「ESCAPE ACADEMY」レビュー&ウォークスルーインデックス

「ESCAPE ACADEMY」(エスケープアカデミー)は、有望な生徒たちが脱出ゲームの究極の達人になることをめざして訓練する学校です。
プレイヤーは新入生として、現実世界の脱出ゲームの作成で経験を積んだ専門家たちが設計した精巧に手作りされた12を超えるルームで脱出を試みます。
そこでは、パズルを解いたり、サーバーにハッキングしたり、教員たちに会ったり、おいしいお茶を淹れたり、 脱出ゲームの究極の達人になるための訓練を行います。
ひとりプレイ、もしくは、協力2人プレイ(ローカルまたはオンライン)が可能ですが、日本語字幕はありません。
開発はCoin Crew Gamesで、ワイアット・ブッシュネルとマイク・モハメド・サリフが2018年にインディーゲームスタジオとして設立。”bringing people together to play”(人々を集めて遊ぶ)が目標になっています。
そのため、革新的なコンセプトとリサーチ主導のデザインにより、アーケード、遊園地、家庭向けに次世代アトラクションやゲームを開発し、デートの夜、家族の外出、フレンドリーな集まりのためにゲームをデザイン。
アーケードマシンとして「BATTLE BOWLING」、「HOT WHEELS: KING OF THE ROAD」をリリースした後、コンソールとPC用に「ESCAPE ACADEMY」を初リリースします。

物語は、プレイヤーがエスケープアカデミーに入校する適性があるかどうかを試される「INTRDUCTIONS」に挑むところから始まります。
その試験にパスすると、ヘッドマスターからエスケープアカデミーへの入学を誘われ、電車に乗ってエスケープアカデミーに到着します。
エスケープアカデミーの校内には様々な施設があり、プレイヤーは学生寮に住むことになります。
学生寮でできることは多くはないのですが、受けた試験の成績を見たり、その試験で獲得したバッジを閲覧したりすることができます。
もっとも、学生寮に入ったといっても、まだ入学が決まったわけではありません。「ENTRANCE EXAM」に挑み、それに合格することで晴れてエスケープアカデミーに入校できることになるのです。
しかも、「ENTRANCE EXAM」は、いきなりヘッドマスターのオフィスで行われ、部屋には記憶消失ガスが放出されており、15分以内に脱出しないとアカデミーのことをすべて忘れてしまうという厳しさです。

パズルは、現実世界の脱出ゲームの作成で経験を積んだ専門家たちが設計した精巧に手作りされたものとあって簡単ではありません。
しかし、パズルが理不尽に思えるところもなく、練り込まれたものであることが分かりますし、これらのパズルを解くことで本作のパズルの文法の一端を垣間見ることもできます。
パズルの内容としては、ダイヤルロックを解くというものが多く、その数字やアルファベットをどこかで探し出してダイヤルロックを開け、次のパズルに挑むための材料を手に入れるという手順になっています。
ただ、その数字やアルファベットをどこかで探し出すためにやることが幅広く、バリエーション豊かなものになっています。
また、あるパズルを解くために絵や順番を別の場所で覚えたりメモを回収したりして、その順番にボタンを押したり組み合わせを変えたりというものもあります。
さらに、数学的思考を要求されたり、英単語の意味を理解していたりというものもあります。前者は苦手な人に向けてのゲーム内ヒントがあり、後者は高校卒業程度の英語力があればなんとかなります。
加えて、発想の転換が要求されるパズルもあります。逆から眺めたり、上下を逆様にしてみたり、暗くしたり明るくしたり。
このように、実に様々なパズルが用意されているのですが、前述したように理不尽なものはなく、部屋中を回ってヒントを見つけたり、試行錯誤したり、発想の転換をしたりすることで、正解にたどり着けるようになっています。

本作は、エスケープアカデミーという名前の通り、パズルを解くことで制限時間内に部屋から脱出するというのが基本になっています。
そのため、プレイヤーキャラクターは1人称視点であり、部屋の中を移動しながらパズルを解くことで次のパズルに取り掛かったり、鍵がかかっていた別室に入れるようになります。
そして、最終的に部屋全体から脱出できればクリアとなり、新たな部屋に挑めるというわけです。
それぞれのパズルには制限時間がありますが、時間切れになったとしても何度でも時間を延長することができます。また、ヒントを見ることも可能です。
ただし、時間の延長もなくヒントも見なければファイナルグレード(成績)は「A+」をもらえるのですが、時間を延長したりヒントを見たりするごとにそれは下がっていきます。
それらを行うことでファイナルグレードが下がるのは残念なところですが、学生寮の自室で成績表を確認すればベストタイムが分かり、そこから何度でもチャレンジしてファイナルグレードを上げることはできます。
実績に、10エスケープでB+以上、10エスケープでA+以上、というものがありますが、このチャレンジの繰り返しにより、どちらも解除が可能です。

グラフィックはアニメ絵の3Dで、特別美しいというわけではありませんが、パズルを解くという意味では少し誇張された表現がむしろ分かりやすくなっています。
ただ、パズルを解くのに色が重要な要素になってくること少なからずあり、黄、緑、赤、オレンジなどの色が中間色で分かりづらく、その点はもう少し分かりやすい原色で表現してほしかったところです。
音楽とサウンドデザインは、ドーズ・ワン(アダム・ダッカー)が担当しています。彼は、オルタネーティブヒップホップのラッパーで、インディーゲームの音楽にも積極的にかかわっています。
それが関係するのかどうかは分かりませんが、効果音は勇ましいものが多く、若干耳障りなところもありました。パズルだけに解けた瞬間の効果音が派手なのは分かるのですが、もう少し控えめでも良かったかもしれません。
キャラクターは、大半がフルボイスではありません。決してセリフが多いゲームではなく、最近のゲームはフルボイスが当たり前になっているだけに、少し頑張ってフルボイスにしてほしかったところです。
操作性は、おおむね良好と言えるでしょう。パズルだけに微妙な操作が必要になるところもあるのですが、いい意味で大雑把なところがあり、それが雑でもなく適度にアバウトなため、むしろプレイしやすくなっています。

部屋の数は、プロローグが2室、フォールタームが3室、ウインタータームが4室、スプリングタームが4室。
欧米だけに秋入学で秋から始まって春で1年が終わるのですが、考えてみると部屋の数がプロローグを除くと11室というのは少ないように思います。
すべて自力で考えれば、プロローグを含めて13室というのは、複数のゲームを並行してプレイしていれば適度な数にも思えますが、単純に部屋の数として考えると少ないでしょう。
エスケープアカデミーというわりには、出会う教師の数も生徒の数も少ないのは確かで、施設の規模から考えても、部屋の数は少なすぎます。
毎月小粒な部屋が2室ほどあり、1ヵ月の集大成として本格的な部屋が1室用意されているとか、一定の条件を満たせば出現する部屋とかがあれば、ゲームとしてのボリュームも増したように思います。
それでも、パズル要素が楽しめる脱出ゲームとしては良質なゲームになっているのは確かで、DAY ONEで「Xbox Game Pass」入りしたのも良かったと思います。
シューティングゲームやアクションゲーム、RPGなどと並行してプレイする知的ゲームとしても適しており、日本語字幕にすら対応してはいないものの、いっとき流行した「脳トレ」にも十分になるので、ぜひ手に取ってほしいところです。

【ウォークスルーインデックス】
#1(PROLOGUE: INTRODUCTIONS)
#2(PROLOGUE: THE ENTRANCE EXAM)
#3(CHAPTER ONE: FALL TERM(ESCAPE ARTIST))
#4(CHAPTER ONE: FALL TERM(UNDER PRESSURE))
#5(CHAPTER ONE: FALL TERM(THE BREAKOUT))
#6(CHAPTER TWO: WINTER TERM(THE TEA KETTLE))
#7(CHAPTER TWO: WINTER TERM(TRIAL BY TASTE))
#8(CHAPTER TWO: WINTER TERM(LAB RAT))
#9(CHAPTER TWO: WINTER TERM(THE RIVAL ROOM))
#10(CHAPTER THREE: SPRING TERM(WHERE THERE’S SMOKE))
#11(CHAPTER THREE: SPRING TERM(TEA ‘N TEA))
#12(CHAPTER THREE: SPRING TERM(THE CONFRONTATION))
#13(CHAPTER THREE: SPRING TERM(WHAT LIES BELOW))

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