「グランツーリスモ4″プロローグ”版」ウォークスルー&レビュー

【GENRE】
レース/シミュレーション

【PUB./DEV.】
ソニー・コンピュータ・エンタテインメント/ポリフォニー・デジタル

【RELEASE DATE】
2003/12/4

【OUTLINE】
「グランツーリスモ4″プロローグ”版」というタイトル通り、進化していく「グランツーリスモ」シリーズに対して、初心者でも入っていきやすいように作られた入門編的タイトルです。
運転の基礎からスポーツ走行への応用までを、ボードゲーム形式で段階を経て楽しみながら学べる「School Mode」を搭載しています。
「”プロローグ”版」ながら、収録される車種は、2003年型最新モデルからラリーカー、レースカー、コンセプトカーまで多種多彩な50台。コースも、シリーズ初の国内実在サーキットから市街地、オフロードまでバラエティに富んでいます。

【GAME MODE】
School Mode
本作のメインとなるモードで、レースを戦う上で必要なドライビングテクニックを学べます。全部で41+5のレッスンがあり、難易度によって、グリーン、オレンジ、ブルー、レッド、パープルという5つのレベルに分けられています。
各レッスンでは、一定の成績を挙げるとトロフィーがもらえ、各レベルのレッスンをすべてクリアすると、そのレベルの合格証が与えられます。原則として、そのレッスンをクリアすると、そのレッスンで使用した車種が「Arcade Mode」で使えるようになります。
また、それぞれのレベルをオールゴールドクリアすると、ボーナスカーがプレゼントされます。
ボーナスカーは、グリーン(モータートライアスロンレースカー ’03)、オレンジ(楔/くさび ’03)、ブルー(i ’03)、レッド(コンセプト – S2 ’03)、パープル(HSC (第37回東京モーターショーコンセプトカー)’03)。
使用されるコースは、筑波サーキット、富士スピードウェイ、NY市街地コース、グランドキャニオン、イタリア市街地コースの5コースです。各レッスンの内容は、以下の通りです。

LESSON 01: ステアリング操作の基本を学ぶ・1
特設ミニコースではじめてのサーキット体験・デミオスポルト ’03。

LESSON 02: ステアリング操作の基本を学ぶ・2
富士スピードウェイでパイロンスラローム体験・フィット W ’01。

LESSON 03: はじめてのブレーキコントロール
フルブレーキングでクルマを停止させる・マーチ 12c 5door (K12) ’03。

LESSON 04: コーナリング速度の限界を知る
クルマがステアリングで曲がらない場面を体験しよう・ist1.5S 2WD ’02。

LESSON 05: ステアリング操作の基本を学ぶ・3
アウト・イン・アウトのコーナリングを学ぶ・ロードスター1.6(NA)’89。

LESSON 06: ダートドライビング入門
ダート路面でのクルマの動きを体験しよう・アルトワークススズキスポーツ リミテッド ’97。

LESSON 07: コースをしっかりおぼえよう・1
筑波サーキットを体験走行しよう・bBZ 1.5 X Version 2WD ’00。

LESSON 08: 基本的なコーナリングを学ぶ
筑波サーキットの第2ヘアピンを練習する・コルト1.5 Sport X Version ’02。

LESSON 09: 複合コーナーでのライン取り・1
曲がったコースをまっすぐ走ってみよう・コペンアクティブトップ ’02。

LESSON 10: コーナリングの基礎・ダート編
ブレーキングやアクセルでクルマを曲げよう・レガシィB4 20.GT Spec B ’03。

Break: コーヒーブレイク・1
8の字に置かれたパイロンを倒そう・ミラTR-XXアヴァンツァートR ’97。

LESSON 11: ハイスピード・ブレーキング
超高速域からのブレーキング感覚を養おう・SL55AMG ’02。

LESSON 12: 複合コーナーでのライン取り・2
富士スピードウェイのBコーナーを練習する・ルポGTIカップカー (ルポ GTI カップジャパン出場車両)’99。

LESSON 13: コースをしっかりおぼえよう・2
NYで本格的GTレーシングカーを体験試乗・TAKATA童夢NSX(全日本GT選手権 #18) ’03。

LESSON 14: 特殊なコーナーを体験する
[コの字]型ヘアピンコーナーを攻略しよう・レガシィB4 3.0R ’03。

LESSON 15: 市街地コースの直角ターン攻略法
90度コーナーのスムーズな走り方を学ぼう・SpoonシビックType R(EK)’99。

LESSON 16: 超高速ブレーキングとコーナリング
富士スピードウェイの1コーナーを練習する・Fairlady Z Z-tune Z33) ’03。

Break: コーヒーブレイク・2
バラバラに置かれたパイロンをたおそう・レガシィツーリングワゴン3.0R ’03。

LESSON 17: 中高速ドライビング・ダート編
ハイスピードなドリフトコントロールを身につけよう・フォーカスラリーカー ’99。

LESSON 18: 走りにくいコーナーの攻略法
クリッピングポイントが奥にあるコーナーを攻略しよう・ビート ’91。

LESSON 19: ミニコースを攻める
サーキットでの”走りのリズム感”を身につけよう・エリーゼスポーツ190 ’00。

LESSON 20: コースをしっかりおぼえよう・3
イタリアの市街地コースを体験走行しよう・Spoonフィットレースカー ’99。

LESSON 21: 実戦的な複合コーナーの走り方
次のコーナーを考えたライン取りを考えよう・シビックType R(EK)’98。

LESSON 22: 実戦的な市街地コースの攻略法
上り下りやブラインドコーナーを克服しよう・インプレッサWRX STi(GD Type-II) ’02。

LESSON 23: 大パワー車での発進・加速
TCSに頼らないパワーコントロールを身につけよう・バイパーGTS ’98。

Break: コーヒーブレイク・3
コース上に置かれたパイロンをたおそう・RX-7スピリットR Type A(FD)’92。

LESSON 24: マシンコントロール・ダート編
狭いコース幅の中で正確にクルマの向きを変えよう・インプレッサラリーカー(GC)’99。

LESSON 25: 高速パイロンスラローム
ステアリングとアクセルでクルマをコントロールする・NSX Type S Zero ’97。

LESSON 26: レースデビューの前に・1
コーナー進入でのフェアな追い越しを身につけよう・ランサーエボリューションV GSR ’98。

LESSON 27: レースデビューの前に・2
立ち上がりを重視したライン取りを学ぼう・スカイラインGT-R Vspec II(R32)’94。

LESSON 28: レースデビューの前に・3
スリップストリームからのブレーキング競争を学ぼう・RX-8 Type S ’03。

LESSON 29: 実戦レース・1
筑波サーキットでフェアレディZロードスターバトル・フェアレディZ Roadster ’03。

Break: コーヒーブレイク・4
走行ラインに置かれたパイロンをたおそう・カプチーノ ’92。

LESSON 30: 実戦レース・2
富士スピードウェイで激速FFチューンドカーバトル・CELICA SS-II チューニングカー (ZZT231) ’03。

LESSON 31: 実戦レース・3
NY市街地コースでチューンドFR対決・Spoon S2000レースカー ’00。

LESSON 32: 実戦レース・4
筑波で3台のライバルをオーバーテイクしよう・Vitz1.5RS ’00。

LESSON 33: 実戦レース・5
富士で3台のライバルをオーバーテイクしよう・ザナヴィニスモGT-R(全日本GT選手権 #23) ’03。

LESSON 34: 実戦レース・6
NY市街地で3台のライバルをオーバーテイクしよう・クスコスバルADVANインプレッサ (全日本GT選手権 #77) ’03。

LESSON 35: 実戦レース・7
BMWマクラーレン最後尾からの追い上げバトル・マクラーレンF1 GTR BMW(Long Version) ’97。

LESSON 36: 省燃費タイムアタック
できるだけガソリンを使わずに速く走ってみよう・プリウスGツーリングセレクション ’03。

Break: コーヒーブレイク・5
パイロンタッチしないように走ろう・S2000 ’03。

LESSON 37: 筑波サーキット・タイムアタック
二つのヘアピンの立ち上がりでタイムアップを狙おう・ランサーエボリューションVIII MR ’03)。

LESSON 38: 富士スピードウェイ・タイムアタック
スピードを味方につけたドライビングを心がけよう・WOODONEトムススープラ(全日本GT選手権 #36)’03)。

LESSON 39: NY市街地コース・タイムアタック
長いストレートと直角コーナーをリズミカルにクリアしよう・フォードGT ’02。

LESSON 40: グランドキャニオン・タイムアタック
ダイナミックな舞台でクルマのコントロール能力をためそう・インプレッサラリーカー(GD Type II) ’03。

LESSON 41: イタリア市街地コース・タイムアタック
狭い道路とアップダウンのきつい旧市街を攻略しよう・デルタHFインテグラーレ ラリーカー ’92。

Arcade Mode
タイムアタックから複数対戦のバトルまで、本格的なレースが手軽に楽しめるモードです。複数対戦のバトルは、筑波、富士、NYで6台で行われます。難易度は3段階選べますが、レースゲーム熟練者なら最も難しいProでも労せずして勝てるでしょう。
なお、壁やガードレールに強くぶつかったり、他車に激しく激突すると、10秒間50km/hで強制走行させられるペナルティが課されます。

Save Game
ゲームデータをセーブできます。「Option」で、オートセーブにもできます。

Load Game
ゲームデータをロードできます。

Option
各種設定を変更することができます。変更できるのは、スクリーン設定、アーケードモード設定、ゲームセーブ設定、コントローラ設定、ステアリングコントローラ設定、です。

Replay Theater
リプレイデータの再生や管理が行えます。

Credits
ゲームのクレジットが見られます。

【GRAPHICS】8
「グランツーリスモ」シリーズは、常にハードの最先端を行くグラフィックレベルを誇ってきました。前作「グランツーリスモ3 A-spec」から2年7ヵ月の時を経た本作でも、その間の技術革新により更にリアルなビジュアル表現を可能にしているそうです。確かに、クルマのグラフィックに関しては、より向上していることがうかがえます。
しかしながら、コースやコースサイドのオブジェクトなどに関しては、ジャギー(ギザギザ)が目立ち、「プレイステーション2」のグラフィック性能の限界を感じさせる結果となっています。
グランドキャニオンのような自然がその舞台の場合にはそれほど問題はないのですが、筑波サーキット、富士スピードウェイのようなサーキット、NY市街地コースなどでは、それが顕著になっています。
「Xbox版「PROJECT GOTHAM RACING 2」をしばらくプレイした直後に本作をプレイすると、そのグラフィック性能の差に愕然とさせられます。
レースゲームの最高峰を標榜する「グランツーリスモ」シリーズであるならば、グラフィックにおいても、業界最高水準をめざしてほしかったところですが、ハード性能の差はいかんともしがたかったようです。

【SOUND】9
ステレオです。「グランツーリスモ」シリーズは、回を重ねるごとに大々的なエンジン音のサンプリングを行ってきましたが、今回もそれは同じで登場全車種のエンジン音が再現されています。
私は、全日本GT選手権のテスト走行観戦などのために頻繁にサーキットに足を運んでいますが、スープラ、スカイラインGT-R、NSX、マクラーレンF1-GTRなどのエンジン音の特徴や違いは、ゲーム中でもそれなりに表現されているのが分かります。
もちろん、中にはちょっと違うかなと感じるものもありますが、エンジン音というのは聴く場所によって微妙に異なりますし、サンプリング方法などによっても違いは生じます。緻密とまでは行かないまでも、ほぼ満足できるレベルにはあると言えるでしょう。

【CONTROL】10
基本的には、前作までの操作性や挙動を継承しています。その上で、クルマの挙動をつかさどるシミュレーションモデルをVer.2.0へと進化させ、シミュレーターとしての色合いをより濃くしているようです。駆動方式、タイヤ、エンジンパワーなどによる違いは、十分に表現されています。
もっとも、「グランツーリスモ」シリーズが家庭用ゲーム機のレースゲームとしては最高のシミュレーター、と考えるのは正しいとは言えないでしょう。「グランツーリスモ」シリーズの魅力は、リアルさとゲーム性を高い次元で融合させたという点にあるのですから。
家庭用ゲーム機のレースゲームで「グランツーリスモ」シリーズよりもシミュレーター指向のタイトルは、わずかながら存在するのです。
メニュー画面周りに関しては、初代「グランツーリスモ」から絶えることなく続くセンスの良さとユーザーフレンドリーさを継承しています。
ただ、取扱説明書に関しては、中綴じにすらなっていない1枚もので、「”プロローグ”版」らしいチープさを与えるデキになっています。初心者へのフォローを入れるなど、もうちょっと丁寧なつくりにはできなかったものでしょうか。

【GAMEPLAY】9
本作は、「グランツーリスモ4」の”シングルカット”として、同作の進化とテクノロジーをユーザーに楽しんでもらうため、そして、それ以上に、ボリュームをあえてコンパクトにして遊びやすくして「グランツーリスモ」への初心者の入門用タイトルとして製作されています。
そのため、これまでの「グランツーリスモ」シリーズにあったような、盛りだくさんのモードはばっさりと切り落とされ、初心者が順序立ててドライビングテクニックを学べるモードだけに絞ったと言っても過言ではないほどモード数を減らしています。
レッスン内容に関しては、1時間ほどですべてを考えたそうですが、初心者相手にしてはやや難しいように感じます。ゴールドの中には、レースゲーム熟練者でもてこずるほど難易度が高いものも存在するのです。
初心者向けと言いつつ、上級者も意識した内容になっているということでしょう。ただ、レッスンのクリア自体はそれほど難しいわけでもないので、初心者でもレッドレベルまでなら進められることでしょう。

また、新たな試みとして、接触に関するペナルティを取り入れたのも興味深いところです。「SchoolMode」では、AIがいる場合にAIに接触するとペナルティで失格になるのですが、その基準は以下のようになっています。
極めて軽くコツンと当たる程度なら失格とはならず、明らかに接触と感じられる場合に失格となります。そして、接触時点での双方の位置が重要な要素で、自車がAIよりも少しでも前にいれば、どんなに激しく接触しても失格にはなりません。
つまり、接触の際には、少しでも後ろにいるクルマの責任となるわけです。ですから、AIを壁としてコーナーを曲がることも不可能ではありません。
また、「Arcade Mode」では、壁やガードレールに強くぶつかったり、他車に激しく激突すると、10秒間50km/hで強制走行させられるペナルティが課されます。これに関しても、AIを壁にしてコーナーを曲がることがセオリーとなっていた過去のシリーズへの反省から生まれたものでしょう。
また、オンライン対戦時における明確なペナルティ基準として考えているのかもしれません。オンライン対戦のスタンダードとなる可能性を秘めた良いアイデアだと思います。

【LONGEVITY】9
本作は、「School Mode」だけのゲームと言っても過言ではないぐらい、「Arcade Mode」は遊び応えのないものになっています。なにしろ、「Arcade Mode」では、明確な目的もなく、単発のレースをするだけなのですから。「Arcade Mode」は、ちょっとやれば飽きてしまうと思います。
となると、「School Mode」のボリュームがどうかということになります。当初のレッスン数は、グリーン、オレンジ、ブルー、レッドの25レッスン+コーヒーブレイクの3レッスンの計28レッスンです。
これをクリアすると、パープルの16レッスン+コーヒーブレイクの2レッスンの計18レッスンが加わります。初心者ということであれば、このボリュームは決して少ないというわけではないでしょう。1レッスン平均1時間かけたとしても、46時間かかるわけですから。
上級者が単にクリアだけを狙うなら、大したボリュームではありませんが、オールゴールドを狙うとなると、やはり、1レッスン平均1時間近くかかると思います。ただ、オールゴールドを狙ったところでボーナスカーを入手できるだけですし、そのボーナスカーも「Arcade Mode」で使えるだけです。
上級者にとっては、面倒だからオールゴールドなど狙わないか、意地でもオールゴールドにしてみせるかで、プレイ時間が異なってくることでしょう。ここでは、あくまでも初心者がプレイしたら、ということで「9」にしておきます。

【OVERALL】6
本作は、その内容とボリュームから、賛否両論うずまいています。ボリュームをあえてコンパクトにして遊びやすくして「グランツーリスモ」への初心者の入門用タイトルとして製作され、初心者が順序立ててドライビングテクニックを学べるモードだけに絞ったというあたり、議論百出するのも当然でしょう。
本作が議論される原因のひとつは、雑誌のインタビューで「普通のレースゲーム1本分ぐらいのボリュームはあると思います」と答えたことにあります。
「グランツーリスモ」シリーズに期待しているユーザーの多くが、この言葉で本作に過剰な期待を抱いてしまったものの、いざ発売されて2980円ものお金を出して買ってみると、実質的にはドライビングレッスンばかりのモードしかなかった。
「グランツーリスモ コンセプト 2001 TOKYO」のような遊べるモードを期待していただけに失望感は大きかったというところでしょう。
私も、実際にパッケージを開封してみてビックリしたものです。「グランツーリスモ」シリーズだからこそ許される大いなる実験なのかもしれませんが、やはり、事前にその内容を十分に周知しておくべきでした。

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