「犬神家の一族」レビュー

【GENRE】
アドベンチャー

【PUB./DEV.】
フロム・ソフトウェア/フロム・ソフトウェア

【RELEASE DATE】
2009/1/22

【OUTLINE】
横溝正史の小説である金田一耕助シリーズの「犬神家の一族」を原作にするアドベンチャーゲームです。原作小説の雰囲気そのままに、モノクロの墨絵タッチで描かれたグラフィック、重厚な物語、ゲームならではのストーリー展開が魅力になっています。
プレイヤーは、金田一耕助となり、犬神家で起こった未曾有の凄惨な連続殺人事件の渦中に身を置き、名推理で事件を解決します。「ニンテンドーDS」ならではの簡単操作で、この本格ミステリーを体験することができます。

【GAME MODE】
金田一耕助のもとに、1通の手紙が届きます。それは、犬神家の顧問弁護士を務める古舘恭三の助手・若林豊一郎からでした。その内容は、「犬神家に容易ならざる事態が起こりそうなので調査してほしい」というものです。犬神家では、信州財界の大物・犬神佐兵衛が莫大な遺産を残してこの世を去っていました。
調査のために那須に向かった金田一でしたが、依頼主である若林は何者かによって殺されてしまいます。それをきっかけに、金田一は犬神家の遺産相続争い、そして、凄惨な事件へと巻き込まれていきます。

初めから遊ぶ
ゲームを初めから遊びます。3冊の捜査手帳の中から未使用のものを選んでタッチします。選んだ捜査手帳にタッチペンで字を書いて、自由にタイトルをつけることができます。セーブデータは、3個まで作ることができますが、プレイ中にセーブできるのは、自分が選んだ捜査手帳だけです。

続きから遊ぶ
ゲームを途中からプレイします。任意の捜査手帳を選んでゲームを始めます。
プレイヤーは、金田一耕助となってゲームを進めていくわけですが、物語は基本的に上画面で進行していき、登場人物やセリフ、心の声などが表示されます。下画面には、さまざまな項目が表示され、必要に応じて選ぶことができます。
また、金田一の勘を表す心電図のような線が表示されますが、「重要語」を投げかけた方がいい場合には、色が青→黄→赤と変化していきます。

重要語
物語を進めていくと、赤い文字の言葉を入手することがあります。この言葉を「重要語」と言います。この「重要語」を相手に投げかけると、それについての情報が得られます。ただし、1度使うと、「重要語」は消えてしまいます。相手に投げかけたい「重要語」はタッチペンで上画面にスライドさせます。

質問中
物語を進めていくと、金田一が相手に対して質問をするシーンが出てくることがあります。その際に、「重要語」の一覧が表示されるので、その中から相手に聴かなければならない「重要語」を選びます。たいていの場合、伏線が敷かれていたり、何らかのヒントが事前に得られます。投げかける「重要語」によって、入手できる情報や物語の進行が変化し、場合によってはバッドエンドになります。こうした気配を感じたら、直前でセーブしておくといいでしょう。バッドエンドになった場合、その章の最初まで戻されるので注意が必要です。

推理
捜査に行き詰まったら「推理」のパネルをタッチします。金田一の頭をタッチペンでこすり続けると、ヒントを出してくれることがあります。

登場人物
「登場人物」のパネルをタッチすると、上画面に登場している人物の説明が表示されます。その人物の名前やどういう人物なのかが簡単に説明されます。

履歴
「履歴」のパネルをタッチすると、直前までの会話が表示されます。スクロールバーをスライドさせれば、もう少し前の会話も見ることができます。

メニュー
「重要語録」、「相関図」、「新聞一覧」、「捜査記録」、「設定」が見られます。
「重要語録」は、今までに入手してきたすべての「重要語」が、その言葉が出てきた章や発言した人物の名前付きで閲覧できます。「重要語」の書かれたパネルをタッチすると、その「重要語」が発言されたシーンを再生できます。
「相関図」は、人物同士の相関関係が見られます。人物をタッチすると、その人物の説明が表示され、説明文の下の「チェック」をタッチすると、その人物に×印を付けることができます。
「新聞一覧」は、物語中に入手した新聞を見ることができます。掲載されている「パヅル」で遊ぶこともできます。パヅルには、クロスワード・パヅルと虫食い算があります。新聞のパヅルのクリア状況に応じて、それぞれ20問ずつのパヅルが追加されます。
「捜査記録」は、各章で金田一が直面した「出来事」の場面から、再度、物語をプレイすることができます。この項目は、物語のエンディングを見ることで選択できるようになります。
「設定」は、ゲーム中の各種設定を変更することができます。

ゲームの主な流れは、以下の通りですが、ゲーム自体、それほど難しくはないので、各章のタイトルのみの記述にとどめます。

発端: 昭和22年2月、犬神佐兵衛臨終の席
第一章 絶世の美人
第二章 斧・琴・菊
第三章 凶報至る
第四章 捨て小舟
第五章 唐櫃の中
第六章 琴の糸
第七章 噫無残!
第八章 運命の母子
第九章 恐ろしき偶然


【GRAPHICS】7
原作小説の雰囲気そのままに、モノクロの墨絵タッチで描かれたグラフィック、とありますが、まさにそのままの絵柄です。キャラクターグラフィックもなかなか良くできており、しっかりと描き込まれた漫画と言い換えてもいいでしょう。登場人物のセリフが吹き出しで表されるので、そういった形容がピッタリかと思います。
もちろん、テレビゲームらしく、漫画のような完全な静止画ではなく、それなりに登場人物が動きますし、場面によっては色が変わることもあります。このあたりは、飽きることがありません。
「ニンテンドーDS」のこの手のアドベンチャーゲームというと、登場人物がアニメのキャラクターのように表現されることが多いのですが、本作はこうした描写になっており、しかも、それが物語の雰囲気にマッチしているため、好印象を持てます。

【SOUND】5
「ニンテンドーDS」のゲームということで、セリフに音声はなく、叫んだりする時にだけ声を発します。通常は、効果音が中心になっています。

ニンテンドーDS」でも、ほぼフルボイスのアドベンチャーゲームをプレイしてみたいものですし、そうなれば感情移入度ももっと上がるとは思うのですが、容量や予算面で難しいものがあるのでしょうか。

【CONTROL】8
大半の操作は、タッチペンで行います。タッチペンによる操作は、特に難しいこともなく、快適に行うことができます。
また、ボタンによる操作も可能です。Aボタン(Lボタン)が決定/進める/速くする、など、Bボタンがキャンセル/戻る、十字ボタンがカーソル移動/項目の選択です。こちらも、特に問題はありません。おおむね、良好な操作性だと言えるでしょう。

【GAMEPLAY】8
本作は、横溝正史の小説である金田一耕助シリーズの「犬神家の一族」を原作にするアドベンチャーゲームです。横溝正史がブームになったのは、角川映画の記念すべき第1弾として「犬神家の一族」が公開された1976年からです。
それ以降、「悪魔の手毬唄」(1977年)、「獄門島」(1977年)、「女王蜂」(1978年)、「病院坂の首縊りの家」(1979年)と、市川崑監督、石坂浩二主演により、立て続けに4本が公開されます。この頃に角川映画を見たことがある人なら、懐かしんで本作をプレイすることができるでしょう。
また、「犬神家の一族」は、2006年にも市川崑監督、石坂浩二主演により制作されます。そのため、当時のブームを知らないようなプレイヤーでも、「犬神家の一族」はなじみのあるタイトルだと言えます。横溝正史の小説である金田一耕助シリーズをゲーム化するには、最適のタイトルだったと言えるわけです。
もちろん、多くの人が、「犬神家の一族」を見ているはずで、それとなくストーリーも覚えていることでしょう。映画は、絢爛豪華かつ卓越した映像美が魅力でしたが、本作にも、そのエッセンスを感じ取ることができます。

なおかつ、本作は、モノクロの墨絵タッチでグラフィックが描かれており、映画の持つエッセンスを持ちつつ、漫画を読み進めるような気分で楽しむこともできます。
あの猟奇的な雰囲気や金田一耕助のユーモラスなところもしっかりと描かれていますし、犬神家の人々のどこか異様なさまも、味わうことができます。
ゲームの進行もテンポが良く、事件が次から次へと発生しますし、次に何をやるべきかもある程度は分かります。難易度的には、何度か選択肢で迷うことがありますが、伏線が敷かれていたり、何らかのヒントが事前に得られるため、それほど間違えることもありません。もちろん、どこでもセーブできるため、こうした気配を感じたら、直前でセーブしておけばいいだけのことです。

こうしたことから、本作は、アドベンチャーゲームが好きな人が楽しめるのはもちろんのこと、横溝正史の小説や映画、「犬神家の一族」そのものが好きな人でも問題なくプレイすることができます。
新聞は、物語中にもらうことができ、全部で14部あります。また、それぞれの新聞には、クロスワード・パヅルと虫食い算が掲載されています。このパヅルのクリア状況に応じて、それぞれ20問ずつのパヅルが追加されます。
これらのパヅルの特徴は、クロスワード・パヅルは、パズルでなくパヅルとなっていることからも分かるように、物語の時代設定に適した内容の問題が出題されます。そのため、その時代を想定しつつ解いていく必要があります。
パヅルは、それほど大きいものはありませんが、やり応えは通常のクロスワードパズルと同程度と考えられます。虫食い算は、少し難しく感じるものもありますが、どうにか解けるでしょう。最悪、適当に数字を入れて、その数字が合っているかどうかをチェックすることもできます。


【LONGEVITY】6
本作は、プレイ時間は、あまり長くはありません。本編の「犬神家の一族」は5時間もかからずにクリアできてしまいますし、おまけのパヅルもそれぞれ2時間といったところでしょうか。つまり、すべてやったとしても、10時間はかからないわけです。プレイ時間的には、少し不満を感じるところでしょう。


【OVERALL】7
本作は、横溝正史の小説である金田一耕助シリーズの「犬神家の一族」を原作にするアドベンチャーゲームです。原作小説の雰囲気そのままに、モノクロの墨絵タッチで描かれたグラフィック、重厚な物語、ゲームならではのストーリー展開が魅力になっています。
ゲームの進行もテンポが良く、事件が次から次へと発生しますし、次に何をやるべきかもある程度は分かり、漫画を読み進めるような気分で楽しむことができます。
それでいて、あの猟奇的な雰囲気や金田一耕助のユーモラスなところもしっかりと描かれていますし、犬神家の人々のどこか異様なさまも、味わうことができます。
そのため、アドベンチャーゲームが好きな人が楽しめるのはもちろんのこと、横溝正史の小説や映画、「犬神家の一族」そのものが好きな人でも問題なくプレイすることができます。
ただ、プレイ時間が、本編が5時間弱、おまけのパヅルも2種類で4時間ほどと、決して長くはありません。そのあたりが不満の残るところで、980円、せいぜい1480円なら買う価値があるというところでしょうか。

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