「ウィッシュルーム 天使の記憶」レビュー

【GENRE】
アドベンチャー

【PUB./DEV.】
任天堂/CING

【RELEASE DATE】
2007/1/25

【OUTLINE】
願いがかなう部屋があるという「ホテル・ダスク」を舞台に展開するミステリーアドベンチャーゲームです。
1976年12月24日、刑事のカイル・ハイドは、親友で同僚のブライアン・ブラッドリーを銃で撃ちます。ブラッドリーは、マンハッタンで暗躍する犯罪組織の潜入捜査をしていたのですが、捜査情報をその組織に流していることが分かったからです。しかし、埠頭からは死体は発見されませんでした。これを機に、ハイドは89分署を去ります。
それから3年、カイルは、レッドクラウン商会のセールスマンになります。社長のエドは、表立っては探せないいわくつきの探し物を見つけ出すビジネスを手がけており、カイルはその裏稼業を手伝うこともあります。そして、1979年12月28日、ボロ車に乗り込み、ホテル・ダスクへと仕事に向かいます。

【GAME MODE】
START
ゲームを初めからプレイします。

CONTINUE
セーブデータからプレイします。セーブデータは、複数作成することができます。
物語は、全10チャプターで構成されており、主人公のカイルを操作したり、出会った人物と会話するなどして物語を進めます。

移動画面では、左画面はカイルが実際に見ている3Dの光景、右画面は2Dマップが表示されます。カイルは、タッチした方向に移動し、離れた場所をタッチすると速く歩くことができます。
人に近づくと人形のアイコンが点滅し、タッチすると会話したり、疑問に思ったことを突っ込んだりすることができます。
探索できる場所に近づくと、ルーペのアイコンが点滅し、タッチすると周囲を調べることができます。
ドアに近づくと、ドアのアイコンが点滅し、タッチするとドアが大きく表示されます。ドアを2回続けてタッチするとノック、ノブを2回続けてタッチするとドアを開けます。
鍵のかかっている部屋は、その部屋に合う鍵を持っている場合には、カバンのアイコンをタッチして鍵を選び、ドアノブをタッチすると開けることができます。
メモのアイコンをタッチするとメモを書くことができ、カバンのアイコンをタッチするとアイテムを使うことができます。
会話は、送りボタンをタッチして会話を進め、選択肢が表示された場合は、項目をタッチして選び、もう1度タッチして決定します。心の中で考えたことは青色、キーワードは赤色で表示されます。
会話中に、突っ込みアイコンが表示され、それをタッチすると、その会話について詳しく聞くことができます。
なお、会話の進め方や謎解きの結果によっては、ゲームオーバーになる場合があります。そのシーンに戻って再挑戦する場合には「Retry」を、タイトル画面に戻る時は「Backto Title」をタッチします。
疑問パネルは、カイルが疑問に感じた時に、頭の中に溜まります。疑問パネルには3種類あり、会話が一段落したり、カイルから話しかけると、尋ねたり追求したりすることができます。
黄色は、1人に聞けば解決する疑問で、うっかり聞き逃した場合には、後ほど灰色で表示される場合があります。白色は、尋ねる人が分からなかったり、数人に尋ねる必要がある疑問です。赤色は、人を追及して解決する疑問です。

探索画面では、アイテムを使ったり、メモを取ったり、スライドバーで見る方向を変えたりすることができます。メモは、タッチペンでメモ欄に3ページまで書くことができ、4ページ目以降は、登場人物が書いたメモが表示されます。
謎解きは、会話や探索の結果によって発生することがあります。タッチペンでタッチしたりスライドするなどして仕掛けを解きます。
手帳は、パンフレットでホテルのマップを表示し、しおりでチャプターのあらすじを読み、アイテムや人物でそれらの説明が見られます。データのセーブとロードも行えます。

本作の主な登場人物は、以下の通りです。

カイル・ハイド
33歳。元ニューヨーク市警の刑事で、現在はレッドクラウン商会のセールスマンをしています。3年前に失踪した同僚のブライアン・ブラッドリーを捜しています。

ミラ
カイルがホテル・ダスクへ向かう途中で見かけた若い女性です。ホテルで再会しますが、話せないことが分かります。ブラッドリーがしていたのと同じブレスレットをしています。

レイチェル
27歳。エドの秘書で、カイルとの連絡役です。聡明で優しい女性ですが、カイルがブラッドリーを捜していることは知りません。

エド・ヴィンセント
59歳。レッドクラウン商会の社長で、元ロサンジェルス市警の刑事です。カイルの死んだ父親と顔見知りで、カイルがブラッドリーを捜していることを知る唯一の人物です。

ダニング・スミス
49歳。ホテル・ダスクの頑固なマスターです。警察、悪党、面倒のすべてが嫌いで、カイルに願いがかなう部屋の話をします。

ブライアン・ブラッドリー
カイルが捜している親友の元刑事です。3年前、マンハッタンで犯罪組織の潜入捜査中に警察を裏切り、カイルに撃たれてから行方不明になっています。

ローザ・フォックス
40歳。ホテル・ダスクのメイドです。口は悪いものの働き者で、マスターのダニングの信頼も厚くなっています。ホテルに現れたミラの面倒を見ています。

ルイス・フランコ
25歳。ホテル・ダスクのボーイです。3年前にマンハッタンから西海岸に流れてきます。カイルが刑事時代に捕まえたことがあり、ホテルで再会します。

ヘレン・パーカー
70歳。212号室の宿泊客です。ホテル・ダスクに願いがかなう部屋があるという噂を知っており、このホテルに懐かしい思い出があるからと泊まっています。

メリッサ・ウッドワード
8歳。219号室の宿泊客です。家を出た母親に会いに行くために父親と一緒に旅行しています。カイルに構ってもらいたくてわがままを言ってきますが、小さな胸に寂しさを抱えています。

ケビン・ウッドワード
35歳。219号室の宿泊客です。メリッサの父親で、サンタモニカのロビンズ病院に勤める医師です。妻に出て行かれ、幼い娘の世話もあり、疲れ悩んでいます。

アイリス
30歳。216号室の宿泊客です。ハイドの向かいの部屋に泊まる高慢な女性で、なぜホテル・ダスクに泊まっているのか話そうとしません。

ジェフ・エンゼル
19歳。213号室の宿泊客です。ミラをホテルまで乗せてきた若者で、いいクルマに乗っていて、ホテル・ダスクみたいな安ホテルには初めて泊まったそうです。

マーティン・サマー
50歳。211号室の宿泊客です。ベストセラーを出したことがあるミステリー作家です。配達間違いでカイルの荷物を受け取ったことから、カイルと話をするようになります。

【GRAPHICS】8
本作は、ゲーム機の中では想定年齢層が低い「ニンテンドーDS」向けタイトルの中にあって、かなり大人の雰囲気が感じられるグラフィックになっています。
本作は、「ニンテンドーDS」本体を縦に持ち、左右に並んだ2つの画面でゲームが展開するわけですが、左画面はフル3D、右画面は2Dマップ、という構成になっています。
プレイヤーは、右画面の2Dマップをタッチペンでなぞるか、十字ボタンを操作することでキャラクターを移動させます。左画面のフル3Dも、この動きに合わせて滑らかに動くというのが心地良く感じられます。
十字ボタンでの操作がより1人称視点のゲームをプレイしている感覚に近いとは思うのですが、タッチペンで右画面の2Dマップをなぞると左画面が動くというのもまた、グラフィック的には新鮮に感じます。
左画面のフル3D自体も、グラフィックの質は高く、落ち着いた絵作りの中、安ホテルながらも品のいい廊下や室内が美しく描かれています。調度品のたぐいも、こだわりを感じさせます。
キャラクターのグラフィックが独特なのも、本作のグラフィックを大人っぽくしている大きな要因のひとつです。
本作では、キャラクターはリアルに描かれているのですが、手書き風のモノクロになっています。しかも、そのキャラクターが、パラパラマンガを見ているかのような、かなり少ないフレーム数で動くのです。
これがまた、絶妙な味わいを醸し出します。これが、容量を稼ぐものなのか、狙ったものなのか、その両方なのか、はっきりとは分からないのですが、作品の雰囲気を高めるのに貢献しているのは確かです。

【SOUND】6
「ニンテンドーDS」のタイトルだけに、キャラクターボイスはありません。「ニンテンドーDS」のアドベンチャーゲームの中でもセリフ量は多い方だと思われるので、これは致し方のないところではあると思います。
それでも、一癖も二癖もあるキャラクターが登場するだけに、実力派声優陣のボイスが乗っていたら、より雰囲気のあるゲームに仕上がっていたのではないでしょうか。
音楽は、この手のハードボイルド的なアドベンチャーゲームにはピッタリの上質なものが流れます。

【CONTROL】8
タッチペンだけでほとんどの操作が行えますし、各種ボタンを併用することもできます。キャラクターこそリアルタイムで移動するものの、素早い操作が要求される場面も少ないアドベンチャーゲームだけに、操作性で問題になるようなことはほとんどありません。
探索中は、スライドバーで眺める位置をずらすことができ、別の角度で眺めることができるのも嬉しい配慮でしょうか。

【GAMEPLAY】8
本作は、願いがかなう部屋があるというホテル・ダスクを舞台に展開するミステリーアドベンチャーゲームで、ゲーム機の中では想定年齢層が低い「ニンテンドーDS」向けタイトルの中にあって、かなり大人の雰囲気が感じられるタイトルになっています。
本作の開発元であるCINGは、「ニンテンドーDS」の「アナザーコード 2つの記憶」で有名ですが、そのCINGを設立したのは同じく福岡にあったリバーヒルソフトのスタッフで、リバーヒルソフト自体がハードボイルドタッチのミステリーアドベンチャーやストーリーのしっかりしたタイトルを数多くリリースしていたことを考えると、それも当然のことと言えるのかもしれません。
本作のタイトルは「ウィッシュルーム 天使の記憶」ですが、アメリカでのタイトルは「HOTEL DUSK ROOM 215」で、日本のタイトルの響きの良さとその裏に垣間見える物語性に対し、より直接的なものになっています。日本のタイトルは、タイトルにも大人の美しさにこだわったリバーヒルソフト時代からの伝統といったところでしょうか。

物語の舞台は、ロサンジェルスからラスベガスに向う道路沿いにポツンと建つホテル・ダスク。ホテルとしては、こじんまりとした古いレンガ造りの2階建てで、客室は10室ほどしかなく、従業員もわずかに3人しかいません。しかしながら、部屋や廊下には品の良さがあり、調度品にもこだわりが感じられます。
マスターのダニングは、大のアイスホッケーファンで、テレビで試合を見ている時はいつも夢中で、フロントの仕事も忘れてしまうこともあります。1階にあるレストラン「ムーンライト・グリル」は、18時から21時までオープンし、厨房を預かるメイドのローザの料理は泊り客に評判でホテルの自慢のひとつになっています。
その向かい側にあるバー「セブン・スターズ」は、21時から24時までオープンし、カウンターだけの狭いバーながらジュークボックスもあり、ボーイのルイスがバーテンダーとしておいしいバーボンを飲ませる居心地のいい店です。
このようなホテルの成り立ちとたたずまい、そして、わずか3人の従業員のキャラクターが、ゲームを奥深いものにしています。
客も、あまりにも個性的な顔ぶれの面々が集まってきます。ここが、安ホテルだからなのか、願いがかなう部屋があるからなのか、ホテル自慢の料理を味わいたいからなのか、それ以外の理由があるのか。
カイル・ハイドがここにやってきた本来の目的とは違うものの、こうした人たちがここに集まった理由を探っていく過程も、本作を、大人の味わいが感じられるものへと誘っていきます。
そして、登場人物たちの中には、実は初対面ではなく以前から面識がある人がいたり、結果として結びつくような人がいたりして、物語はより奥深いところへと入り込んでいきます。それも、あくまでもハードボイルドテイストの中で進行していくのです。このあたりが、本作の大人の雰囲気が感じられる部分でもあります。

アドベンチャーゲームとしての謎解きは、難しすぎないにせよ、それなりに手ごたえがあります。次にどこに行けばいいのか迷うことが少なからずあり、人との会話の進め方や謎解きによっては何度がゲームオーバーを経験する場面もあります。
また、ゲームを再開する時に、直前までの経過を知る術がなく、しばらくは手探り状態になってしまうのも、少し気になる点です。
それでも、本作は、エンディングまで、その雰囲気を壊すことなく、素晴らしいミステリー作品を終えた時のような感慨に浸ることができます。続編を匂わせるような終わり方をしますが、2010年1月に「ラストウィンドウ 真夜中の約束」が発売されています。
なお、CINGは、残念ながら2010年3月に破産申請手続きを始めてしまいます。晩年に発売したタイトルの売れ行きが芳しくなく、予定した2作品の開発がずれ込んだこともあって、債務超過額が膨らんだことが原因だったようです。それでも、リバーヒルソフトがCINGになったように、新たな会社で同じようなテイストのタイトルを期待したいところです。

【LONGEVITY】7
本作は、全10チャプターまであるアドベンチャーゲームで、会話も読むだけながら多く、選択を迫られることも少なからずあります。
また、謎解きは、難しすぎないにせよ、それなりに手ごたえがあったり、次にどこに行けばいいのか迷うことが珍しくはなく、人との会話の進め方や謎解きによっては何度がゲームオーバーを経験する場面もあります。
それだけに、「ニンテンドーDS」のアドベンチャーゲームとしては、プレイ時間は長い方で、じっくりと楽しめることでしょう。

【OVERALL】8
本作は、願いがかなう部屋があるというホテル・ダスクを舞台に展開するミステリーアドベンチャーゲームで、ゲーム機の中では想定年齢層が低い「ニンテンドーDS」向けタイトルの中にあって、かなり大人の雰囲気が感じられるタイトルになっています。
ホテルの成り立ちとたたずまい、わずか3人の従業員のキャラクターも、ゲームを奥深いものにしています。しかも、あまりにも個性的な顔ぶれの客たちが集まってきており、こうした人たちがここに集まった理由を探っていく過程も、本作を、大人の味わいが感じられるものへと誘っていきます。
そして、エンディングまで、その雰囲気を壊すことなく、素晴らしいミステリー作品を終えた時のような感慨に浸ることができます。「ニンテンドーDS」でこのようなタイトルがプレイできるのは素晴らしいことで、大人の雰囲気が感じられるアドベンチャーゲームが好きな人は、ぜひともプレイしてほしいところです。

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