「Lake」レビュー&ウォークスルーインデックス

「Lake」は、オランダの古都ハーレムを拠点にするGamiousが開発したナラティブアドベンチャーゲームです。
1986年9月、40代のメレディス・ワイスは、大都市でソフトウェア会社の慌ただしい生活に明け暮れていましたが、そんな生活を一休みして故郷のオレゴン州プロビデンスオークスで、旅行中の父の代役として郵便配達員になります。
プロビデンスオークスは、象徴的な湖と一風変わったコミュニティを有する美しい田舎町です。彼女は、そこでの2週間で、何人かの見慣れた顔、多くの新たな人々に出会います。
プレイヤーは、彼女となり、誰と話すか、誰と友人になるか、誰と親しくなるか、を決めていきます。そして、2週間が終わった日、大都市での大変な仕事に戻るか、育った町に残るか、決断しなければなりません。

Gamiousは、2011年の創立以来、パズルゲーム「BRIQUID」(モバイル/PC)、レースゲーム「TEAM RACING LEAGUE」(PC)、パズルゲーム「Lines」(モバイル/PC)、シミュレーションゲーム「TURMOIL」(PC/Nintendo Switch/モバイル)、パズルゲーム「iO」(PC/コンソール/モバイル)、ワードゲーム「WORDS in progress」(モバイル)を開発・発売してきました。
その多くがPCとモバイルでのリリースであり、ジャンルもパズルゲームかプラットフォーマーがほとんどになっています。
「TEAM RACING LEAGUE」も、ジャンルこそレースゲームではあるものの見下ろし視点の2.5次元のゲームで、レーシングシミュレーターでないのはもちろんのこと、美麗なグラフィックを持つレースゲームでもありません。
つまり、「Lake」は、同社にとっては初めての3Dゲームで、それだけでなくオープンワールド的な自由度を持ち、ストーリーも楽しめるゲームに仕上がっているのです。
同社が創業10年を機に新たなステージに踏み出した記念すべき1作であり、本作はそうした点からも成功裏に終わったと言っても過言ではありません。

物語は、主人公のメレディス・ワイスが大都会の夜景が望める高層マンションの自室で上司のスティーブ・ミッチェルの電話を取るところから始まります。
彼女は40代にして成功したキャリアウーマンであり、大都会の夜景が望める高層マンションに住むという多くの人があこがれる暮らしを手にしています。
その一方で、ソフトウェア会社の慌ただしい生活に明け暮れて独身のまま40代になってしまったという現実にも疑問を抱き始めます。
そこに、故郷のオレゴン州プロビデンスオークスで暮らす両親が旅行に出かけるため、両親の家で暮らしながら父の代役として郵便配達員になるという転機が訪れるのです。

オレゴン州プロビデンスオークスは架空の町ですが、森や湖、木立、一軒家、ログハウスなどの情景を入念にリサーチした上で、オレゴンという美しい土地が物語の舞台として選ばれています。
また、開発にあたっては、既存のウォーキングシミュレーター、ナラティブゲーム、アドベンチャーゲームを研究することから始まっています。
「gone home」、「ALAN WAKE」、「LIFE IS STRANGE 2」、「NIGHT IN THE WOODS」、「FIREWATCH」、「What Remains of Edith Finch」、「VIRGINIA」、「FULL THROTTLE REMASTERED」などです。
私はこの大半をプレイしていますし、プレイしたとか見聞きしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
また、海外ドラマ(日本から見て)や映画なども研究しており、「ヴァージンリバー」、「エバーウッド 遥かなるコロラド」、「となりのサインフェルド」、「チアーズ」、「たどりつけばアラスカ」、「スタンドバイミー」、「ギルモアガーズ」、「E.T.」が挙げられています。
私は「たどりつけばアラスカ」は全話見ているので、この海外ドラマが研究されていたと知る前から、雰囲気的には「たどりつけばアラスカ」を連想していました。

プロビデンスオークスは、こうしたリサーチがなされた上で誕生したゲームの舞台であり、湖を中心に森と山と田舎町が織りなす風景は心を和ませる美しさがあります。
登場人物も、個人的には「たどりつけばアラスカ」を彷彿させるものがあり、こうしたのんびりとした田舎町ならではのほのぼのとした温もりが感じられます。
それだけでなく、プロビデンスオークスで何不自由なく暮らす人たちがいる一方で、都会で一旗揚げたいのにプロビデンスオークスでくすぶらざるを得ない人たちや、逆に都落ちした人たちもいて、こうした登場人物たちの人間模様も楽しめます。
メレディス・ワイスはプロビデンスオークスから飛び立った大都会の成功者であり、こうした人たちとは一線を画する人種なのですが、プロビデンスオークスの人たちは彼女を快く受け入れてくれます。
プレイヤーは、メレディスとなってプロビデンスオークスの人たちと関わり、会話することでそうした機微を味わえるようになるのです。

グラフィック的には、「Xbox Series X」のゲームとしては物足りなく、プロビデンスオークスの美しさを十分に堪能できるというわけではないのですが、プレイしていくうちになじんでしまうところはあります。
ただ、郵便トラックのハッチを開けて小包を積み下ろしする際、荷室がベタッと塗っただけというのは味気なく、このあたりはそれなりに内装を描いてほしかった気はします。
サウンドは、今のゲームでは当たり前のフルボイスで、英語音声ながら日本語字幕も選ぶことができ、良好なボイスアクティングと良質な日本語字幕により、物語をより深く楽しむことができます。
システム周りでは、マップの開閉がRBボタンでウェイポイントの設置がXボタンというのは違和感があり、最後まで慣れませんでした。
また、マップの手紙と小包の住所が2行になってしまう際、次の住所に重なってしまうのも避けてほしかったところです。長さ的に日本語ならではの問題かもしれませんし、重なっても推測はできるので大きな問題にはなりませんが・・・。

ゲームでやることと言えば、郵便配達と登場人物との会話が主なものになります。
郵便配達は、その日に指定された住所に手紙と小包を届けるのですが、マップで大まかな位置は把握でき、自分でルートを考えるのが面白く、ドライビングゲームが好きな人なら操作性も良好なので運転を堪能できるでしょう。
登場人物との会話は、時折、3択が現れるのですが、何を選んでも差し支えない場合と、ストーリーが変わってくる場合があります。
会話自体はただの雑談だったり、重要なものがあったりするのですが、おおむね楽しめるものであり、時間の無駄と感じることはあまりないでしょう。
登場人物たちは、前述したように多様で個性的な人たちばかりなのですが、いずれも人柄が良く、ごく一部の人を除いて不快な思いをさせられるということはありません。このあたりは、メレディスが最後にどう決断するかにかかわってきそうです。

メレディスは最後に自らの身の振り方として3つの選択肢があるわけですが、どれを選ぶかではなく、どれも順番に選べことが手軽にできるというのも嬉しいところです。
本作はオートセーブになっているのですが、それとは別にマニュアルセーブすることができます。それも不足しないだけの数をセーブすることができるため、最後の決断だけでなく、途中の会話で別の受け答えとその結果を試みることもできます。
最近はオートセーブのみという不親切なゲームも多いだけに、こうしたユーザーフレンドリーなセーブシステムは大いに評価したいところです。
このように、本作はGamious初の“大作”ナラティブアドベンチャーゲームでありながら完成度の高いゲームに仕上がっており、ストーリー性のある美しいアドベンチャーゲームが好きという人なら最後まで楽しんでプレイできるのではないかと思います。
「Lake 2」があるのか、新規のナラティブアドベンチャーゲームをリリースするのか、まだ分からないものの、これだけのゲームを仕上げてきたからには、次のナラティブアドベンチャーゲームにも期待したいところです。

【ウォークスルーインデックス】
#1(9月1日-2日)
#2(9月3日)
#3(9月4日)
#4(9月5日)
#5(9月6日-7日)
#6(9月8日)
#7(9月9日)
#8(9月10日)
#9(9月11日)
#10(9月12日)
#11(9月13日)
#12(9月14-15日、エンディング1)
#13(9月13-15日、エンディング2)
#14(9月13-15日、エンディング3)

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