「SOMERVILLE」レビュー&ウォークスルーインデックス

「SOMERVILLE」は、エイリアンの地球侵略によって家族と引き離された男が家族を探す旅に出るSFアドベンチャーゲームです。
本作は、会話やナレーションがなく、設定、環境、アニメーションを通じてストーリーが語られます。プレイヤーは、家族と引き離された男となり、エイリアンの追撃を逃れて家族と再会しなければなりません。
本作は、2017年に設立された独立系スタジオJumpshipのデビュータイトルですが、スタジオの共同創設者であるディノ・パティはかつてPlaydeadを共同設立、「LIMBO」と「INSIDE」のエグゼクティブプロデューサーを務めています。
なお、Jumpshipは、本作のリリース日にThunderful Gamesに買収されましたが、ディノ・パティはJumpshipに残りつつ、Thunderful Gamesの戦略アドバイザーも兼任します。
また、Thunderfulは、Jumpshipの自律性と創造的ビジョンをサポートし続け、”視聴者に感情的かつ知的な挑戦をする”タイトルを作り続けるためのインフラを提供するそうです。

さて、本作は、クルマが夜のフリーウェイを疾走して山間の一軒家に到着し、クルマからは一家3人と犬が下りてくるというシーンから始まります。
この始まりだけで、プレイヤーにはこれから何が起こるのかという期待を抱かせます。続いて、一家3人と犬は、テレビの明かりに照らし出されながらソファで疲れから眠ってしまっています。
本作はSFアドベンチャーゲームなのですが、この始まりはホラー映画「ポルターガイスト」の有名なシーンの様ですらあります。
実際、ゲームでは映画とは異なり男の子ではあるのですが、両親と犬が眠りこける中、ただ1人起き出して家の中をさまよい歩きます。何か異変が起こっていることを感づいているかのごとく。
そして、母がキッチンで身動きが取れなくなった男の子を助けに行き、男が犬の世話をしといった日常を取り戻していきます。
それも束の間、上空では異変が起こり、クルマでの脱出は不可能になり、地下に逃げ込むものの、男が1階に降って来た人の手をつかむと電撃が走って気絶してしまいます。
男が気がつくと家族とは離れ離れになっており、ここから男の家族探しの旅が始まるというわけです。

前述したように、本作には会話やナレーションがなく、設定、環境、アニメーションを通じてストーリーが語られますし、明確なチュートリアルもなければ、細かなオプション設定もありません。
プレイヤーは、ひたすら目の前で起こっていることを目撃し、それに応じて男を最低限のガイダンスによって得られた操作方法で操作するだけなのです。
それでも、このチャプター2までのストーリー展開でプレイヤーをグイグイと引き込む魅力があふれており、「LIMBO」や「INSIDE」を通じて培われた手腕が遺憾なく発揮されているように思います。
チャプター3からは、しばらくは犬だけが頼りの孤独な旅路が続くのですが、ここに球体という一時的な仲間が加わります。
この球体の正体も今ひとつ定かではないのですが、プレイヤーが開放すべき存在であり、プレイヤーに対して敵意は抱いていないということが分かります。
また、実績的な観点に立つと、この球体を10ヵ所で救助するというものがあるため、プレイヤーの目的のひとつとして球体を見つけ出すというものが加わります。
これにより、単に旅路を急ぐのではなく、探索しつつ先をめざすというアドベンチャーゲームらしい要素も楽しめるようになるというわけです。

プレイヤーが旅を進める過程で、1階に降って来た人の手をつかむことによって得られた特殊能力が重要な要素になってきます。
この特殊能力を使わないと道を切り開くことができないため、どこに対してこの特殊能力を使うかが重要になってきます。
グラフィック的には、その場所が水のブロックのようなもので明示されている場合もあるのですが、プレイヤー自身によってここだろうなと探し出さなければならない場合もあります。
それでも、本作はほぼ一本道になっているため、その使い場所に困って、右往左往したり、行きつ戻りつしたり、ということはほとんどありません。
途中からは、道を固めて進むという要素もそこに加わってくるのですが、これにしてもアドベンチャーゲームとしては難解というほどではありません。
さらに、宇宙人の宇宙船やロボットのサーチライトから隠れて進むという要素も追加されます。
これは、アドベンチャーゲームに対して、ステルス要素だったり、アクション要素だったりが加わるわけで、ゲームとしての幅を広げるのに役立っています。
それとともに、「LIMBO」や「INSIDE」の世界観を引き継いだディノ・パティの作品であるということが実感できるものでもあります。

グラフィック面では、「LIMBO」や「INSIDE」のほぼ2Dというものに比べると、そこに奥行きが加わった2.5Dになっているとともに、キャラクターやオブジェクトもより立体的に描かれています。
本作が2.5Dになったことで、プレイヤーが奥行きをうまく使ってフィールドを移動できるようになり、ゲーム性という面でも奥行きが増しています。
それとともに、本作が2.5Dになったことで、ディノ・パティの映像作家としての一面もより強調されています。
本作では、男が倉庫の救援施設内を歩いたり、ショーウィンドウの間を歩いたりするシーンがあります。
そのシーンにおけるカメラワークが秀逸で、うならされることが何度かあったのです。
ゲームが2Dの場合、左右の移動が主で、そこに上下やまれに斜め方向への移動が加わります。
ゲームが3Dの場合、ゲームによりけりではあるのですが、カメラワークは主にプレイヤーにゆだねられ、作り手がこだわりたい場面だけ強制的なカメラアングルが入ることがあります。
それらに対して2.5Dの場合、プレイヤーが奥行き方向にキャラクターを移動させる際、カメラをどのように追従させるかは作り手のさじ加減次第ということになります。
本作で男がショーウィンドウの間を歩いたり倉庫の救援施設内を歩いたりするシーンでは、芸術性の高い映画であったり、一流のホラー映画のようであったり、といったカメラワークが施されており、それに見入ってしまうほどなのです。

グラフィック面でもうひとつ言うと、本作のプレイ中、たびたび「ALAN WAKE」を想像してしまうことがありました。
本作では、道を切り開いたり、電気を利用したりするために、光というものが重要な要素になってきます。また、宇宙人の宇宙船やロボットのサーチライトという光もあり、光が本作のテーマのひとつになっています。
そして、光と言えば「ALAN WAKE」です。「ALAN WAKE」では、光で敵を倒したり、光の下にいれば敵からの攻撃を受けることがありません。
本作も「ALAN WAKE」も、光をいかにうまく利用するかということがテーマになっているとともに、映像全体に光と闇の対比も見受けられます。
また、どちらも、画面全体から漂ってくる重苦しい雰囲気を持ち合わせており、なおかつグラフィックのタッチに似通ったものを感じてしまうのです。
さらに、道を切り開くためのギミックという点に関しても、同じようなテイストを備えており、そのあたりでも相通ずるものを感じながらプレイしていました。

本作はマルチエンディングになっているのですが、そのマルチエンディングを演出するのが映画「未知との遭遇」でおなじみのシーンを連想させるものになっています。と言うよりも、そのものと言っても過言ではないかもしれません。
本作はSFアドベンチャーゲームであり、エイリアンの地球侵略らしきシーンから始まり、道中も宇宙人の宇宙船やロボットのサーチライトから追跡されたりします。
男は普通の一市民でありながらも、ふとしたことから特殊能力を持ってしまったことで、困難な旅路を歩むことになり、レジスタンスの実験に半ば強制的に協力することになります。このあたりの展開も、どこか「未知との遭遇」と似通ったところがあります。
本作は、会話やナレーションがなく、設定、環境、アニメーションを通じてストーリーが語られるわけですが、結局、よく分からなかったという人は、このあたりに理解のヒントが隠れていそうです。
本作は、「LIMBO」や「INSIDE」の正統進化作であるとともに、「ポルターガイスト」や「未知との遭遇」などへのオマージュも込められているように感じます。
グラフィックや演出、ストーリーなども引き込まれるものがあり、アドベンチャーゲームとしてのパズル要素も楽しめます。
本作の世界観に惹かれるものを感じたなら、ぜひともプレイしてほしいと思います。テーマ性のあるSF映画を見終わったような心地良さを感じられるのではないかと思います。

【ウォークスルーインデックス】
#1(CHAPTER 1-3)
#2(CHAPTER 4-5)
#3(CHAPTER 6)
#4(CHAPTER 7-9)
#5(CHAPTER 10-12)
#6(CHAPTER 13)
#7(CHAPTER 14、全4エンディング)

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