「TINYKIN」レビュー、ピクミンがいる「レミーのおいしいレストラン」風3Dパズルゲーム

「TINYKIN」は、3Dパズルプラットフォーマーです。宇宙飛行士のマイロが地球に帰還すると、彼が小さすぎること、誰もいなくなったこと、1991年から1年も経過していないことに気づきます。
プレイヤーは、虫のように小さくなったマイロとなってタイニーキンたちを操り、彼らのユニークな力を駆使して、(彼から見れば)巨大な部屋の中を探索します。
そして、それぞれの部屋にいる虫たちの頼みを聞きながら、アイテムを収集し、はしごや橋を作り、障害物を爆発させ、いろいろな問題を解決していきます。
本作を開発するSPLASHTEAMは、フランスのインディーゲームスタジオで、2Dプラットフォーマー「SPLASHER」に続いて2本目の作品になります。
ちなみに、タイトルで「ピクミンがいる「レミーのおいしいレストラン」風3Dパズルゲーム」と書きましたが、タイニーキンの操作がピクミンのようであり、小さくなったマイロが探索する部屋がゲーム「RATATOUILLE」(レミーのおいしいレストラン)」のようだからです。
私はプレイしてすぐに「「レミーのおいしいレストラン」みたいなゲームだな」と思ったし、そこにピクミンの要素が加わっているので、こうしたタイトルになりました。
ちなみに、キッチンにレミーがいたのですが偶然でしょうか。

※以下で、部屋名とメイン目標、サブ目標を明示しています。
訪問順になっていますが、知りたくない方は、写真の下までスクロールしてください。※


さて、物語の舞台となる部屋は全部で1+6(?)室あり、以下のような部屋で構成されます。

クリサールの作業場は、「知恵の隠れ家。この孤立した隠れ家には、少数の奇人たちが住んでいる」。

トランジドール交差点は、「この通路には誰も住んでおらず、商人や旅人たちの通り道となっている」。廊下と階段です。
メイン目標は「小さな最初の一歩」で、「花の鉢植えを動かして、リドミーが階段の下を通れるようにしよう」。
サブ目標は、「リドミーの鍵でサンクタールの扉を開けよ」、「2階の金庫の開け方を調べて、アンブローズのカギを手に入れよ」。

サンタクール市は、「宗教的な心。聖堂に集まった修行僧や巡礼者たちは、創造主であるアードウィンを称え、彼の神聖な聖歌を歌う」。リビングです。
メイン目標は「歌われぬ聖歌」で、「アードウィンの聖歌が皆に響くよう、CDプレイヤー直そう」。
サブ目標は、「ピアノの中に入って、メロディーを探そう」、「カメラを使って、クローゼットのお化けを暴こう」、「テレビを修理して、アルセーヌの宝石に辿り着こう」。

フォリアナ高地は、「豪華でワイルドなジャングル。この地の植物から得られる資源を守るため、新参者を敵視する誇り高き部族の領地である」。温室です。
メイン目標は「狂気の温室」で、「水槽の底にある個性派ちゃんのカギを回収せよ」。
サブ目標は、「フォリアナの上にあるロピネの宝石を回収せよ」、「先史時代の生物の骨を組み立て直せ」。

パルネアの水は、「水と夜の領地。安易に同居しない正反対の性格の追放者たちの住処。水上祭には、家中のパーティ参加者が集まる」。バスルームです。
メイン目標は「荒れた海での妨害行為」で、「主催者のパーティーを手伝え」。
サブ目標は、「奇妙な機械からハラデインの宝石を取り出せ」、「ジャックとローズのプレゼントを届けよ」、「テディを洗濯機で洗え」。

アンブローズの国は、「農耕民族の平野、その恵みは家中を養う。収穫物の分配は、永遠の争いの種である」。キッチンです。
メイン目標は「大災害のレシピ」で、「アードウィンのケーキを食べさせて革命を終わらせよ」。
サブ目標は、「アクティヴィスのポスターを貼れ」、「電子レンジでポップコーンを作れ」、「抽出機の中に入ってスパギリの宝石を手に入れよ」。

セレリオンパークは、「エンターテインメントの都。休暇を過ごす人々や観光客、レース好きが集まり、スピード狂のような喜びの瞬間を共有できる」。子供部屋です。
メイン目標は「危険なレース」で、「レースに必要な物を全て集めよ」。
サブ目標は、「ギャクラシオンのアトラクションで小惑星を破壊し、ホンソラの宝石を入手せよ」、「3つの攻城機で風船を破壊せよ」、「個性派ちゃんが隠した動物園の動物5匹を取り戻せ」。

ゲームは、クリサールの作業場(家の向こう)が拠点になります。上記の部屋を順に回り、欠けている部品を集め直してアードウィンの機械を作り直せば、マイロが今の状況から脱却できるかもしれないというわけです。
部屋は上記の順に回りますが、それぞれの部屋でメイン目標を達成することでマイロの飛行能力が上昇したり、タイニーキンの種類が増えて固有のスキルも加わるため、部屋によっては今まで行けなかった場所も探索しやすくなります。
部屋に入ったら最初に行うのは、花粉とタイニーキン集めです。小さくなってしまったマイロにとって部屋は巨大で、広さはもちろんのこと、高さはそれ以上に感じます。
しかしながら、花粉とタイニーキンは部屋の至るところにあるため、それらを集めるためには部屋の隅々まで探し回る必要があります。
床の上はもちろんのこと、家具の上や植木の上に点在していたり、家具の裏に回り込んだりしなければなりません。
それだけでなく、タイニーキンの能力を利用することで新たな道が開けたり、タイニーキンを増やしたりすることができます。
実際のところ、タイニーキンがいないとどうしようもないため、部屋に入った当初はひたすらタイニーキンと花粉を集めることになります。
作業と言ってもいいほどなので、タイニーキンや花粉が集まっていくことに喜びを感じられる人なら問題ないと思いますが、この作業が苦手という人はあまり楽しいと感じないことでしょう。

また、部屋の中には、それぞれの部屋に固有の昆虫がいて、思い思いの生活をしています。
彼らの多くは話しかけることができ、彼らに話しかけることで、メイン目標を進めることができたり、最初は不明なサブ目標を受けたりすることができます。
メイン目標はゲームの進行に直接かかわってくるもので、このメイン目標を達成しないことにはゲームは進みません。
メイン目標は、昆虫たちに話しかけることでヒントを出してくれるため、タイニーキン集めさえしっかりと行っていけば、おのずと道は開けるでしょう。
サブ目標は、面倒であればやらなくても構わない目標で、ゲームをクリアできさえすれば良しとする人なら無視しても大丈夫です。
ただ、サブ目標を達成することで、「プラットルの博物館」の展示物が増えていくため、サブ目標が埋まる喜びと展示物が増える喜びの両方を味わうことができます。
花粉集めは、花粉を目標数集めることで、「シカクの醸造所」に置く瓶をもらうことができます。
ただ、それは花粉集めの第1段階であり、第2段階に到達することで初めてその部屋のすべての花粉を集めたことになります。
本作の実績は、サブ目標と花粉集めも大きくかかわってくるため、実績にこだわる人は無視できないところでしょう。
ただし、花粉集めの第2段階であるその部屋のすべての花粉を集めるのはかなり大変なことで、これだけでうんざりするほどの観察眼とけっこうな時間を要します。
最後の方になると、何度も同じ部屋に行って隈なく見て回る必要がありますが、少し角度を変えて見たり、双眼鏡を使ったりすると見つかることがあります。

グラフィックは、4KやHDR10や60FPSなどといった表記はなく、機能もかなり絞られていますが、この手の3Dパズルプラットフォーマーとしては十分に美しいと思います。
それぞれの部屋が楽しくきれいに描かれていますし、ラストの部屋となるセレリオンパークは特に面白く、メイン目標とサブ目標を進めていく過程でもワクワクさせられます。
また、3Dパズルプラットフォーマーとしても、プレイが困難になるような見にくさはありません。
ただ、本作では、動かせるものはうっすらと光っているのですが、その光り方があまり強くないため、動かせるかどうか分かりづらい場合があります。そのあたりは、もう少し強調してほしかったところです。
キャラクターのモデリングやモーションも特に違和感はなく、SPLASHTEAMの2作目で、初の3Dパズルプラットフォーマーとしても十分に及第点をあげられると思います。
サウンドは、英語音声フルボイス、日本語字幕になっています。それぞれの昆虫が巧みなボイスアクティングで話し、翻訳もよくできているため、不自然さを感じることはありません。
また、昆虫のセリフはBボタンを押せば終わらせることができるため、同じことを繰り返し話したとしてもすぐにやめられるので快適です。

操作性は、極めて明快です。左スティックで移動、右スティックでカメラ、Aボタンでジャンプ/話す、ジャンプ後すぐにAボタンを押し続けて飛行、RBボタンでソープボード、Yボタンでタイニーキン集合。
タイニーキンの操作も、左トリガーで目標を狙い、右トリガーでタイニーキンを投げれば、すぐに彼らが行動してくれます。
また、タイニーキンに物を運ばせる際には、同様に指示を出しさえすれば、勝手に運んでくれます。
ただし、橋を作れるタイニーキンが使えるようになってからは、彼らの移動ルートに橋をかけなければならない場合があるため、見張っている必要はあります。
特筆したいのは、本作にはライフやヘルスの概念がないことと、失敗したとしても失敗した場所からやり直せることです。
マイロが高所から転落したら死ぬのはもちろんのこと、水の上を歩いてもすぐに死んでしまいます。
しかし、彼が死んだ際に、ライフが減ったりヘルスが減ったりすることはないのです。
また、高所から落下して死んでしまった場合、大半は落下した場所からやり直すことができます。つまり、高所から落下した場合、わざと死んでしまった方が得だというわけです。
この手の3Dパズルプラットフォーマーは、ライフやヘルスの概念があったり、失敗すると大きく戻されたりすることもあるため、このあたりはとても快適に感じます。

このように、グラフィックもサウンドも操作性も良好で親切心もあり、3Dパズルプラットフォーマーとしてもデキはまずまずなので、この手のゲームが好きな人は楽しんでプレイできることでしょう。
メイン目的はもちろんのこと、サブ目的を埋めたり、花粉を集めたりすることに喜びを感じられるという人も向いていると思います。
実績の解除が好きな人は、実績自体はいいペースで解除できるのですが、花粉集めが特に大変なため、コンプリートをめざそうと思うと効率は良くないかもしれません。
メイン目標だけ達成しても実績解除率はそれほど伸びないため、サクッと実績コンプリートはもちろんのこと、75%達成すればOKという人でも、時間的なメリットはなさそうです。
さらに、タイニーキンや花粉を集めるための作業が面倒という人や、足場を伝って高い場所に行くのが得意ではないという人も向いていないと思います。
そうは言っても、本作はDAY ONEで「Xbox Game Pass」に入ったことでもありますし、気になった人はプレイしてみてください。3Dパズルプラットフォーマーとして十分に楽しめるはずです。

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