4K/HDR/HDCP2.2対応スリムAVレシーバー「オンキヨー TX-L50」レビュー

私は、30年以上前にプリメインアンプにケンウッドのサラウンドプロセッサーを組み合わせて以来、ずっとAV機器はサラウンドで楽しんでいます。
エントリークラスの機種ばかり買い続けていますが、20畳を超えるような大きな部屋で、近所への騒音に配慮することなく、大音量でかき鳴らせるような人でもない限り、上級機種はそれほど必要でもないように感じます。
「TX-L50」に買い替えるまでは、マランツのAVアンプ「NR1501」を使っていたのですが、1度、熱で故障修理した後、再び、故障してステレオ以外で再生できなくなってしまいました。
1年以上、その状態で我慢しながら使っていたのですが、テレビゲーム専用のホームシアターセットも調子が悪くなってきたため、一緒に買い替えることにしました。
というのも、テレビ用のAVアンプは、スピーカーをばらばらに購入して5.0chで運用していたのですが、テレビゲーム用のホームシアターセットは、再び、ホームシアターセットを買うことになり、これまで使っていた5.1ch分のスピーカーが丸々余ってしまいます。
そこで、その中からウーハーだけをテレビ用に再利用し、今後は5.1chとして運用しようと考えたからです。これで、テレビも、ようやく5.0chから5.1chになるわけです。

さて、今回のAVアンプ購入にあたっては、AVアンプでは、3万5000円以下で買える、オンキヨー「TX-SR343」、ソニー「STR-DH770」、ヤマハ「RX-V483」、パイオニア「VSX-S520」、オンキヨー「TX-L50」、が候補に挙がりました。
また、ソニーの海外専売AVレシーバー「STR-DH550」、LGのホームシアターシステム「BH5140S」も候補になりました。いずれも、送料込みで2万5000円を少し超えるぐらいになるため、十分に候補になり得たのです。
私が使っているAVラックは、横に3ブロック、縦に2段、あり、縦はボードを3段階に調節することができます。
そのため、大きなAVアンプでも入れることはできるのですが、発熱対策、他のAV機器との調和、見た目のスタイリッシュさ、などを考えるとAVアンプもスリムなものがほしかったので、パイオニア「VSX-S520」、オンキヨー「TX-L50」以外は二の足を踏むところがありました。
また、外部入力機器は、セットトップボックス、DVDレコーダー、テレビ用テレビで使う「Xbox One Day One」と「Wii U」はすべてHDMI、アナログ入力はほとんど使わないMDレコーダーとカセットデッキだけになります。
そのため、HDMIの4台はテレビにつなぎ、音声はテレビの光デジタル端子からホームシアターの光デジタル端子につなげてもサラウンドできるため、LGのホームシアターシステム「BH5140S」も薄型でもあり候補になったというわけです。
いつものように、候補機種以外にアメリカでしか売られていないAVレシーバーまで含めて何百時間も調べた結果、スリムで先端機能が凝縮されたオンキヨー「TX-L50」に決まりました。
本当はパイオニア「VSX-S520」の方が色がシルバーで良かったのですが、Joshin webでは「お届け: 2月以降」ということであきらめ、兄弟機種のオンキヨー「TX-L50」になりました。
価格3万6165円、送料無料、WEBクーポン1000円、ポイント352P、合計3万5165円(352P)でした。ちなみに、11月22日のお昼に注文したのですが、その日の夕方からプラス3%ポイントで1056P余計にもらえたので、ちょっと残念でした。

【デザイン】10
AVアンプ・AVレシーバーは、威容を誇るという表現がピッタリくるほど、時代錯誤的な巨大さを持ち、AVラックに入らなかったり、AVラックの中でひときわ存在感を主張したりします。今回の私の候補機種も、ほとんどが15~16cmぐらいの高さがあります。
そんな中、「TX-L50」は、高効率のClassDアンプと高音質パーツの採用により、高さ7cmのスリムな筐体を実現。角を丸めたラウンドデザインを採用することで柔らかく落ち着いた雰囲気を持っています。
AVアンプは中央下段に置いているのですが、右がDVDレコーダー、上がセットトップボックス、左がホームシアター、といずれも横長薄型で見事に調和が取れています。
パイオニア「VSX-S520」の方が色がシルバーで良かったと書きましたが、今回、たまたまAVラックの中のAV機器がすべて黒になり、そうした点でも調和が取れていると思います。
個人的には、黒々としたAV機器よりも、白かシルバーのAV機器の方が家電製品や家具も含めて好きなのですが、AVラック内が色的にもサイズ的にも調和しているのは確かです。
前面パネル部はスッキリとしています。左に、ON/STANDBYボタン、USB端子、PHONES端子(3.5mm)、INPUTボタン、LISTENING MODEボタン。中央に、表示部。右に、ボリュームダイヤル、TUNINGボタン。
高さ7cm未満のところにこれらが配置良くまとめられており、主張しすぎることがありません。もちろん、リモコンでほとんどの操作を行うため、見る機会も少ないのではないかと思います。

【操作性】10
大半の操作はリモコンで行うことになりますが、リモコンも本体同様にコンパクトな中に必要最小限のボタンが配置良くまとめられており、AVアンプに慣れている人はもちろんのこと、そうでない人もそんなには困らないのではないかと思います。
上側がON/STANDBYボタンと入力切替ボタン、よく使うカーソルとボリュームボタンがリモコンを手にした時に親指が置きやすい中央とその下部、下側がリスニングモードボタン。
音量、リスニングモード、セットアップメニューなどはテレビにも表示されるため、確認しながらの変更が可能です。

【音質】9
マランツのAVアンプ「NR1501」はなかなかいい音が出ており、自身初のClassDアンプとなる「TX-L50」に替えて音質が低下しないかという危惧はありました。
ネットを見ても、ピュアオーディオ派を中心にClassDアンプの評判は良いとは言い切れず、価格.comとAmazon.co.jpのレビューを見ても、ClassDアンプであるパイオニア「VSX-S520」、オンキヨー「TX-L50」の音に関しては賛否両論ありました。
結論から言うと、この危惧は杞憂に終わりました。モードにもよりますが、私の耳には「NR1501」と遜色ない音に聴こえたからです。ずっとステレオで運用してきた「NR1501」と、しっかりサラウンドさせている「TX-L50」を比べても、それほどの差は感じません。
メーカーからのリリースによると、「高効率のClassDアンプと高音質パーツの採用により、80W×6chのハイパワーと高音質再生を実現、ClassDアンプの電源部にはオンキヨーカスタムコンデンサーを採用し、豊かな低域とボーカルのふくよかさを再現しています」とあります。実際、この通りだと思います。
もっとも、音質は、ソースとリスニングモードによりけりなところがあります。「TX-L50」は、「MOVIE/TV」、「MUSIC」、「GAME」ボタンをくり返し押すことで、それぞれ映画やテレビ、音楽、ゲームに適したリスニングモードが選べます。
また、各ボタンごとに最後に選んだリスニングモードを記憶。それに対応していないコンテンツを再生した場合は、そのコンテンツに最もスタンダードなリスニングモードが自動的に選択されます。
さらに、ファームウェアのアップデートにより、Dolby Atmos及びDTS:X音声フォーマットで再生できますが、ファームウェアのバージョンによって、選択できるリスニングモードが異なります。
モードは、以下の各モードがあります。内容を書くと長くなるので、内容が必要な方は、マニュアルをご覧ください。

AAC
AllCh Stereo
Diect Dolby Atoms ※アップデート後のみ選択可能
Dolby D(Dolby Digital)
Dolby D + (Dolby Digital Plus)
Dolby PL II (Dolby Pro Logic II) ※アップデート前のみ選択可能
Dolby Surround ※アップデート後のみ選択可能
Dolby TrueHD
DSD DTS DTS 96/24
DTS Express DTS-HD HR (DTS-HD High Resolution Audio)
DTS Neo:6 ※アップデート前のみ選択可能
DTS Neural:X ※アップデート後のみ選択可能
DTS:X ※アップデート後のみ選択可能
Full Mono
Game-Action
Game-Rock
Game-Sports
Mono
Multich (Multichannel)
Orchestra
Stereo
Studio-Mix
Surround Virtual ※アップデート後のみ選択可能
T-D (Theater-Dimensional)
TV Logic
Unplugged

私は、ピュアオーディオ派ではなく、サラウンド派なので、リアスピーカーからも音が出て、音場にいることを重視しています。
そのため、今のところ、幅広く通常の番組を見る時は、AllCh Stereoを選んでいます。フロントだけでなくサラウンドからもステレオ音声を再生し、ステレオイメージを作り出してくれるのですが、音に不自然さがなく、リアのボリュームを少し上げれば、リアスピーカーからもしっかりと音が出て、音場にいられるからです。
映画を見る時や垂れ流しにしておく時は、5.1chで出力されている場合は、Dolby Surroundにしています。これに関しては、後述します。
音楽を見る時や垂れ流しにしておく時は、Studio-Mixにしています。このリスニングモードは、ロック、ポピュラーなどに適しており、パワフルな音響イメージを再現した臨場感あふれるサウンドが楽しめます。
「TX-L50」は、「iボタン」を押すことで、ビデオ信号とオーディオ信号の詳細を知ることができ、たとえば、以下のように表示します。

[Audio] CBL/SAT
Input: HDMI 2
AAC
5.1 ch 48 kHz
Output: Dolby Surround
5.1 ch
[Video] CBL/SAT
HDMI 2
1920 × 1080 59Hz
YCbCr444 36bit

これは、映画専門チャンネル「ムービープラス」の映画番組のデータです。実は、大半の放送局と番組はAACで出力されており、Dolby Dなどで出力されるものはあまりありません。
「TX-L50」は、Dolby D/Dolby D+/Dolby TrueHD、DTS/DTS-HDで出力されれば、それぞれに対応したリスニングモードであるDolby D/Dolby D+/Dolby TrueHD、DTS/DTS-HDが選べます。
しかし、AACで出力された場合には、Dolby SurroundかDTS Neural:Xしか選ぶことができません。両リスニングモードは、2chや5.1chの入力信号を、接続しているスピーカー構成に合わせてマルチチャンネルに拡張再生できます。
それに対して、Dolby D/Dolby D+/Dolby TrueHD、DTS/DTS-HDは、それらの音声フォーマットで記録されたサウンドデザインを忠実に再現するモードです。
つまり、せっかく映画専門チャンネルがあるのに、AACで出力されてしまっては、サウンドデザインが忠実に再現されていないということです。
Dolby Dで出力されているのは、なぜか2.0chの旅番組や日本のアニメ番組の一部で、映画専門チャンネルの中には、5.1chの映画なのに2.0chで出力されているところすらある始末です。
映画専門チャンネルを売りにしている以上、Dolby D/Dolby D+/Dolby TrueHD、DTS/DTS-HDなどで出力し、これらの音声フォーマットで記録されたサウンドデザインを忠実に再現できるように出力してほしいものです。

【パワー】9
音質のところでも書いたように、高効率のClassDアンプと高音質パーツの採用により、80W×6chのハイパワーと高音質再生を実現しています。
私は、ボリュームは、ソースとリスニングモードにより異なるものの、窓を閉め切っていれば12~15、窓を開けるシーズンならそれの2~3割増しぐらいになると思います。
つまり、80Wの何分の1ぐらいしか使っておらず、とうていパワー不足に感じることはありません。一般家庭で使う分には、大きなリビングがあったとしても、問題ないだけのパワーを備えていると言えるでしょう。

【機能性】9
ClassDアンプならではの多機能ぶりを誇ります。4K/HDR/HDCP 2.2に対応するのはもちろん、Dolby AtmosやDTS:Xなど新しい音声フォーマット再生にも対応しています。
また、混信の少ないデュアルバンド対応のWi-Fi機能やBluetooth無線技術を搭載し、スマートフォンなどに保存された楽曲の再生だけでなく、RadikoやGoogle Castなど最新のネットワーク機能にも対応し、様々な音源をワイヤレスで楽しめます。
ただし、Dolby Atmosに関しては、「TX-L50」が5.1chであることからも分かるように、5.1.2や5.1.4というような本格的なものは不可能です。そこで、3.1.2チャンネルシステムを採用しています。

3.1.2チャンネルシステム-1(フロントハイスピーカー)は、フロントスピーカー、センタースピーカー、アンプ内蔵サブウーファーで構成される3.1チャンネルシステムに、ハイトスピーカーのタイプのひとつであるフロントハイスピーカーを加えたシステムです。
フロントハイスピーカーは、フロントスピーカーの真上、少なくとも0.9m以上高い位置に設置し、視聴者に向くよう角度をつけます。

3.1.2チャンネルシステム-2(天井埋め込み型スピーカー)は、フロントスピーカー、センタースピーカー、アンプ内蔵サブウーファーで構成される3.1チャンネルシステムに、ハイトスピーカーのタイプのひとつであるトップミドルスピーカーを加えたシステムです。
トップミドルスピーカーは、視聴位置の真上の天井に取り付け、左右の間隔はフ ロントスピーカーの左右に合わせます。

3.1.2チャンネルシステム-3(Dolby Enabled スピーカー(Dolby Speaker)は、フロントスピーカー、センタースピーカー、内蔵サブウーファーで構成される3.1チャンネルシステムに、ハイトスピーカーのタイプのひとつであるDolby Enabledスピーカー(フロント)を加えたシステムです。
Dolby Enabledスピーカーは、天井に向くように設計された特殊なスピーカーで、音声を天井で反射させて頭上から音声が聞こえる効果があります。Dolby Enabledスピーカー(フロント)は、フロントスピーカーの上に設置します。

【入出力端子】9
HDMI端子は4入力とも、4K/60p/4:4:4映像信号の伝送とHDCP 2.2に対応し、超解像4K技術によりHD画質のコンテンツをアップスケーリングし4Kテレビで高画質に楽しめます。また、HDR信号とBT.2020信号のパススルー伝送にも対応します。出力1系統は、ARC対応です。
音声入力端子は、デジタル×2(光×1、同軸×1)、アナログ×3(PHONO×1含む)。音声出力端子は、ヘッドホン×1、サブウーファー・プリアウト×1。USB入力端子は1(フロント)、LAN端子は1(リア)。
Wi-Fiは5GHz(11a/n)、2.4GHz(11b/g/n)デュアルバンド対応で、Bluetooth部は、Bluetooth Ver 4.1+LE。
入出力端子も、エントリークラスとしては申し分ないところでしょう。HDMI端子は、既にすべて埋まっており、多ければ多いほどいいとは思いますが、エントリークラスなら標準的な数だと思います。

【サイズ】10
私が購入動機にした最大のものがこのサイズです。前述したように、AVアンプ・AVレシーバーは、威容を誇るという表現がピッタリくるほど、時代錯誤的な巨大さを持ち、AVラックに入らなかったり、AVラックの中でひときわ存在感を主張したりします。今回の私の候補機種も、ほとんどが15~16cmぐらいの高さがあります。
そんな中、「TX-L50」は、高効率のClassDアンプと高音質パーツの採用により、高さ7cmのスリムな筐体を実現しており、これが決め手となりました。
重量も、4.0kgしかなく、今回の他の候補機種の半分ぐらいです。実際、両手で持った時のAVアンプならではのズッシリ感がなく、AVアンプの固定観念を覆すほどです。
発熱量も、ClassDアンプならではの少なさで、サイズ・重量ともども、安心してAVラックの中に収めることができます。
もちろん、機械ならではの発熱はあるので、5方を囲まれているだけでなく、前面もガラス扉になっているようなAVラックを使っている場合には、夏場は特にガラス扉を開けるなどして発熱対策を施す必要はあると思います。

【総評】8
私がここまですべての項目で9点以上をつけてきたにもかかわらず、満足度だけ8点にしているのは、価格が高くコストパフォーマンスが良いとは言い切れないからです。
今回、選んだ候補機種の中で価格が最も高く、同じく薄型のヤマハのAVアンプ「RX-S601」とは互角になります。ただし、機能性という点では、ヤマハの「RX-S601」を凌駕しています。
つまり、「VSX-S520」、「TX-L50」は、数少ない薄型AVアンプという特殊なジャンルにおり、薄いという付加価値に対して魅力を見いだせる人が、その価格の高さに目をつぶってでもほしい商品ということになります。
私も、今回は候補機種の中からどれを買うか、悩みに悩んだのですが、「VSX-S520」、「TX-L50」が2万円台半ば、高くても3万円未満だったら、ほとんど悩むことなく即決していたと思います。
ClassDアンプもサラウンド派にとっては悪くない音を出せることが分かったことですし、今後はオーディオビジュアル時代に即した薄型AVアンプが賑わい、価格的にも手を出しやすいところまで下りてきてほしいものだと思います。

なお、新規でホームシアターを始めるという方は、2.1chシネマパッケージ「BASE-V60(B)」を買うのがお勧めです。本体部の「TX-L50」に加え、テレビ周りに設置しやすい小型スピーカーと、重低音専用のサブウーファーを組み合わせたスピーカーパッケージになっています。
フロントスピーカーは、ウーファー部に独自開発のN-OMF振動板を採用した2ウェイ構造で、小型ながら音の空気感や楽曲の倍音成分といった微小な成分まで引き出し、クリアかつ伸びやかなサウンドが楽しめます。
サブウーファーは、理想形を追求して設計されたオンキヨー独自のOMF振動板を採用し、大容量キャビネットと矩形ダクトによるAERO ACOUSTIC DRIVE(エアロ・アコースティック・ドライブ)により、量感とスピード感を両立させた重低音の再生を可能にしています。
小型スピーカー2個とウーファーがついて実売価格で6000~7000円のアップで済むので、新規でホームシアターを始めるなら、断然こちらです。
2.1chに物足りなさを感じてきたら、同型の小型スピーカーを買い足し、3.1ch、4.1ch、5.1ch、に発展させることもできます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました