「AGAIN FBI超心理捜査官」レビュー

【GENRE】
アドベンチャー、実写

【PUB./DEV.】
テクモ/シング

【RELEASE DATE】
2009/12/10

【OUTLINE】
実写を使ったサスペンス・アドベンチャーで、海外ドラマさながらに物語が進行していきます。アメリカ東部の都市クロックフォードの新聞社「クロックフォードタイムズ」に1通の手紙が届けられます。
手紙の消印は19年前で、切手や封筒、便箋など、すべてが19年前のものでした。差出人の名前は、プロヴィデンス。19年前、クロックフォードを恐怖におとしいれた連続殺人鬼の名前でした。
その日、FBI特別捜査官ジェイは、19年前の殺人現場であるホテル・ミランダ315号室に向かっていました。そこで彼が見つけた「ジェイへ」と書かれた古い封筒の中には、19年前の殺人事件で被害者のそばに必ず置かれていたものと同じ「プロヴィデンスの目」が入っていました。
彼がそれを目にした瞬間、彼の視界に異変が起こり、激しい頭痛とともに目の前にセピア色の世界が広がります。過去を見る特殊能力パストヴィジョンが目覚めたのです。
ゲームは、さまざまな証言者に聞き込みを行って情報やアイテムを収集する「捜査パート」と、過去と現在を左右の画面を見比べながら事件現場を捜査する「パストヴィジョンパート」により進行します。プレイヤーは、それらにより事件の真相に迫っていくのです。

【GAME MODE】
捜査再開
ゲームを続きからプレイします。セーブは、プレイ中に行動選択画面で行うことができ、セーブデータは3つまで作れます。

捜査開始
ゲームを初めからプレイします。本作では、「ニンテンドーDS」本体を縦に持ってプレイします。

捜査パート
市警の刑事や事件の関係者など、多くの人への聞き込みで重要な情報やアイテムを入手します。このパートでは、右画面がストーリーの展開に合わせて切り替わります。
会話画面では、会話の内容が表示されます。タッチしてテキストを送っていきます。
質問選択画面では、質問したいことが項目で表示されることがあり、項目をタッチして選び、もう1度、タッチして決定します。
返答選択画面では、会話への返答が項目で表示されることがあり、項目をタッチして選び、もう1度、タッチして決定します。
行動選択画面では、会話がひと区切りつくと、次の行動を選択する画面が表示されます。アイコンをタッチして行動を選択します。行動選択画面には、会話、移動、会話ログ、所持品、電話、セーブ、ヴィジョン、があります。
会話は、会話を続けたり、質問をする時にタッチします。
移動は、移動する時にタッチします。移動できる場所は、物語が進むに連れて増えていき、新たな移動場所は「NEW」で表されます。また、移動先をパートナーのケイト・ハザウェイが指示してくれる場合もあります。移動先に、時間や回数の制限はありません。
会話ログは、会話ログを見る時にタッチします。見逃した時や、確認したい時に、さかのぼって見ることができます。
所持品は、操作中に得たアイテムや情報を確認する時や、会話相手に持ってるアイテムなどを見せる時にタッチします。
電話は、操作中に電話をかける時にタッチします。電話をかけられる相手は限られていますが、操作中に増えます。
セーブは、途中経過をセーブする時にタッチします。
ヴィジョンは、「パストヴィジョンパート」に入る時にタッチします。

パストヴィジョンパート
過去の映像を見ることができるジェイの特殊能力で、「捜査パート」の聞き込みで得た情報やアイテムを使い、過去を再現することで未解決事件の謎を解き明かしていきます。このパートでは、左画面に過去の状況が見え、右画面に現在の状況が見えます。
まず、事件現場でパストヴィジョンが覚醒し、ヴィジョンパネルが割れてカケラになります。このカケラの数が、この事件現場で見るべきヴィジョンの数を示します。
捜索では、過去と異なっている場所や捜査情報で推理した場所などの怪しいところをタッチします。精神力を集中させるように、その場所を長くタッチし続けると、そこに過去が隠されている場合には画面が白くフラッシュします。
予感フラッシュが起きると、ヴィジョンパネルがその場所に浮き上がります。そこに過去のヴィジョンが隠されているということです。
謎を解く(物を動かす、パズルを解く)、アイテムを使用する、などにより過去を再現することができると、その場所で過去の出来事をヴィジョン(映像)で見ることができます。それにより、ヴィジョンパネルも、過去を再現した状態に切り替わります。
ヴィジョンパネルをすべて集めることができたら、ヴィジョンをカケラを時系列にトレースします。ただし、すべてのヴィジョンを集めるためには、途中で「捜査パート」に戻らなければならない場合もあります。
また、予感フラッシュが起こらなかった際には、精神力ゲージが減り、それがなくなるとゲームオーバーになります。もっとも、ヴィジョンのトレースは、正解するまで何度でもやり直すことができます。

主な登場人物は、以下の通りです。

ジョナサン・ウェーバー
31歳。FBIクロックフォード支局特殊犯罪捜査官。12歳の時に、ある事件で両親を亡くし、自らも意識不明の重態にとなる過去を持ちます。沈着冷静で、洞察力も高く、FBI捜査官として非常に優秀ですが、人を寄せつけない超然とした雰囲気から、理解者は多くはありません。

ケイト・ハザウェイ
29歳。FBIクロックフォード支局特殊犯罪捜査官。クロックフォード有数の資産家である名門の家に長女として生まれます。FBIアカデミーを非常に優秀な成績で修了し、異例の速さで特別捜査官に就任します。ジェイのパートナーです。

ヘンリー・ミルズ
54歳。FBIクロックフォード支局特殊犯罪課課長。ジェイとケイトの上司です。厳しくはあるものの、正義感がとても強く、2人から厚い信頼を得ています。

ヒューゴ・ワッツ
28歳。新聞記者です。ジェイの学生時代の後輩で、彼の友人として、また、スクープを狙う記者として、彼らの捜査に協力します。

レーン・マルティネス
32歳。クロックフォード市警殺人課の刑事です。現在のプロヴィデンス事件を担当していますが、FBIに強いライバル心を抱いており、特別捜査官が捜査に加わることを嫌がります。

モーリーン・ヤシマ
29歳。クロックフォード市警鑑識課監察官です。ケイトの大学時代からの親友で、若手ながらその技量が認められている優秀な鑑識官です。

環境設定
利き手、BGM音量、メッセージの速度、画面の輝度を変更できます。

【GRAPHICS】8
本作は、実写を使ったサスペンス・アドベンチャーになっていますが、実写版のアドベンチャーゲームは、「3DO」や「セガサターン」の初期、「プレイステーション2」の初期など、ハード性能が向上した際には、当たり前のように登場していました。
ただ、「Xbox 360」世代になると、ハード性能がより向上したため、コマンド選択式のアドベンチャーゲーム自体が古いものとなり、アドベンチャーゲームでもアクション要素が強いアクションアドベンチャーゲームが大勢を占めるようになっていました。
ただ、「ニンテンドーDS」の場合には、ハードのグラフィック性能自体がせいぜい「NINTENDO 64」程度であるため、アドベンチャーゲームでもアクションアドベンチャーよりもコマンド選択式のものが適していることになります。
開発元のシングは、コマンド選択式のアドベンチャーゲームでは定評がありますが、本作の開発にあたって昔懐かしいとも言える実写を採用したのは喜ばしいことです。

シングのアドベンチャーゲームというと、「ウィッシュルーム 天使の記憶」が思い出されます。同タイトルでは、キャラクターはリアルに描かれているのですが、手書き風のモノクロになっています。
しかも、そのキャラクターが、パラパラマンガを見ているかのような、かなり少ないフレーム数で動くのです。これがまた、絶妙な味わいを醸し出していました。
本作は、実写でありながらも、この手法を取り入れており、実写のキャラクターがパラパラマンガを見ているかのように、かなり少ない写真で動きます。
本作は、「ウィッシュルーム 天使の記憶」を作ったシングだから買ったというプレイヤーも多いのではないかと思いますが、そうしたプレイヤーをニヤリとさせる手法になっているのです。もちろん、実写の1枚絵よりも動きがあるだけに、プレイヤーの没入度や感情移入度もはるかに高まります。
また、「パストヴィジョンパート」では、3Dポリゴンによる描写になるのですが、こちらも「ニンテンドーDS」の3Dグラフィック性能を十分に引き出したものになっています。
これを見ると、他の日本のメーカーも、もっと真正面から3Dポリゴンを使ったゲームを開発してほしいものだと思わされます。

【SOUND】5
「ニンテンドーDS」のゲームというだけでなく、「3DO」や「セガサターン」などでも、このタイプのコマンド選択式実写アドベンチャーの場合、基本的にセリフに音声はありません。通常は、効果音が中心になっています。
「ニンテンドーDS」でも、ほぼフルボイスのアドベンチャーゲームをプレイしてみたいものですし、そうなれば感情移入度ももっと上がるとは思うのですが、容量や予算面で難しいものがあるのでしょうか。

【CONTROL】7
大半の操作は、タッチペンで行います。タッチペンによる操作は、特に難しいこともなく、快適に行うことができます。おおむね良好だと言えるでしょう。
ただ、「パストヴィジョンパート」の操作は、十字ボタンが基本になります。上下で前後移動、左右で左右回転、タッチペンのスライドで視点移動、をそれぞれ行います。
このスライド操作の際に、タッチ(気になる場所を調べる)と解釈されてしまうことがあり、少し面倒に感じることもあります。

【GAMEPLAY】8
本作は、コマンド選択式のアドベンチャーゲームでは定評があるシングが開発した実写のアドベンチャーゲームであり、この手のアドベンチャーゲームファンだけでなく、海外ドラマ好きも興味を惹くタイトルです。
シングは、名作アドベンチャーゲームなどを世に送り出したリバーヒルソフトのゲームデザイナーや専務が作った会社で、リバーヒルソフトの後継色が最も強いだけに、コマンド選択式アドベンチャーゲームの質が高いのも必然だと言えます。
シングが開発したコマンド選択式アドベンチャーという時点で外れるはずはないのですが、それが海外ドラマのような実写アドベンチャーとくれば、興味は尽きません。しかも、FBIの捜査官であり、超心理とくれば、面白いのも当然といったところでしょう。
私は、海外ドラマが大好きで、コマンド選択式のアドベンチャーゲームもかなりの本数をプレイしました。それだけに、本作は、発表された時点から注目していました。
「Xbox 360」でコマンド選択式のアドベンチャーというと、さすがに少し古い感じはしますが、「ニンテンドーDS」であれば大歓迎なのです。

本作は、ストーリー展開や、場所、人物の登場ペースも、巧みに考えられたものになっており、プレイヤーの興味をそそるのはもちろんのこと、プレイヤーに余計なストレスを与えることもありません。
19年前の事件と現代の事件の関連性の謎を解き明かしていく過程はとても楽しめるものですし、登場人物のキャラクター設定も練り込まれた楽しいものになっています。行ける場所も、徐々に増えるのですが、その増え方はもちろんのこと、行ける場所自体も興味をそそるようにできています。
また、アドベンチャーゲームの場合には、一日で回れる場所の回数自体に制限をかけ、その制限を越えると回れなかったり、ゲーム自体のベストエンディングを迎えられない場合すらあります。
しかし、その日にどこを回るべきかを、理詰めで考え出すことができなかったり、ヒントすらもらえなかったりします。つまり、偶然の要素に頼らなければならないにもかかわらず、それが結果を左右することも珍しくはないのです。
シングでは、このあたりのことは考えているようで、本作では、一日にどこをどれだけ回っても構わないようになっています。回る場所同士の距離も関係なく、マップ上ですぐに行けるようになっているのです。
しかも、パートナーであるケイトが、どこに行ってみましょう、と言ってもくれます。こうしたことにより、プレイヤーは余計なストレスを感じることなく、プレイに専念することができます。

そうした意味で、本作の「捜査パート」で特に難しく感じるところはなく、本作では「パストヴィジョンパート」に焦点が当てられていることが分かります。
ただ、「パストヴィジョンパート」が完全に独立しているわけではなく、「パストヴィジョンパート」を進めている途中で行き詰まり、「捜査パート」でさらなるヒントを探り出さなければならないということも多く、このあたりもよく考えられています。
「パストヴィジョンパート」は、左画面に過去の状況が見え、右画面に現在の状況が見え、基本的にはその違いを見つけて、怪しいところをタッチしていきます。もっとも、そんなに単純なだけでなく、時にはアドベンチャーゲームらしく推理を働かせる必要もあり、そのさじ加減は絶妙になっています。
ゲーム全体としては、少し「パストヴィジョンパート」が重要視されすぎているきらいはありますが、超心理捜査官なのですから、これもありかなと思えなくもありません。
もちろん、シングのアドベンチャーゲームらしく、キャラクター同士の会話も大人が楽しんで物語を進められる水準にあり、「ニンテンドーDS」の中でも貴重な存在になっています。
ただ、シング自体が既に倒産しており、今後、このような良質なアドベンチャーゲームが「ニンテンドーDS」で発売される機会は減ってしまうことでしょう。大人のゲームが少ない「ニンテンドーDS」だけに、なんとかこうしたアドベンチャーゲームが出続けることを期待したいものです。

【LONGEVITY】7
本作は、全11日で構成されており、あまり攻略サイトなどに頼ることなくプレイすれば、15時間ぐらいは、プレイすることになるはずです。
アドベンチャーゲームという性格上、詰まったらそれで終わりなので、やむなく攻略サイトのお世話になることはあると思いますが、それが頻繁になってしまってはボリューム感は薄れてしまいます。
また、本作は、2回目のプレイをするような要素は(ほとんど?)なく、おまけのゲームモードもないため、1回のプレイをどれだけ楽しむかにかかっています。

【OVERALL】8
本作は、コマンド選択式のアドベンチャーゲームでは定評があるシングが開発した実写のアドベンチャーゲームであり、この手のアドベンチャーゲームファンだけでなく、海外ドラマ好きも興味を惹くタイトルです。
この手のアドベンチャーゲームは、フルプライスだとどうしても割高感があるのですが、時間が経つと特価で手に入れられることも多く、1980円以下で買えるなら、値段分は楽しめたと感じられるはずです。
シング、アドベンチャーゲーム、海外ドラマのいずれかのキーワードに惹かれるものがある人なら、ぜひとも手にしてほしいタイトルです。

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