【GENRE】
スポーツ/競馬
【PUB./DEV.】
マイクロソフト/プログレス
【RELEASE DATE】
2002/10/10
【OUTLINE】
競馬学校を卒業したばかりの新人ジョッキー・木杉拓馬となり、さまざまな人たちや名馬と巡り会い、騎手として成長していく「ジョッキーRPG」です。
ゲームは、実際に馬に騎乗するレースパート、栗東トレーニングセンター内を移動するRPGパート、イベントムービーを見るムービーパートによって構成されています。
物語は、競馬学校を卒業した木杉拓馬が渋沢厩舎に所属し、同窓生のライバルである高野栄、広原みずえとともに、中央競馬の新人ジョッキーとしてデビューするところから始まります。そして、一流ジョッキーとして成功することをめざします。
【GAME MODE】
ゲームは、1週間単位で進行していきます。
火曜日は栗東トレーニングセンターで、トレセンを取り巻く人たちと言葉を交わしたり、情報収集を行ったり、騎乗依頼を受けたりします。
水曜日は、トレセンで追い切りを行いますが、追い切り内容はランダムで変わります。騎乗依頼のみを受けた時は、スキップして週末に進みます。
週末は、競馬場で騎乗依頼馬に騎乗します。レース成績やレース内容により、その後の展開が微妙に変化します。
なお、ゲーム中、ジョッキーとしての資質は19段階のRank(F~S+)として評価され、Rankが「F」のままで翌週を迎えるとゲームオーバーになります。
Rankは、レースで好成績を収めることなどで上がりますが、成績が悪かったり、騎乗依頼を断わることで下がっていきます。
セーブは1週間が終わるとオートで行われ、任意でセーブすることはできません。1週間の具体的な内容は、以下の通りです。
火曜日は、栗東トレセンで各施設間を移動することができます。栗東トレセンには、厩舎、入場門、スタンド、マロウ場、練習場、診療所、砂浴び場、馬体重計などがあります。
通常は、厩舎で調教師から騎乗依頼を受けたり、厩務員やトラックマンから情報を得たりすることができます。
「弓削さんが木杉を探していたぞ。騎乗依頼かもしれないから、後で厩舎に行ってみれば」などと教えてくれるわけです。
また、練習場では、基本練習(発馬、推進、抑止、左右、ムチ)、障害練習、ロデオ、スラロームの練習ができます。
更に、各種情報を調べることもできます。調べられるのは、今週の騎乗馬、競走馬情報、プレイヤー情報、GI成績、人物プロフィール、用語集、コンフィグ、スキルです。
プレイヤー情報では、「Jockey’s point」の振り分けが行えます。「Jockey’s point」には、以下の3種類の用途があります。拓馬の能力を上げる、競走馬の能力を上げる、スキルを入手する。
「Jockey’s point」で上げられるのは以下の8つで、最初はすべてEランクですが、D、C、B、A、Sランクと6段階まで伸ばすことができます。
スタートは、ゲートの出の巧拙やスタートダッシュに影響します。
パワーは、この値が高いほど、馬を追った時に伸びやすくなります。
折合いは、馬の勝手な行動(引っかかり、バカつきなど)を抑えやすくなります。
騎乗バランスは、馬に負担をかけない騎乗でスタミナ消費を抑えられます。
手綱さばきは、進路変更の速度に影響します。
運は、馬との相性が良い枠順を引きやすくなります。
魅力は、周囲の評価が高くなり、自然に「Jockey’s point」の所得額や騎手rankに影響します。
精神力は、ここぞというレースの時に、成果を出しやすくなります。
Skillには、ゲート、スタートダッシュ、騎手パワー、折り合い、騎乗バランス、手綱さばき、ラッキー、チャーム、メンタルパワー、追いタイミング、ムチ効果アップ、レースメーターなどがあり、特定のイベントやレースで手に入れられるものもあります。
Skilは、複数装備することができ、必要に応じて入れ換えられます。
水曜日は、調教師から依頼があった場合に限り、最大1頭だけ追い切りを行います。追い切りには、単走、併せ馬、坂路があり、調教師の指示に従って追い切ります。調教師の指示の遵守度に応じて「Jockey’spoint」をもらうことができます。
土曜日と日曜日は、騎乗依頼があった馬のレースに騎乗します。レース前に調教師から指示があるため、できるだけその指示に従って走りますが、指示は向こう正面あたりで守られていれば大丈夫です。
調教師の指示の遵守度やレースの着順、クリーンさに応じて「Jockey’s point」をもらうことができますが、調教師の指示を守らない方が好成績を残せる場合もあります。
本作は、全6+1act.で構成されており、その内容は以下の通りです。
act.1: アンちゃん(1年目3月1週~3年目1月5週)
競馬学校を卒業後、自らが育った牧場と縁のある渋沢厩舎に所属します。最初に、基本練習で、発馬、推進、抑止、左右、ムチの練習を行います。
デビューレースは、平馬500万下のホリデーシューズで、その後も渋沢調教師から依頼のあった馬に騎乗します。1年目の秋からは、所属する渋沢厩舎に加えて、弓削厩舎、前島厩舎の所属馬にも騎乗できるようになります。
本作は、「ジョッキーRPG」ということで、決まったストーリーがあり、プレイヤーはそのストーリーの範囲内で行動します。
そのため、あらかじめ決められたイベントというものがあり、「act.1 アンちゃん」の終盤でもイベントが続けて起こります。このあたりは、もうちょっと自由度が高くても良かったように思います。
さて、act.1終了時点の私の成績は、rankはC+、成績は89(21-13-8-47)です。
act. 2: フリージョッキー(3年目3月3週~3年目12月4週)
拓馬は、渋沢厩舎の解散により、フリージョッキーの道を選びます。そのため、栗東トレセン内を駆け回って、各厩舎から騎乗依頼を受けなければなりません。
しかも、騎乗依頼を受けられる厩舎はどんどん増えて、10近くになっています。古馬のツバメオー、3歳馬のライデンフブキといったGIを狙える有力馬にも乗れるようになってきます。
そして、いよいよGIを初制覇できるのですが、これはイベントレースで、1着入線馬の降着により、繰り上がって1着になるというムービーを見ているだけのものです。
このactのラストは、「有馬記念」でツバメオーに騎乗します。これはイベントレースではなく、完全に独力での勝負となります。
さて、act.2終了時点の私の成績は、rankはC+、成績は65(17-7-9-32)、statusは騎乗バランスがBでそれ以外はCです。
act.3: ライバル(4年目3月1週~4年目12月4週)
騎手学校時代の同期で中央競馬の新進気鋭の高野栄、騎手学校を中退しながら地方競馬に転じて大活躍の勝田勇三、と、激しい火花を散らせることになります。障害レースの騎乗依頼も増えてきます。
GIレースは、ほとんどがイベントレースになります。唯一、三冠馬・ライトニングスターでの「有馬記念」騎乗をかけた「エリザベス女王杯」だけが自力勝負となります。
その「有馬記念」も最後まで操作はできるものの、同じく三冠馬のエンペラーには勝つことができません。
さて、act.3終了時点の私の成績は、rankはA、成績は75(31-12-6-26)、statusはすべてBです。
act.4 クラシックロード(5年目3月2週~6年目3月3週)
act.4のタイトルになっている「クラシックロード」は、開発元のプログレスの傑作競馬シミュレーションゲームと同じ名前です。
さて、act.4では、GI制覇を狙える有力馬の騎乗依頼が相次ぎますが、無条件でGIに出られる場合と、トライアル的なレースで好成績を収めなければならない場合とがあります。
イベントレースはほとんどなく、自力でGIを勝つことができます。ただし、このact.の最後はイベントレースで、勝つことはできません。
さて、act.4終了時点の私の成績は、rankはS-、成績は72(27-8-8-29)、statusは魅力がS、手綱さばきがA、それ以外はすべてBです。
act. 5 渡欧(6年目10月3週~7年目6月4週)
act.5の中盤では、拓馬の騎手人生を賭けたビッグイベントがあります。「天皇賞(秋)」、「ジャパンカップ」、「有馬記念」と続くGI3連戦で、エンペラーに1勝でもしないと、引退→ゲームオーバーとなってしまうのです。
負けると、負けムービーを見てからオートセーブされるのですが、再び6年目12月4週からゲームを始めることができます。
最終戦となる「有馬記念」では、カブラデカブラ(牡4歳・河村厩舎)かダークアンドダーク(牡6歳・矢ケ崎厩舎)のいずれかには無条件で乗れます。
私は、人気馬のカブラデカブラと中穴のダークアンドダークで何度かエンペラーに完敗した後、結局は中穴のダークアンドダークでエンペラーを下すことができました。
その際は、エンペラーはなぜか他馬にも負けて3着止まりでした。負けてもオートセーブされるということから、負けるたびにエンペラーのパラメーターが少しずつ下がるようになっているのかもしれません。
「有馬記念」後は、ゲームは7年目3月4週まで自動的に進みます。act.5の後半では、これといったイベントはありません。
「渡欧」というタイトルから、ヨーロッパに武者修業に出かけて「凱旋門賞」などに挑戦するのかと思いがちですが、実は拓馬の出生の秘密を探る旅に出かけるのでした。そこで、拓馬は、衝撃の事実を知り・・・。
さて、act.5終了時点の私の成績は、rankはS+、成績は67(18-12-12-25)、statusは魅力がS、パワー、折合い、騎乗バランス、手綱さばきがA、スタート、運、精神力がBです。
act.6: 運命の馬(7年目10月1週~8年目6月4週)
act.6の前半では、ロストラヴが中心になります。イベントレースなどといった鬱陶しいものはなく、ロストラヴで、「天皇賞(秋)」、「ジャパンカップ」、「有馬記念」という秋のGI3連戦を全勝できるのです。
「運命の馬」とは、3歳牡馬のセントエルモのことで、act.6では、この馬を中心にストーリーが展開していきます。また、古馬のロストラヴ、3歳牝馬のチャイナビジンという有力馬にも騎乗できます。
セントエルモでは、「皐月賞」、「日本ダービー」、チャイナビジンでは、「桜花賞」、「オークス」、ロストラヴでは、「天皇賞(春)」と、数多くのGIを制することができます。しかし、物語は、三冠制覇を前に中途半端に終わります。
さて、act.6終了時点の私の成績は、rankはS+、成績は84(35-16-10-23)、statusは騎乗バランス、手綱さばき、魅力がS、パワー、折合い、スタート、運、精神力がAです。
epilogue
フランスに遠征し、セントエルモで「凱旋門賞」(ゲーム中では「凱戦賞」)に挑戦します。これはどうやらイベントレースらしく・・・。
another story: スーパージョッキー
「JOCKEY’S ROAD」本編を終了するとできるようになるモードで、本編の主人公・木杉拓馬のライバルだった高野栄が主人公となるモードです。
高野栄は、婚約者のみどりがアメリカで病気の治療をするための励みとなるように、GIで全勝することをみどりに誓います。
GIで全勝するためには勝てる馬を選んで乗る必要があるため、自らが所属する能登厩舎を離れてフリーとなり、GI全勝に挑んでいきます。
実際、GIごとに複数の厩舎から騎乗依頼があるため、より有力な馬、より自分が騎乗しやすい馬を選ぶことができます。
そのため、秋から始まったGI戦線のほとんどは、「スプリンターズステークス」(パッシングセンター・牡4歳)、「秋華賞」(アトリエ・牝3歳)、「菊花賞」(セイテンタイセイ・牡3歳)、「天皇賞(秋)」(エンドレススパーク・牡5歳)、「エリザベス女王杯」(ミナヅキマーク・牝4歳)、「マイルチャンピオンシップ」(パッシングセンター・牡4歳)、「ジャパンカップ・ダート」(カイリキスラッガー・牡4歳)、「ジャパンカップ」(エンドレススパーク・牡5歳)、「阪神ジュベナイルフィリーズ」(キセキノカネ・牝2歳)、「朝日杯フューチュリティーステークス」(アルシーヴ・牡2歳)、「有馬記念」(エンドレススパーク・牡5歳)と、労せずして勝つことができます。
私が、唯一、苦労したのが、「ジャパンカップ」で、これだけは、10回近くチャレンジしました。
春からのGI後半戦も、「フェブラリーステークス」(カイリキスラッガー・牡5歳)、「高松宮記念」(パッシングセンター・牡5歳)、「桜花賞」(グルーザ・牝3歳)、「皐月賞」(ハイメイト・牡3歳)、「天皇賞(春)」(セイテンタイセイ・牡4歳)、「NHKマイルカップ」(アルシーヴ・牡3歳)、「オークス」(グルーザ・牝3歳)、「ダービー」(グリーンパスチャー・牡3歳)、「安田記念」(アルシーヴ・牡3歳)、「宝塚記念」(セイテンタイセイ・牡4歳)と、あまり苦労することもなく勝ち進むことができます。
「宝塚記念」を勝つと全GI制覇となり、グッドエンディングを迎えることができます。ちなみに、GIで負けると、みどりの様態が急変し、飛行機に乗る画面が写されて、ゲームオーバーになってしまいます。
さて、「another story」終了時点の私の成績は、rankはS+、成績は59(46-7-1-5)、statusは、手綱さばき、魅力がS、パワー、折合い、騎乗バランス、スタート、運、精神力がAです。
【GRAPHIC】8
ほぼ同時期に出た同系統の競馬ゲームということで、「ジーワンジョッキー3」と「ギャロップレーサー6」が評価の対象になりうるのではないかと思います(もっとも、私は「ギャロップレーサー」シリーズは「6」以降は見限っていますので、ここでは「5」でお話を進めます)。
もちろん、「Xbox」と「プレイステーション2」のグラフィック性能の差は大きいだけに、本作は両者を凌駕するものでなければなりません。
そうした観点から考えると、本作と「ジーワンジョッキー3」は、コース内はもちろんのこと、コース外もスタンドばかりか、ビルや高速道路、木や柵までもが丁寧に描かれています。
それに対して、「ギャロップレーサー5」では、各競馬場のコース内こそ忠実に再現されているものの、コース外は現実通りのスタンドはあっても、それ以外は木が一様に並んでいるだけのものでした。
もっとも、「ジーワンジョッキー3」では、それらと多数の馬が同時に描写された場合には激しく処理落ちしてしまいます。
つまり、「プレイステーション2」では、遠景まで正確に描写すれば処理がつらくなり、処理を優先すれば遠景を犠牲にしなければならないという2者択一を迫られてしまうわけです。それに対して、「Xbox」のグラフィック性能を得た本作では、遠景まで描写しながら処理落ちもしないというグラフィックを実現させています。
広大な栗東トレーニングセンターをすべて入れてしまったというあたりも、「Xbox」ならではのものなのではないでしょうか。
ただ、トレセン内を移動する際には、マップで移動先を選ばなければならないため、あまりそれを実感することはできません。
徒歩で遠くの厩舎まで歩いて移動するのはさすがに面倒とはいえ、そうすることもできれば良かったようにも思います。
本作を「プレイステーション2」の同系統の競馬ゲームと比較するのではなく、「Xbox」のゲームとして見た場合には、パッと見のグラフィックは、それほど「Xbox」らしさを感じられるというほどではありません。もう少し、実写的な画を実現させてほしかったところです。
イベントなどのムービーが随所に挿入されるのも本作の特徴ですが、このムービーの一定水準を保った質の高さやゲーム画面との隔たりのなさが、本作をドラマチックなものにしているのは確かなところです。
【SOUND】9
ドルビーデジタルです。本作では、ほぼ同時期に出た同系統の競馬ゲームの中で、唯一、本格的な実況が入れられています。
実況には、ラジオたんぱの競馬中継でもおなじみの中野雷太を起用しており、実際の競馬中継さながらのリアルな実況を堪能することができます。
アクション系の競馬ゲームは、シミュレーション系の競馬ゲームと違ってレース展開の変化が大きいため実況を入れるのは難しいようですが、本作ではほとんど違和感を感じることのない実況で、すんなりとレースに入り込むことができます。
また、イベントなどのムービーが随所に挿入されるため、キャラクターがしゃべることが多いのですが、ボイスアクティングの質は高く、ゲームに対する感情移入度を高めるのに役立っています。
【CONTROL】6
本作の操作性は、「ジーワンジョッキー」シリーズや「ギャロップレーサー」シリーズに比べると劣ります。本作の基本的な操作は、以下の通りです。
左スティックが左手の手綱の操作とクリックで左ムチ、右スティックが右手の手綱の操作とクリックで右ムチ、方向パッドが視点の移動と固定、左トリガーが視点の左移動、右トリガーが視点の右移動、Xボタンが視点位置の初期設定化、Yボタンが視点の切り替え(後方、自分、見下ろし)、が主なものとなっています。
また、馬の細かな操作方法は、以下の通りです。推進は、左右のスティックを同時に上に動かします。この際、一完歩ごとに1回、馬の首を押す感覚で行います。
馬の動きに合わせてタイミング良く推進できれば、画面の騎手の腰が低くなり、手の動きが奥に行く「追い」の姿勢となり、馬を加速します。
逆に、タイミングが悪いと、推進しても、画面の騎手が立ったままの状態か、手の動きがあまり奥には行かず、馬も加速しません。
減速は、左右のスティックを同時に下に動かします。この際、引き具合により減速の度合いが変わります。
左に減速して進路変更は、左スティックを下に動かします。右に減速して進路変更は、右スティックを下に動かします。
障害レースの飛越は、ジャンプ直前に両方のスティックを下に下げるだけです。飛越の上手な馬は短めに、飛越のヘタな馬は長めに、スティックを下げればOKです。
ムチの持ち替えは、ムチを持っていない方のスティックをクリックします。つまり、本作では、原則として左右のスティックを手綱に見立てているわけです。
しかし、これがそもそもの誤りだと思います。推進のタイミングは極めて難しく、私は最後まで完璧にこなせるようにはなりませんでしたし、ほとんどのプレイヤーが百発百中というわけにはいかないはずです。
ましてや、この手の競馬ゲームをプレイしたことがなく、競馬もそれほど好きではないが、「ジョッキーRPG」という言葉に惹かれて本作を購入した、というプレイヤーであれば、途中で投げ出したくなる可能性もあることでしょう。
また、このシステムを採用していることで、直線で前が詰まりそうになった際には、いったん追うのをやめてコースを変更しなければならなくなります。
本作では、A、B、黒、白の4つのボタンは馬の操作では使用しないのですから、Aボタンが推進、Bボタンがムチ、黒ボタンと白ボタンがムチの持ち替え、などとしておけば良かったのではないでしょうか。
【GAMEPLAY】6
本作は、「ジーワンジョッキー」シリーズや「ギャロップレーサー」シリーズと同系統の競馬ゲームでありながら、「ジョッキーRPG」としてゲームにストーリー性を持たせています。
競馬は素人の寺田憲史をシナリオに起用しながらも、競馬の専門的な部分はプログレスがアシストしただけあって、競馬のお話として違和感を感じることはほとんどありませんし、ストーリー的にはそれなりに楽しめる内容になっています。
しかしながら、やはり、この手の競馬ゲームとして見た場合には、このストーリー性というのは無用の長物だったように思います。
まず、リアル系の競馬ゲームなら当然実在馬を実名で登場させるべきなのに、すべての馬名が架空のものになってしまっています。
また、イベントレースが随所に折り込まれており、絶対に勝てないレースや適当に乗っていれば勝ててしまうレースが存在します。
しかも、お話を都合良く進ませるために、知らない間に勝ち鞍が増えていたり、いきなり数カ月飛んだりします。
更に、騎乗依頼を受けるために厩舎回りをしなければならないのですが、同じく厩舎回りをしなければならない「ジーワンジョッキー3」よりも人間味があるとは言え、面倒さは「ジーワンジョッキー3」の比ではありません。
本来、競馬も競馬ゲームも好きなプレイヤーを対象とするなら、こうしたストーリー性は必要がなく、好きな実名の実在馬をお手馬として自分の思い通りにレースに出走できるようにするべきでした。
逆に、競馬にはあまり興味がないプレイヤーを「ジョッキーRPG」というストーリー性で引っ張ってこようとするのなら、前述した推進のタイミングの難しさは歓迎できるものではありません。
本作からは、一見、ライトユーザーに迎合するような内容でありながら、操作性はコアユーザー向けという矛盾が感じられます。
本作のリアル指向の中にも、矛盾が感じられる部分があります。最もそれが感じられるのが、ゲート入り直前とゲート入りです。
本来なら、ゲート入りが完了するまでは厩務員が馬を引いているのですが、本作では厩務員の姿はなく、馬は騎手に促されて自らゲート入りしています。
競馬に詳しいプログレスが作っている以上、この矛盾には気がついているはずなので、こうした誤りは正してから発売すべきでした。
また、本作では、障害レースまで入れられていますが、本来なら障害レースではなく、地方交流レースを入れるべきだったのではないでしょうか。
中央競馬の平地のトップクラスで障害レースにも騎乗するという騎手はいませんし、中央競馬のダート路線のトップクラスの馬は地方交流レースに出走するのが当たり前になっています。
本作でも、地方競馬に関係するエピソードが多いのに、地方交流レースが入れられていないのは不自然です。
実際、ゼロユニットで「ジャパンカップ・ダート」を制したのですが、なんと引退レースには「有馬記念」が選ばれました。
アグネスデジタルのようなダートと芝の兼用馬もいれば、イングランディーレのように「天皇賞(春)」を制してしまう馬もいます。しかし、これはやはり不自然で、「東京大賞典」に挑戦するべきでしょう。
それから、これは矛盾とも言い切れないのですが、レース前の調教師の指示とレース後のトレセンでのコメントがランダムすぎるように感じます。
レース前には、「好きに乗ってこい」、「何が何でも逃げろ」、「ここは型通り先行だな」、「直線だけで勝負しろ」、「スタートしたら最後方に下げろ」、「○○○○○をマークしろ」、などと言われるのですが、これは馬の脚質や予想されるレースの流れなどを鑑みない指示になっています。
そして、レース後のコメントも、誉められたり、クレームをつけられたりしますし、「Jockey’s point」も、もらえたり、もらえなかったりします。ここも少し、ランダムすぎるように思います。できれば、ある程度の幅の中でランダムにすべきだったのではないでしょうか。
これとも関わってきますが、セーブがオートになっているのも問題です。本作は、1週間が終わらないとセーブされないため、レースをやり直そうと思ったら、また栗東トレーニングセンター内を移動するRPGパートから始めなければならないのです。
これは、ものすごく面倒なことです。やはり、曜日ごとにセーブできるようにして、セーブデータも複数作れるようにするべきでした。もっと、ユーザーフレンドリーなゲームづくりを心がけてほしいものです。
【LONGEVITY】9
本作には、モードというものがなく、単にストーリーに沿ってゲームを進めていくだけです。
それでも、各act.の実際に馬に騎乗するレースパート、栗東トレーニングセンター内を移動するRPGパート、イベントムービーを見るムービーパートは相当のボリュームがあり、しっかりとプレイしていれば、1act.平均5時間ぐらいはかかるのではないかと思います。
それが6+1act.ですから、単純計算すると約35時間ということになります。「ジーワンジョッキー」シリーズや「ギャロップレーサー」シリーズといった同系統の競馬ゲームでは50時間以上プレイするのが当たり前ですから、本作の約35時間が特に長いというわけではありません。
むしろ、自由に騎乗してレースを楽しめる「フリーモード」などがあれば良かったように思います。
【OVERALL】8
本作は、前述しているように、「ジーワンジョッキー」シリーズや「ギャロップレーサー」シリーズと同系統の競馬ゲームでありながら、「ジョッキーRPG」としてゲームにストーリー性を持たせたことに大きな特徴があります。
しかしながら、この手の競馬ゲームとして見た場合には、このストーリー性というのは無用の長物だったように思います。
しかも、一見、ライトユーザーに迎合するような内容でありながら、操作性はコアユーザー向けという矛盾が感じられます。
とはいえ、競馬も競馬ゲームも大好きな身からすると、本作がそれなりに楽しる競馬ゲームだったのは間違いのないところです。
そもそもの企画やリアル指向には問題があったものの、競馬ゲームとしてのデキは悪くはなかったということです。
ここで指摘したような点を再考した上でXbox LIVEに対応させれば、同系統の競馬ゲームを上回るデキの競馬ゲームに化ける可能性もあるのではないかと思います。
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