「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」レビュー&ウォークスルーインデックス

「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」は、プレイヤーの選択によってストーリーが変化するアドベンチャーゲームです。
アレックスはグループホームで孤児として暮らしていましたが、生き別れでバーテンダーの兄・ゲイブからの誘いでコロラド州の山奥にある町・ヘイブン・スプリングスにやってきます。
彼女は、他人の強い感情を取り込んでしまう特殊な能力が原因で周囲とうまくなじめずにいたのです。
ところが、そんな兄が急死してしまい、彼女はその死の真相を探るため、自身の不思議な能力と向き合い、田舎町に隠された秘密を暴いていきます。

「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」を開発したのは、コロラド州ウエストミンスターに拠点を置くアメリカのゲーム開発会社Deck Nineで、発売がスクウェア・エニックス。
もっとも、「LIFE IS STRANGE」シリーズは、開発元と発売元が入り組んでおり、以下のようになっています。
2015年発売の「LIFE IS STRANGE」は、パリに拠点を置くフランスのゲーム開発会社・Dontnodが開発し、発売がスクウェア・エニックス。
2017年発売の「LIFE IS STARNGE: BEFORE THE STORM」は、開発がDeck Nineで、発売がスクウェア・エニックス。
2018年から2019年にかけて発売の「LIFE IS STRANGE 2」は、開発がDontnodで、発売がスクウェア・エニックス。
2020年発売の「TELL ME WHY」は、開発がDontnodで、発売がXbox Game Studio。
2021年発売の「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」は、開発がDeck Nineで、発売がスクウェア・エニックス。
つまり、「LIFE IS STRANGE」シリーズはスクウェア・エニックスが権利を有してDontnodとDeck Nineに開発を依頼、「TELL ME WHY」はXbox Game Studioが権利を有して(?)Dontnodが開発、ということになります。

もっとも、いずれにも共通しているのが、田舎町で暮らしているか田舎町にやってきた10代後半から20過ぎの若者が超能力を有し、その超能力によって問題を解決するという点です。
ちなみに、「LIFE IS STRANGE 2」で超能力を持っているのは、16歳の兄ではなく9歳の弟になるという点で異なりますが、プレイヤーキャラクターは16歳の兄の方です。
また、美しいアニメーションによる3人称シネマティックナラティブアドベンチャーゲームであり、ポイント&クリックと会話中の選択肢によってゲームが進行し、プレイヤーの選択によりストーリーが変化していくという点も一致しています。
このタイプのアドベンチャーゲームは、「EVE」シリーズや「ポリスノーツ」に代表される小島秀夫作品など枚挙にいとまがなく、「Xbox」では「トライアングル・アゲイン」シリーズ、「プレイステーション」では「やるドラ」シリーズなども発売されました。
もちろん、当時はキャラクターの背後を追って3D空間を移動できるようなものではなく、1枚絵で選択肢を選び、たまにアニメーションするというものでしたが、ストーリー性が高い作品が生まれることが多かったように思います。
それが2010年代に入ると、Telltale Gamesが「The Walking Dead」シリーズで硬い動きながらもキャラクターを動かせるようにし、ハードの進化によるゲーム性の進化も感じさせてくれました。

そんな中にさっそうと登場したのが、「LIFE IS STRANGE」です。
「LIFE IS STRANGE」は、キャラクターの容姿をリアルに描き、そのキャラクターを現実的で美しい3D空間の中で滑らかに動かせるようになっていたのです。顔のパーツそれぞれの動きも自然で、表情から感情の動きを読み取ることも容易でした。
それは、同じジャンルで展開するTelltale Gamesの一連の作品からも1世代進化していることがはっきりと感じられるほどのものでした。
もちろん、Telltale Gamesの作品がコミックをベースにしているのに対し、「LIFE IS STRANGE」シリーズは現実世界を舞台にしたオリジナル作品であるという違いはあり、必ずしも同列に語ることはできないもののの、それでもそこから受けた衝撃は大きなものだったのです。
そうした意味で、ボイスアクティングにおいても、Telltale Gamesの作品が誇張した演技がなされているのに対し、「LIFE IS STRANGE」シリーズは現実世界の中でキャラクターの葛藤が感じられるものになっており、プレイヤーは容易に感情移入することができます。
ましてや、多感なティーンエージャーを中心としたキャラクターたちが主人公になっているだけに、そうした時代を過ごしてきた多くのプレイヤーにとってキャラクターの気持ちになりきることは、グラフィック面からもボイスアクティング面からも難しくはないのです。
この点においては、ゲーム中に散りばめられた小物の数々も気が利いており、それらをクリックした際のプレイヤーキャラクターの反応だったり、小物の解説だったりもゲームに幅を持たせる要因になっています。

「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」では、ポートランド出身で21歳のアレックスがプレイヤーキャラクターになるのですが、彼女はグループホームで孤児として暮らし、生き別れの兄からの誘いで彼の暮らすヘイブン・スプリングスにやってきます。
「LIFE IS STRANGE」の主人公であるマックスがアイドル系の容姿を持ち、「LIFE IS STRANGE: BEFORE THE STORM」の主人公であるクロエがクールビューティー系だったのと比べると、アレックスはあまり可愛くもなければスリムでもないというのは社会のの風潮を反映させたものでしょうか。
その分、美形でスリムというステフを登場させてバランスをとっているところはありますし、それは「LIFE IS STRANGE: BEFORE THE STORM」における容姿端麗なレイチェルとも共通するところがあります。
もっとも、アレックスが容姿通りのおとなしくていい子かというと、グループホームでも他人の感情を取り込んでしまう特殊な能力が原因で周囲とうまくなじめておらず、ヘイブン・スプリングスにやってきたのも居場所を求めてのものだったりします。
「LIFE IS STRANGE」シリーズにおいて、いわゆるいい子なのは「LIFE IS STRANGE」のマックスだけで、それ以降のシリーズでは主人公たちは家族や社会から疎まれる存在なのです。
このあたりは、「LIFE IS STRANGE」シリーズを通して社会における様々な問題を大胆に盛り込み、それが1作ごとに強まってきているということがうかがい知れます。「TELL ME WHY」では、LGBTに真っ向から取り組んでもいます。

「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」では、アレックスにとってヘイブン・スプリングスが自らを包み込み受け入れてくれる地になるのかというのが大きなテーマとなっています。
アレックスが、兄の死の真相を探るため、自身の不思議な能力と向き合い、田舎町に隠された秘密を暴いていく過程で、否が応でも町の人たちを巻き込んだり、逆に町の人たちを支えたりもしなければならず、プレイヤーは時には些細な、時には重大な決断を迫られるのです。
このあたりのストーリー展開は「LIFE IS STRANGE」シリーズを通して健在で、何気ない町の風景や町の人々とのかかわりが、やがては大きな渦となって動き出し後戻りできないところまで進んでいきます。
「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」では、アレックスの特殊能力が他人の強い感情を取り込んでしまうというものであるため、周囲に与える直接的な影響は他のシリーズよりも控えめなものになり派手さという点では劣るのですが、その分、町の人たちの感情の機微を察するという面白さは増しています。
アレックスが主人公でありながらも町の人たちを気遣いながら行動するという局面が多くなっており、そのあたりのバランスをどうとっていくかは他のシリーズよりも楽しめることでしょう。
ゲーム終盤の盛り上がりはドラマチックであり、最後の屋上のシーンでゲイブがアレックスが町に残った場合にどんな暮らしになるのかを見せてくれるシーンは心に刺さるものがあります。

ゲームシステムという面においてもシリーズを通してユーザーフレンドリーな点が突出しており、「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」でもそれは継承され、実績面においてもユーザーに負担を強いることがありません。
最近のゲームはセーブデータに関しては時代に逆行していると考えられる部分が多々あり、様々なゲームをプレイする中でそれを実感させられることが少なくないのです。
オートセーブ制を採用しているのはいいのですが、オートセーブ一辺倒でマニュアルセーブが存在しない。セーブポイントでのマニュアルセーブのみなのに、セーブデータは上書きしか許されず複数のセーブデータを作ることができない。こういったゲームが珍しくはありません。
いったんオートセーブされたり、マニュアルセーブしたりすると、やり残したことのやり直しは効かず、取り残した実績は一からやり直すしかない、ということが起こってしまうのです。これではユーザーに大きな負担がかかってしまいます。
それに対して「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」では、各エピソードのシーンごとにやり直すことが可能であり、完全に一からやり直すか、実績解除のためだけにやり直すか、選ぶことができます。しかも、それまでのセーブデータを残したままで新たにセーブデータを作り直すこともできるのです。
また、各エピソードの最後には、「あなたの選択」をチェックすることができるため、選ばなかった選択のシーンをやり直してみるということも容易です。
ユーザーに負担を強いない、プレイ時間稼ぎをしないというのは、今のゲームに求められる大きな要素のひとつであり、これをプレイ時間が長くない「LIFE IS STRANGE」シリーズが当たり前のように行っているのが素晴らしく、他のゲームも見習ってほしいところです。

ゲームジャンル的に「LIFE IS STRANGE」シリーズが合わないという人や、そうではないものの「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」は序盤でやめてしまったという人もいるかもしれません。
しかし、「LIFE IS STRANGE: TRUE COLORS」のエピソードが進むに連れて盛り上がりを見せるストーリー展開や最後の屋上のシーンは、「LIFE IS STRANGE」シリーズでも1、2を争うものがあるのです。
それだけに、ゲーム好き、シネマティックナラティブアドベンチャーゲーム好きだけでなく、序盤でやめてしまったという人も、ぜひともプレイしてほしい作品です。
かつて、某大学卒の某局の女史が「ゲームは時間の無駄」と番組中に言い放ったことがありましたが、こうした良質な作品も存在するということを知らないのでしょう。
数あるゲームジャンルの中でもシネマティックナラティブアドベンチャーゲームはストーリー性が高い作品が特に多く、その中でも「LIFE IS STRANGE」シリーズは抜きんでていると言っても過言ではないほどなので、この女史にもプレイしてみてほしいものです。
これは昔の考えで今は考え方が変わっているのかもしれませんが、もしそのままならこのゲームをプレイすることでゲームに対する見方が変わるかもしれません。

【ウォークスルーインデックス】
#1(エピソード1: SIDE A 1(面談~昔みたいに))
#2(エピソード1: SIDE A 2(大丈夫、初仕事))
#3(エピソード1: SIDE A 3(屋上の語らい~下を見るな))
#4(エピソード2: ランタン1(お別れ会~春の大掃除))
#5(エピソード2: ランタン2(マックを追って))
#6(エピソード2: ランタン3(マックを追って~夜空に灯る光))
#7(エピソード3: 光と闇1(作戦会議、冒険の準備))
#8(エピソード3: 光と闇2(勇者セイノア))
#9(エピソード3: 光と闇3(母のジレンマ、レア))
#10(エピソード4: ゆらめき1(パーティータイム、春祭り))
#11(エピソード4: ゆらめき2(ふたりきりの屋上で~闇の中へ))
#12(エピソード5: SIDE B 1(デジャヴ~選ばれなかった子))
#13(エピソード5: SIDE B 2(掘り出される真実~屋上の語らい))

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