「PLANET OF LANA」レビュー&ウォークスルーインデックス

「PLANET OF LANA」は、横スクロールのシネマティックパズルアドベンチャーゲームです。
かつて、人間、自然、動物のバランスが保たれていた惑星は、今やまったく別のものになっています。
何百年も前から作り続けてきた不調和が、ついに顔の見えない軍隊という形でやってきたのです。
ラナは、親友のムイとともに、彼女の姉を救うために壮大な旅に出ることになります。2人は協力して様々な難関を乗り越えていかなければなりません。
これは、戦争についての物語ではありません。活気に満ちた美しい地球と、それを維持するための旅についての物語です。

本作を開発するWishfully Studiosは、2018年にスウェーデンのヨーテボリで設立されたインディーゲームスタジオで、本作がデビュー作になります。
彼らが情熱を注ぐのは、見事なアートワーク、深いストーリーテリング、革新的なデザインを生み出すことで、心に残るようなゲームを作るために努力を重ねています。
音楽は、日系アメリカ人の作曲家・古川毅が手掛けていますが、彼はドラマ、CM、ゲームなど多方面で活躍し、世界で最も象徴的な映像に寄り添ってきました。
ドラマは、「スタートレック: エンタープライズ」や「スター・ウォーズ: クローン・ウォーズ」。CMは、「カンヌライオンズ」で受賞したメルセデス・ベンツ、キヤノン、ソニー、アップルのグローバルキャンペーン。
ゲームは、「人喰いの大鷲トリコ」でBAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)ゲームアワードなど多数の賞を受賞・ノミネート、ゲーム業界で最もエキサイティングな新人の1人としての地位を確立しています。

物語は、ラナの故郷であるTAILO村から始まります。彼女が平和な村でいつもの日常を過ごしていると、姉に森へと誘われます。
森を抜け、墓の前を通り過ぎ、眺めの良い崖まで行くと、多数のロケットが地球に降り注いでいます。
それらは人間を捕獲するためのロボットで、姉がそのロボットに連れ去られてしまいます。そればかりか、先ほどまで平和に暮らしていたTAILO村の人たちまでいなくなっています。
ここから、ラナの姉を救うための壮大な旅が始まるというわけですが、このテンポの良いスタートから、誰がどんな目的で人をさらったのかという疑問が湧いてきます。
しかしながら、そんな疑問を差しはさむ余地はなく、ラナは否が応でも地球に襲いかかった災いに立ち向かわされます。
自分を捕らえようとするロボットから逃れながらも、姉を救うためにロボットの後を追っていかなければならないのです。

この展開や世界観は、2022年11月15日にリリースされた「SOMERVILLE」とどこか似ています。
「SOMERVILLE」は、エイリアンの地球侵略によって家族と引き離された男が家族を探す旅に出る2.5D横スクロールSFアドベンチャーゲームで、会話やナレーションがなく、設定、環境、アニメーションを通じてストーリーが語られます。
本作と「SOMERVILLE」とでは細かい点で違うところもあるにはあるのですが、基本が横スクロールのSFミステリーパズルアクションアドベンチャーゲームであるという点は共通しています。
また、どちらも地球規模の大事件が進行しており、その渦中に放り込まれているのにもかかわらず、最大の目的が家族を救うという点にあるところも同じです。
本作をプレイしていけばいくほど、「SOMERVILLE」と通ずるものを感じることかでき、私のように「SOMERVILLE」が面白かったという人は、本作も楽しんでプレイできることでしょう。

本作も、会話やナレーションがなく、設定、環境、アニメーションを通じてストーリーが語られるため、プレイヤーは自分が置かれている環境を理解することなく、次から次へと訪れる世界に身をゆだねるしかありません。
世界は、森林から暗闇、高地、沼地、不思議な施設、海、砂浜、砂漠、オアシス、基地から施設と移り変わり、その中で、徐々に姉に近づいているということや、今回の事件の一端が垣間見えていきます。
そんな旅の道中で偶然にもムイを助けることになり、ムイも自ら進んで彼女の姉助けに帯同することになります。
ムイは、小型の小動物ながらも知性と身体能力に長けており、様々な局面でラナの言うことを聞いて旅を手助けしてくれます。
ムイが早い段階でラナと一緒になることから、彼女の孤独な旅は早々と解消され、心身両面で心強い旅の友になります。ラナにとってムイは、今回の旅を通じて必要不可欠な存在になっていくのです。

ゲーム的にも、ムイがいることでパズルアドベンチャーゲームとしての要素が色濃くなります。
本作は、横スクロール2Dゲームらしくアクション要素もあるにはあるのですが、アクション要素自体は全般に控えめになっています。
ジャンプのタイミングが難しかったり、移動する床や物体の上を飛び移ったりといったことはまれで、アクションで手こずるという局面はほとんどありません。
また、「これは、戦争についての物語ではありません」と冒頭で書いているように、戦闘シーンはないと言ってもいいほどで、基本的にはロボットとは戦わずに逃げたり隠れたりするだけです。
その分、パズル要素やアドベンチャー要素が強めになっているわけですが、これらも理不尽なものがあったり、難しくて詰まってしまうものがあったりというほどではありません。
パズル要素の大半はムイをどのように使うかというもので、物語が進むに連れてできることが増えてはくるものの、その時々に使えるボタンが表示されるようになっているため、その使い方で悩むことも少ないと言えます。

本作では、何度かQTEのシーンがあるのですが、QTE的には難易度はそれほど厳しいものではなく、失敗しても直前からやり直すことができます。
アクションシーンで難しいのは、終盤の基地内で救出したばかりのムイをロボットに乗せて狭い通路を移動させるところです。
ここでは、電流イライラ棒のように通路の随所に電流が流れており、その中にあるスイッチ5個を切ることで電流を止めることができます。
通路自体はそれほど狭くはないのですが、ロボットの操作が左スティックと右トリガーで行うものの、ロボットの動きがふわふわとしたものになっているため電流に接触しやすいのです。
本作最大のイライラが募る難所と言ってもいいほどで、スイッチ5個の場所を把握していないと電流に接触する可能性が高まります。ここだけでなくゲーム全般を通じて、ロボットの操作はもう少し簡単でも良かったように思います。
本作はステルス要素が随所にあり、ロボットに見つからないように隠れながら進むのですが、ロボットの動きをよく見ていればタイミングがつかめるため、難しくて困るということはありませんでした。

グラフィックは、4KでもHDRでも60FPSでもなくテクニカル的な美しさはそれほどでもないのですが、森林から暗闇、高地、沼地、不思議な施設、海、砂浜、砂漠、オアシス、基地から施設と変化があり、プレイしていて楽しさを感じることができました。
グラフィックのせいで何をしていいのかよく分からなかったということも少なく、キャラクターのモーションも不満を感じることはなかったため、2D横スクロールパズルアクションアドベンチャーゲームとしては及第点と言えるでしょう。
サウンドは、会話やナレーションはなく、キャラクターがお互いの名前を呼んだり返事したりする程度で物足りない部分はあるものの、それをあまり感じさせないように設定、環境、アニメーションを通じてストーリーが語られています。
また、古川毅の音楽も心地良い響きを奏でており、グラフィックや世界観に合致したものになっています。
操作性も、ロボットの操作性など一部に不満は残るものの、それを除いてはおおむね良好と言え、操作性の悪さがストレスになるということもこれ以外はありませんでした。
物語も、話が進んでいくに連れて壮大なものになっていきますし、そのすべてが語られるということもないのですが、「SOMERVILLE」同様に感じられるようなつくりにはなっており、結果的にいいお話だったと心に残るようなゲームに仕上がっています。
このように、本作は10時間もかからずに終えることができるゲームではありますが、その10時間足らずの時間はテンポのいいパズルとステルスとストーリー展開によって心地良いものであり、感動とともに物語を終えることができます。
そのため、横スクロールのSFミステリーパズルアクションアドベンチャーゲームのようなものはけっこう好きという人なら、ぜひともプレイしてほしいと思います。

実績については、大半の実績はストーリーを進めるだけで解除することができますが、秘密の神社は意外なところに隠されていることがあり、ウォークスルーを確認していただいた方が確実かもしれません。
また、1度も死ぬことなくゲームを終えると、実績「Flawless」と実績「100% Complete」(すべての秘密の神社も発見していた場合)が解除されますが、これらの実績の解除は極めて困難です。
本作は、トライアル・アンド・エラーによって進めていくゲームだけに、初回プレイで1度も死ぬことなくゲームを終えるというのは不可能に近いのです。
ところが、チャプターセレクトで特定のチャプターだけを再プレイしても解除できないため、別のセーブデータで1から始めるか、2つのセーブデータを並行して進めるかしかありません。
それですら、QTEはオプションでOFFにし、ロボットに捕まるか転落するなどしたら、すぐにポーズをかけて最後のチェックポイントからやり直さなければなりません。
それが間に合わなかった場合は、ダッシュボードを開いてゲームを終了してから再開せざるを得ません。
いずれにしても、ゲーム1本分を最初から最後まで神経をすり減らしながらプレイすることになるのです。
このあたり、最後のチェックポイントからやり直せばOKとか、せめてチャプターセレクトでやり直せばいいようにしてほしかったところです。

【ウォークスルーインデックス】
#1(チャプター1: 故郷、チャプター2: 孤独)
#2(チャプター3: 新たな仲間)
#3(チャプター4: 闇に潜む秘密)
#4(チャプター5: 高地)
#5(チャプター6: 沼地)
#6(チャプター7: 過去、チャプター8: 海)
#7(チャプター9: 変わりゆく潮目)
#8(チャプター10: 砂漠、チャプター11: オアシス)
#9(チャプター12: 道の終わり、チャプター13: TAILO村)

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