【GENRE】
育成シミュレーション
【PUB./DEV.】
マイクロソフト/RED ENTERTAINMENT/Rocket Studio
【RELEASE DATE】
2003/4/24
【OUTLINE】
同居型ロボット育成シミュレーションです。東芝が開発した最新の日本語音声合成ミドルウェアを使用し、合成音声で発話する美少女型ロボット「P.A.S.S.」と、「Xboxボイスコミュニケータ」を使って会話しながら、彼女を育成していきます。
「P.A.S.S.」とは、”Personal Assist Secretary System”の略で、巨大企業Ark社が開発した最新型のライフスタイル順応型サポートロボットです。
プレイヤーは、Ark社のテストモニターの抽選に当選し、電子メールで送られてくるArk社の指示に従って、「P.A.S.S」に会話の教育を施していくことになります。
2002年9月2日に製造された「P.A.S.S」は、最初は何も喋ることができませんが、コミュニケーションを重ねるうちにたくさんの言葉を覚え、最終的には人間と同等の意思の疎通が図れるようになるまでに成長します。
また、あらかじめ録音された音声ファイルを再生するのではなく、合成音声技術を採用することにより、プレイヤーの名前や仕事、趣味などの個人情報に柔軟に対応して、コミュニケーションを図ることが可能になります。
更に、「Xbox」内蔵クロックと連動しており、実時間に沿ってゲームが進行していきます。
【GAME MODE】
New Game
ゲームを最初から始めます。まず最初に、「姓名」、「生年月日」、「性別」、「職業」、「好みのジャンル」を入力していきます。
入力できない名前も少なからずあるため、自分の名前が入力できない場合は似たような名前を選ぶといいでしょう。
すべての入力が完了したら、いよいよ育成のスタートです。
ゲームは、「P.A.S.S.」を育成していくステップ「Phase」によって構成されています。各Phaseには、期間内に達成しなければならない項目があり、それができない場合にはゲームオーバーとなります。
各Phase期間が過ぎると、「P.A.S.S.」はメンテナンスのため、午前9時に回収され、同日午後5時に再び届けられます。なお、「P.A.S.S.」は、午前12時から1時間は充填を行うため、その間に会話をすることはできません。
各Phaseの育成項目と期間は以下の通りです。
Phase1
「P.A.S.S.」に、部屋の中にあるさまざまなオブジェクトの名前を教えます。それぞれ3‐30回ぐらい繰り返して発話し、「P.A.S.S.」が「覚えました」と言えば成功です。
言葉を教えている最中に「覚えた?」と聞くと、その時点での認知度を教えてくれます。特に難しいものはありません。これらを覚えたかどうかは、Yボタンで開く「P.A.S.S.O.S.」で確認できます。
Phase1では、2日間で、以下の20項目を教えます。
【ベッド、カレンダー、エアコン、窓、カーテン、ビデオ、テレビ、丸テーブル、丸イス、ラジカセ、電話、イス、ノートパソコン、時計、ポスター、ゴミ箱、照明、モップ、掃除機、ミニペンギン】
「P.A.S.S O.S.」には、「Photo」もあり、「P.A.S.S.」の写真を10枚まで保存・閲覧できます。
「Webブラウザ」には、「Arkホームページ」、「ワタナベミツルのmusic street」(部屋で聴けるCDの紹介)、「天気予測」(ポスターがもらえるミニゲーム)、「Tipster-競馬予想ページ」(競馬予想のミニゲーム)があります。
「メーラー」では、育成カリキュラムやメールマガジン、メル友からの情報が見られます。重要な情報も送られてくるため、毎日のチェックが欠かせません。
Phase2
Phase1で教えたオブジェクトを使って、「P.A.S.S.」にさまざまな指示を行います。
この中で難しいと思われるのは、「カーテンを開ける(閉める)」だと思います。この部屋のカーテンは、横に開閉するタイプではなく、紐を使って上下に開閉するタイプのカーテンだと分かっていれば、それほど難しくはないでしょう。
Phase2では、3日間で、以下の12項目を教えます。
【テレビを操作する、カーテンを開ける(閉める)、窓を開ける、CDを操作する、エアコンを操作する、照明を操作する、時間を言う、冷蔵庫から物を出す、コーヒーメーカーを操作する、ゴミを捨てる、トースターでパンを焼く、ラジオを操作する】
「P.A.S.S.」に好きな名前を付けられます。「P.A.S.S. O.S.」には、「Card」が追加されます。
「P.A.S.S.」と一緒にブラックジャックを楽しむことができます。ポイントが1000貯まるごとに特典があり、後の「P.A.S.S.」の機能に影響します。ただ、100からスタートして1000貯めるのは、楽ではありません。
Phase3
料理など、道具を使った高度な指示を「P.A.S.S.」に行います。
この中で難しいと思われるのは、「雑誌を読む」だと思います。雑誌は、単に「P.A.S.S.」が読めばいいのではなく、プレイヤーの代わりに読んでもらうと考える必要があります。
また、「料理をする」は、素直にマニュアル通りに作ってもらうべきです。
Phase3では、4日間で、以下の7項目を教えます。
【電話の応対をする、料理をする、掃除をする、花の世話をする、雑誌を読む、洗濯をする、ビデオを操作する】
ジャンケンも行えるようになります。「ジャンケン」と発話して始め、「グー」、「チョキ」、「パー」のいずれかをタイミング良く発話します。
また、クイズも行えるようになります。「地理クイズ」、「アニメ」、「文学」、「歌謡曲」、「映画」、「日本史」、「世界史」の計7ジャンルがあり、Phase3で遊べるのは、モニター開始時に選んだ「好みのジャンル」だけです。
Phase4
「P.A.S.S.」が、ウイルスに冒されて帰ってきます。「P.A.S.S.」に何を話しかけても、何を指示しても、まともな答えや行動は期待できません。
ただ、「P.A.S.S.」がダジャレなどをあれこれと返してくるので、いろいろと指示してみるのも楽しいでしょう。
翌日、Ark社からメンテナンスのための回収要請が来ますが、これは無視します。
そして、「P.A.S.S.」が唯一反応する「希望」という言葉を繰り返し発話します。すると、「その言葉、温かい」、「麻生博士も、そう言ってた。希望を、持てと」の2つの文章だけを返してきます。
それでもしつこく「希望」を繰り返していると、やがて麻生博士からもメンテナンス希望が来ます。すかさず、麻生博士にメンテナンスを依頼しましょう。そうすれば、グッドエンディングが確定します。
逆に、Ark社にメンテナンスに出すと、バッドエンディングの確定です。
Phase4では、教えることは何もありませんが、グッドエンディングとバッドエンディングの分岐となる重要なPhaseなのです。Phase4は、4日間です。
Phase5
「P.A.S.S.」との会話を自由に楽しみます。「P.A.S.S.」からも、積極的に話しかけてきますし、いろいろなポーズもとります。
Phase5ならではのイベントもあり、電話がかかってきたりもします。また、新たに、「熱帯魚の世話」が行えます。
Phase5は、4日間でエンディングを迎えます。
「P.A.S.S. O.S.」には、「Words」と「Sched.」が追加されます。「Words」では、「P.A.S.S.」が記憶している単語を編集することができます。
「P.A.S.S.」自身の名前や、友だちの名前などを新たに登録することができます。
「Sched.」では、各動作の時間設定が行えます。「アラーム設定」、「洗濯をする」、「床の掃除をする」、「窓の掃除をする」、「花へ水をあげる」、「熱帯魚にエサをあげる」、「ゴミ箱のゴミを捨てる」などです。
「守護食材占い」も、実装されます。「占い」と発話することで、性格や相性、ラッキー指数などが占えます。
Phase6
グッドエンディングを迎えると、期間の限定がない「エターナルモード」として、「P.A.S.S.」との会話を自由に楽しめます。ぜひとも、グッドエンディングを狙いましょう。
「P.A.S.S. O.S.」には、「Motion」と「Colors」と「Rank」が追加されます。
「Motion」では、「P.A.S.S.」の以下の動作が見られます。「うなずく」、「振り返る」、「歩く」、「見上げる」、「テレビのスイッチを押す(1)」、「テレビのスイッチを押す(2)」、「電源を確かめる」、「カーテン開ける」、「カーテン閉める」、「窓開ける」。
「Colors」では、「P.A.S.S.」の色を以下の色に変えられます。クリアパーツは、ブルー、ブラック、イエロー。ボディーは、ホワイト、ブルー。目は、バイオレット、イエロー、レッド。髪は、ブラウン、オレンジ、グリーン。
「Rank」では、会話文の達成ランクが、S+からE-までの順で見られます。
Load Game
前回の続きからプレイすることができます。本作では、セーブデータは複数作れるものの、プレイ中はロードしたセーブデータにしかセーブできません。
つまり、予備のデータを作ることができないというわけです。ちなみに、プレイ中に白ボタンを押すことでセーブできます。
Option
ゲームの各種設定が行えます。
「テクスチャ変更」では、室内の壁や床、天井のテクスチャを変更することができます。
「マイクテスト」では、ボイスコミュニケータが正しく反応しているかどうかをチェックできます。
「アイコン初期位置」では、アイコンの表示位置を画面の左上か左下かに設定できます。
「ヘッドフォン出力」では、「P.A.S.S.」の音声を、ヘッドフォンから聞こえるか否かを設定できます。
Demo Movie
「N.U.D.E.@」、「カンフーパニック」、「メックアサルト」、「戦場の出前持ち」、「トゥルーファンタジーライブオンライン」、「ブリンクス」、「ザ・ワイルド・リングス」の映像デモが見られます。
【GRAPHICS】6
「P.A.S.S.」育成の舞台となるのは、1Kのマンションの自室とキッチンだけで、屋外に出ることは一切ありません。すべての物語が、このマンションの1室で進行するのです。
背景やオブジェクトにしても、それほど緻密に描き込まれた感じでもなく、グラフィックはかなりあっさりとしています。
「P.A.S.S.」のグラフィックはまずまずなのですが、動きにはぎこちなさが残ります。
向こう向きからこちらに振り向く時の体のひねり方など、不自然さを感じさせる動きが少しあるのです。
これは、「P.A.S.S.」がロボットだからということではないと思いますが、いかがなものでしょうか。
「P.A.S.S.」の体は、間接などがブルーのスケルトンになっています。この点に関して、総合プロデューサーの広井王子は、「P.A.S.S.がロボットであるということを、ユーザーにはっきりと意識させるため」と解説していますが、果たしてその必要はあったのでしょうか。
首を見ると胴体とのつながりがなく「Tomak」状態になっていて、ちょっと無気味な感じもします。
【SOUND】7
ドルビーデジタルです。本作最大のウリは、東芝が開発した最新の日本語音声合成ミドルウェアを使用し、合成音声で発話する美少女型ロボット「P.A.S.S.」と、「Xboxボイスコミュニケータ」を使って会話しながら、彼女を育成できるという点にあります。
そこで問題となるのが、「P.A.S.S.」の言葉の認識率とボキャブラリーです。
前者に関しては、残念ながら、あまり優秀とは言えません。あらかじめ想定されている単語以外は認識してくれませんし、あらかじめ想定されている単語であっても誤認識することが珍しくはないからです。
発話する時には、発話可能状態になっている時にAボタンを押して少し経ってから発話するのですが、正確に発音しないと正しくは認識してくれません。
例えば、「はい」と発話しても、「ない」、「しない」、「うまい」、「あまい」、「つらい」、「カレー」などと認識されることがあります。
ドリームキャスト版「シーマン 禁断のペット」あたりと比べると認識率は落ちると思いますが、本作の方が認識できる単語の数ははるかに多くなっている点を考慮すると、仕方のないことなのかもしれません。
ボキャブラリーに関しても、「シーマン 禁断のペット」を凌駕しています。Phase4までは「P.A.S.S.」はそれほど多くを語りませんが、Phase5になるとこちらが黙っていても「P.A.S.S.」の方からどんどん話しかけてきます。
その内容も、実に多彩なものになっています。Phase5に関しては、時間の許す限り「P.A.S.S.」のお相手をするべきでしょう。BGMはありませんが、テレビ、ラジオ、CDなどを流すことができます。
【CONTROL】9
「P.A.S.S.」を直接コントロールすることはありません。方向パッドでオブジェクトにカーソルを合わせるか、Aボタンでオブジェクト名を発話して指示するのです。
それ以外の操作は、Xボタンで写真、Yボタンでノートパソコンの起動、白ボタンでセーブ、が主なものと、極めて少なくなっています。操作で戸惑うことはないでしょう。
【GAMEPLAY】6
前述しているように、本作最大のウリは、東芝が開発した最新の日本語音声合成ミドルウェアを使用し、合成音声で発話する美少女型ロボット「P.A.S.S.」と、「Xboxボイスコミュニケータ」を使って会話しながら、彼女を育成できるという点にあります。
その育成過程は、「モード」の項目でふれている通り、Phase1では部屋の中にあるさまざまなオブジェクトの名前を教え、Phase2とPhase3ではさまざまな指示を行うというものです。
Phase1はテストモニターというにはあまりにも稚拙ですし、Phase2とPhase3に関しても言葉探しといった側面があります。
「P.A.S.S.」が教えてほしいということも、Phase3まではある単語が何に該当するかという質問がほとんどです。それもその単語が、食べ物、動物、植物のいずれに該当するのか、何色なのか、といったことしか聞いてこないのです。
Phase5になってようやくその内容が多彩にはなってきますが、おしゃべりを楽しむというよりは、「へえー、P.A.S.S.ってこんなことも話すんだ」と感心できる程度のものです。
「シーマン 禁断のペット」のような人間くささは感じられませんが、「P.A.S.S.」がロボットということを考えるとそれも当然なのかもしれません。
“会話しながら育成する”というゲームの目的からすると、本作の内容はちょっと物足りない感じはするでしょう。
クイズの問題は、ジャンルごとに以下のものを当てるのですが、ちょっとマニアックすぎるように思います。
「地理クイズ」は、国の首都、都道府県の県庁所在地。
「アニメ」は、タイトルの前半部分から後半部分。
「文学」は、文学作品の作家。
「歌謡曲」は、レコード大賞各賞受賞曲の歌手。
「映画」は、アカデミー賞受賞作品の監督か主演男優か主演女優。
「日本史」は、重要な事件の年代。
「世界史」は、重要な事件の年代。
問題を作る側は簡単でしょうが、答える側はちょっとつらいと思います。もう少し気の利いたクイズがあれば、もっと楽しめたでしょう。
本作は、プレイヤーが、Ark社のテストモニターの抽選に当選し、電子メールで送られてくるArk社の指示に従って、「P.A.S.S」に会話の教育を施していくという設定になっているわけですから、何事も未完成なのは致し方ないと考えるべきなのかもしれません。
作り手にとっては便利な設定のようですが、プレイヤーにとってはお金を出して実験させられている感も拭い切れないのではないでしょうか。
【LONGEVITY】7
「P.A.S.S.」の育成期間は、最低17日間。1日平均1時間として、17時間以上かかるわけです。「P.A.S.S.」との会話をより長く楽しもうと考えるなら、更に長く遊べることになります。
問題なのは、「アウトライン」や「モード」のところでふれているように、「Xbox」内蔵クロックと連動しており実時間に沿ってゲームが進行していくため、毎日のようにゲームを起動させなければならないという点です。
セガサターン版「ルームメイト~井上涼子~」、ドリームキャスト版「シーマン 禁断のペット」の恐怖再び、というわけです。
季節ごとのイベントがあるとは言え、プレイヤーのプレイ時間を拘束するこの措置は好ましいものだとは思えません。
もちろん、「Xbox」内蔵クロックを操作するという方法もあるにはあるのですが、1回目のプレイではその勘どころも分からないでしょうし、この方法はあまりお勧めできません。
最初にプレイする際には、17日間は毎日のようにプレイできることを確認してからプレイするようにするといいでしょう。
【OVERALL】7
本作は、東芝が開発した最新の日本語音声合成ミドルウェアを使用し、合成音声で発話する美少女型ロボット「P.A.S.S.」と、「Xboxボイスコミュニケータ」を使って会話しながら、彼女を育成していくゲームですが、これまでに述べてきたように何事も未完成のままに終わっています。
しかも、広井王子が、ロボット三原則を引っ張り出してきたり、戦争に話を絡めたりしていて、ちょっと説教くさい部分もあります。
また、「Xbox」内蔵クロックと連動させた点にも疑問の余地が残ります。遊びたい時に遊べ、時間があれば1日中でもプレイする、それがテレビゲーム本来の姿のはずです。
このように、本作はさまざまな問題点を内包しており、あまり大きな期待を持って購入するとがっかりする可能性があります。
本作は実売価格も高値安定していますから、本作に期待して購入するというよりも、予備のボイスコミュニケータのおまけと考えた方が無難かもしれません。
本作に次回作を作ったとしても、純粋な次回作では期待しづらく、この機能を進化させてもっとエンターテイメントに徹した作品ならば楽しめそうです。
例えば、「NoeL~Laneige~」あたりにこの機能を実装してくれば、より面白いゲームが生まれそうな気がします。
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