアドベンチャーゲームですが最初から行動できる範囲は限られており、メインミッションをこなして鳥居の戯れを浄化することで行ける範囲がどんどんと広がっていきます。
しかし、その範囲がどこまで広がろうが、東京は夜のように暗く、雨が降ったりやんだりしてじめじめとしています。
このオープンワールドが驚異的なディテールとレンダリングにより忠実に再現されたかのよう美しく描かれているのなら、日中や晴天での景色を見てみたいものだとも思います。
しかしながら、和風ホラーゲームシリーズの傑作である「零」を見ても分かる通り、このじめじめ感が和風ホラーを和風ホラーたらしめているものであり、ここは外せなかったのかもしれません。
夜の雨降る古式ゆかしい寺社仏閣、狭く入り組んだ路地裏、住宅街の一角にある公園、ちょっとした規模の森などは、幽霊の格好のステージです。
もっとも、本作は和風ホラーゲーム的な怖さを感じることはそれほどないため、怖いゲームが苦手という人でも問題なくプレイすることができるはずです。
唯一の例外は学校の花子さんを題材とするサイドミッション「恐るべき子どもたち」で、夜の学校の中を探索することになります。
ホラーゲーム的な怖さはあまり感じない本作にあって数少ない怖さを感じられるサイドミッションで、かつて「プレイステーション」でリリースされた「トワイライトシンドローム」シリーズを思い起こす人もいるかもしれません。
マップはオープンワールドということで、シームレスに行き来することができるのですが、さすがに広大過ぎるため浄化済みの神社や猫又の屋台にファストトラベルすることができます。
また、ビルの屋上などの高所に上がれば、グライドで2秒から最大5秒滑空して上空から街の景色を眺めながらの移動も可能です。
そんな街は、数十万人の生活を支えていたビルや住宅、商業施設がひしめいています。商業施設は権利の問題もあって名前は変えてあるのですが、それがどこなのかはある程度は想像がつきます。
そして、ビルや住宅、商業施設は中に入ることができるものも少なからずあって、メインミッションやサイドミッションの舞台になることもあります。
マンションやアパートでは日本らしい暮らしを垣間見ることができ、オフィスも日本ならではの構成になっていたりして、不気味さがありつつもホームにいるような心地良さも味わえます。
今や日本の象徴とも言えるコンビニエンスストアに入ることもでき、屋台同様に店主の猫又から様々なアイテムを買うことができるのですが、これもまた日本人にはおなじみのアイテムがそろっていて居心地が良くなります。
そんなマップ内には、そこかしこに幽霊が漂っています。この幽霊を形代で吸収し、公衆電話に偽装した魂転送装置でKKの仲間であるエドに転送します。転送された魂は人間として復活する処置が施されます。
転送した人数に応じた経験値が得られるし、実績の解除にもつながるため、ゲームを通して大きな目的のひとつになります。
ちなみに、救うことができる魂の数は渋谷の人口とほぼ同じ数になっているそうで、このあたりも遊び心にあふれています。
また、魂は、戯れにとらわれていたり、宙に浮く座敷牢に閉じ込められていたり、マレビトの集合体である百鬼夜行を倒すことでも姿を現します。
幽霊を救うという行為ひとつとっても、このように様々なバリエーションが施されていることが本作の楽しさにつながっています。
さらに、マップ内のそこかしこに地蔵や狸が隠されています。地蔵を見つけると霊力(エーテルショット攻撃のためのエネルギー)の最大値が上昇し、狸も発見するたびにお礼がもらえますし、実績も解除できます。
地蔵や狸などの探し物は、神社の賽銭箱にお賽銭を入れたり、マップ内にいる犬や猫にエサをあげることで、その場所を教えてもらえる場合もあります。
犬や猫といった動物たちとの触れ合いも、ほっとできるひと時であるとともに、物語を進める上で大切になってくるため、ドッグフードを切らさないようにしておきたいものです。
もっとも、マップ内の移動や探索、探し物は、一筋縄でいくわけではありません。マップ内には、マレビトと呼ばれる負の感情から生まれた妖怪が徘徊しており、その大半は敵対的で暁人の姿を見つけると攻撃してくるからです。
マレビトには、ビジネスマン(影法師、荒法師、剛法師、赫法師)やOL(鉈女、焔女)、守衛(狩影)、従業員(睡飢童子、因率、露女)、学生(喜奇童子、餓鬼童子、快喜童子)、子供(雨童、血童)などがいます。
そのバリエーションの違いにより、それぞれの攻撃方法や攻撃力、防御力も異なっており、こちらの攻撃方法・防御方法も臨機応変にしなければなりません。
こうした人たちが負の感情から生まれた妖怪になり、いそうなところにいることで、渋谷らしさ東京らしさがより実感できてリアリティを感じることができます。露女の制服も、東京タワーで働く女性アテンダントの制服と同じだそうです。
街のそこかしこには、こうした通常の人間を越えた、まさに妖怪と言えるマレビトもいます。
攻撃的なのは、照法師、髪姫、虚牢、口裂、裂紅鬼、白無垢、黒土女、不見鏡、血套法師、痩術鬼、猫多羅、槌蜘蛛、反魂、などです。
これらのマレビトは、遭遇する機会こそ一般的なマレビトよりも低いものの、攻撃力や防御力は一般的なマレビトよりもはるかに高いため注意が必要です。
逆に、人間に無関心なのは、河童、天狗、塗壁、鬼、座敷童子、唐傘小僧、ろくろ首、木霊、一反木綿、鎌鼬、猫又、などです。その多くがまさに妖怪で、水木しげるの世界だったり、子供の頃に見聞きしたりして、なじみがあることでしょう。
これらは、捕まえて解放する対称だったり、ゲームの進行に役立ったりします。天狗は高所に居てビルの屋上に上がるのに重宝しますし、猫又はコレクション集めに欠かせません。
本作は、マレビトだけでもこれだけのバリエーションがあり、それが単にストーリーを進めるだけでなく、オープンワールドを堪能することを楽しくも恐ろしいものにしているのです。
マレビトに対する攻撃は、右スティックをクリックする通常攻撃と、右トリガーを引くエーテルショットがあります。
エーテルショットは、風属性、水属性、火属性があり、右トリガーを押し続けて離すチャージショットも使えます。
エーテルショットは、スキルアップすることで攻撃範囲や威力を強化することができ、最初は恐る恐る戦っていたマレビトも物語が進むにつれて難なく倒すことができるようになります。
また、ジャストガードは攻撃を受ける瞬間にLBボタンでガードして攻撃を跳ね返せますし、即浄は敵に気づかれずに背後から近づいて左トリガーを引けばほとんどのマレビトを一撃で倒せます。
コア引き抜きは敵の外殻を破壊して現れたコアを左トリガーで引き抜いて一気に倒せますし、弓や御札を使った攻撃も行えます。
本作の戦闘が単調という声も聞こえてきますが、オープンワールドアクションアドベンチャーゲームにおける戦闘と考えれば十分にバリエーションを持っていると言えるでしょう。
私も、ステルスアクションアドベンチャーゲームが好きなこともあり、ステルスを含めてどのように戦うかを考えるのが楽しく、戦闘が単調と感じたことはありませんでした。
座敷牢などは特に、マレビトが座敷牢に気をとられていることもあり、容易にマレビトの背後をとることができるため、即浄でマレビトを倒しまくるのは快感ですらありました。
こうしたオープンワールドを持つ本作はミッションクリア形式で進んでいきますが、大きく分けてメインミッションとサイドミッションがあります。
メインミッションは、ゲームを進める上で欠かせないもので全6章あり、4章まではオープンワールドの中を移動しながらクリアしていきます。
サイドミッションは、メインミッションの進行に合わせてアンロックされていくもので、大々的なものもあれば、あっさりと終了するものもあります。
しかしながら、サイドミッションはメインミッションに比べると幽霊や妖怪、都市伝説などを題材にしたものが多いだけに、ぜひともすべてプレイしてほしいところです。
メインミッションもサイドミッションも、KKのリードとアドバイスで進行するのですが、これが格好のガイド役になっています。暁人とKKの掛け合いも面白おかしく、物語に彩りを添えています。
また、収集系だけでも、勾玉を40個以上手に入れる、すべての御札を手に入れる、すべてのタヌキを探し出す、すべての名所を発見する、すべての地蔵を拝む、すべての種類の飲食物を手に入れる、収集品をすべて手に入れる、カプセルトイに50回以上挑戦する、すべてのコスチュームを手に入れる、すべてのボイスログを手に入れる、すべての楽曲を手に入れる、すべての数珠を手に入れる、すべての種類のマレビトをそれぞれ1体以上倒す、とやることは盛りだくさん。
これらを全部やるのは大変ではありますが、それだけこの世界を奥深く知ることができ、その過程で幽霊の転送やシンクロレベルの上昇、スキルの開放も行えるため、やらない手はないでしょう。
ストーリーは重厚かつ軽妙で、メインミッションの重苦しい雰囲気の中で前述した暁人とKKの掛け合いが緊張をほぐすものになっており、そこにKKの調査チームである凛子やエドが絡んできます。
凛子は、チームの現在のチームリーダーです。失踪した友人であるエリカを探しながら拠点から支援してくれる存在で、サイドミッション「終わりのその先で1-3」の依頼主でもあります。
このサイドミッションだけは4章のうちにプレイしないと終えることができないもので、内容的にも奥深いものになっているため、忘れずにプレイしておきたいところです。
エドは、技術屋で魂転送装置の開発者です。圏外にいるため姿を見ることはなく、公衆電話でのみ話すことができます。魂を転送した節目節目で軽い口調で励ましてくれるため、もっと魂を集めようという気にもさせてくれます。
般若は、東京の人体大量消失事件の元凶で、その動機や目的は謎に包まれており、それを解き明かし、彼を倒すことがゲームの最終目的になります。
彼のプロパガンダが渋谷スクランブル交差点の大型ビジョンから流れてくるのですが、この耳障りなプロパガンダにより彼の存在を否が応でも意識せざるを得ません。
開発チームの大型ビジョンがあるのだからゲーム内で活用しようというアイデアも、ゲームに奥行きを持たせるという意味で感心させられるばかりです。
ちなみに、ゲーム終盤で訪れることになる東京タワーの館内放送は、実際に東京タワーで館内放送をしている人が読み上げているそうです。リアルをデフォルメした中のリアルであり、予備知識としてプレイするとより楽しめることでしょう。
難易度は、通常のEasy、Normal、Hardに加えて、Tatariがあります。
Easy、Normal、Hardの考え方は一般的なゲームと同じで、難易度実績がないため私はNormalでプレイしました。
Normalだと、戦闘で負けることはあまりなく、ボス戦も一発でクリアすることができましたが、それなりの工夫と機転は必要です。
オープンワールドアクションアドベンチャーとして本作を楽しむならノーマルでプレイするといいでしょう。
Tatariは、一瞬の判断が生と死を分ける緊張感を味わいたい人向けで、取得経験値が0になります。探索はあまり興味がないし、戦闘を楽しみたいという人に適しています。
もっとも、この手のオープンワールドアクションアドベンチャーの大きな楽しみのひとつがキャラクターの成長要素であるため、本作を満喫したいならノーマルかハードでプレイしたいところです。
リリースと同時配信された無料アップデート「蜘蛛の糸」は、冒頭に記したように新たに制作された130以上のレベルからなる30階層の試練をクリアして最奥までたどり着くことをめざすものです。
この30階層は、本編がオープンワールドなのに対し、それを大胆に切り取ったクローズドエリアで展開されます。マレビトやアイテム類の数も決まっており、画面上に明示されています。
個人的には、何度かプレイしたものの面白みが感じられなかったし、2つある実績も解除にはかなりの時間が必要になりそうだったので、途中までしかプレイしていません。
実績は64/66と本編の実績はすべて解除しており、「蜘蛛の糸」関連の実績も解除すればすべてコンプリートということになるのですが、楽しく感じないことに膨大な時間をかける気にもなれません。
もっとも、私が楽しく感じないというだけで、「バイオハザード」シリーズの「ザ・マーセナリーズ」や「CALL OF DUTY」シリーズの「ゾンビモード」は大好きという人なら楽しめるのではないかと思います。
ここまで本作についてあれこれと見てきたように、オープンワールドの作り込みやメインミッション、サイドミッション、収集系、ストーリー、人物描写、幽霊・妖怪など、どれをとっても想像をはるかに超えるものに仕上がっています。
オープンワールドアクションアドベンチャーとして一級品であり、「grand theft auto」シリーズ、「ASSASSIN’S CREED」シリーズ、「WATCH DOGS」シリーズに匹敵する作品になっていると言えるでしょう。
そして、オープンワールドアクションアドベンチャーとして一級品であるだけでなく、テレビゲーム史に名を残す傑作と言っても過言ではありません。
Tango Gameworksが標榜する世界に誇れるような日本のゲームとして胸を張れる存在になっているわけです。
アクティブなXboxユーザーの多くが加入する「Xbox Game Pass」で手軽にプレイすることができますし、ぜひともこの圧倒的なスケール感を味わってほしいと思います。
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