「真・女神転生 NINE スタンドアローン版」レビュー

【GENRE】
RPG/ダンジョン

【PUB./DEV.】
アトラス/アトラス

【RELEASE DATE】
2002/12/5

【OUTLINE】
「女神転生」シリーズで累計約500万本を売り上げたこのRPGは、他の人気和製RPGとは一線を隔するダークでサイバーな世界観と大人びた雰囲気が人気となっています。
悪魔とは、戦うだけでなく会話によって”仲魔”にしたり、悪魔同士を合体させることでより強力な悪魔を作り出すこともできます。これもまた、本シリーズの大きな魅力のひとつとなっているのです。
本作は、当初からXbox LIVEに対応させる予定でしたが、より一層の練り込みが必要ということで、Xbox LIVE未対応のスタンドアローン版として先行発売されることになりました。
物語は、「真・女神転生」と「真・女神転生II」の間、核爆発により地上世界が崩壊してしまった202X年の東京が舞台となります。
生き残った人類は、地下での生活を余儀なくされ、1990年代をモチーフにした仮想空間を電脳空間に作り上げていました。
しかし、旧東京の各都市をモデルにした電脳空間「イデアスペース」では、プログラムのバグが頻発し始めます。バグは悪魔の形となって現れ、他の利用者を襲うなどするのです。
そんな事件に巻き込まれた主人公は、デバッカーとして中央管理局で働くことになります。

【GAME MODE】
NEW GAME
新たにゲームを始めます。最初に名前と性別を決めますが、性別が男の場合には親友が男で業務上のパートナーが女、性別が女の場合には親友が女で業務上のパートナーが男になります。あまりひねらずに、自分の性別を入れるのがいいでしょう。
物語は、現実世界とイデアスペースを行き来することで進んでいきます。イデアスペースには、新宿、吉祥寺、秋葉原、六本木、原宿、池袋、上野、渋谷、品川の9つの街があり、それぞれの街にはデバッカーをサポートする店や施設があります。
現実世界とイデアスペースの街の行き来には、プリクラのような外観をしたターミナルを利用します。
また、ハッキングも物語の重要な要素となっており、構造むき出しのデータ空間で、RTS(リアルタイムストラテジー)という高度な陣取りゲームを行います。このRTSに関しては、後述します。

CONTINUE
セーブデータからプレイを再開できます。セーブは、イデアスペース内のターミナルでできるほか、章の変わり目にも行うことができます。
セーブデータは全部で16個まで作ることができますので、RPGの鉄則として常に複数のセーブデータを作っておきましょう。
エンディングは全部で11通りあるため、より多くのエンディングが見たいという場合には、全9章中7章辺りのセーブデータを残しておくことをお奨めします。

OPTION
ゲームの各種設定を変更することができますが、変更できる項目は少なめです。

【GRAPHICS】8
“メガテン”と言えば、ダークでサイバーな世界観と悪魔絵師・金子一馬が描き出すさまざまな悪魔が魅力となっています。本作でも、これらは健在です。
現実世界はこれまでのシリーズ同様に完全な2Dの1枚絵となっていますが、イデアスペースと仲魔集めなどに使う地下街予定地は3Dとなり、メガテンではお馴染みだった3Dダンジョンは完全に姿を消してマップも消滅しています。
これらに関しては意見の分かれるところで、私のようなメガテニストでも当初は3Dのイデアスペースと地下街予定地を陳腐に感じたものでした。
それでも慣れてくるとそんなに違和感を感じることはなくなりましたし、セーブポイントまでがつらい3Dダンジョンが消滅したことも悪くはないように思います。
ただ、固定視点のため、視点が切り替わった際のキャラクターの操作がしづらいですし、キャラクター同士に当たり判定がないところも不自然に感じられました。
次からは、フルポリゴンでキャラクター背後からの視点とし、当たり判定もありにしてほしいところです。
悪魔の3D化に関しては、「魔剣X」でもありましたし、概ね好感を持って受け入れています。
2Dの1枚絵に比べると、より立体感があり、ディテールもはっきりとし、何よりも悪魔に動きが出たのが大きなポイントです。これらにより、仲魔に対する思い入れもより一層沸いてきます。
ただ、パーティを組む際、右前列に体の大きな悪魔を配置すると、対峙する悪魔が見えづらいのが難点です。些細なことではあるのですが、悪魔の配置には気を遣ったものでした。

【SOUND】8
ドルビーサラウンドです。ダークでサイバーな世界観と大人びた雰囲気が魅力の本作ですが、そうしたイメージを壊すことのないBGMを奏でています。RTSや戦闘時のサウンドもメガテンらしさが感じられます。
本作ではBGMの音量を調節することができないのですが、これらのBGMが耳障りになるようなことはありませんでした。
なお、オープニングを中心に、これでもかというほど5.1chで遊んでくれます。5.1chを堪能したい人は、しばらくオープニングのままにしておくといいでしょう。

【CONTROL】8
前述しているように、イデアスペースと地下街予定地が固定視点となっているため、視点が切り替わった際のキャラクターの操作がしづらく、キャラクター同士に当たり判定がないところも不自然に感じられます。
やはり、フルポリゴンでキャラクター背後からの視点とし、当たり判定もありにしてほしいところです。
通常時や戦闘時、悪魔合体時などのコマンド操作は、きれいにまとめられていてストレスなくプレイできます。

【GAME PLAY】9
本作で最も注目すべき要素であり、かつ分かりにくいのがRTSです。ネットなどで、「クソゲー」、「すぐに売った」などの悪評をチラホラと目にするのも、このRTSの分かり難さゆえでしょう。
実際、私も最初は何が何だか全く訳が分からず、私がメガテニストでなければこれらの悪評同様に投げ出していたかもしれません。
しかし、例えメガテン未経験者であっても、少し我慢してプレイすれば面白く感じるかどうかはともかく、理解はできるようになるはずです。
RTSは、ルートとエリアで構成された構造むき出しのデータ空間で行われます。このマップ上のポートにパーティを配置して侵入し、相手の心臓部であるコマンドエリアを破壊するか、敵リーダーを撃破すれば、ハッキングは成功して勝利となります。
マップは複数層で構成されているため、各層のコントロールエリアを破壊しないと、昇降エリアを使ってより下層に下りていくことができません。そのため、各層では、コントロールエリアの破壊が第一目標となります。
ですから、各層のコントロールエリアを破壊しながら、最下層にあるコマンドエリアの破壊をめざすというのが一般的な攻略法となります。
章を進めるに従ってマップに侵入可能なパーティ数が増えていきますので、章数-2パーティ(例えば第6章なら4パーティ)を侵入させるといいでしょう。
エリアには、ノーマルエリア、回復や治癒ができる4種類の泉、マグネタイト(悪魔が行動するために必要なもの)を生産したりする社、敵にダメージを与えられる6種類のトラップがあります。
しかし、RTSはスピード勝負になることが多く、これらをじっくりと活用している時間的余裕はありません。「ネットワーク対応版」がRTSを主戦場としているのかどうかは分かりませんが、現在のシステムではつらいものがあるでしょう。

本作のもうひとつの大きな改革点として、戦闘によるレベル上げの概念を排除したことが挙げられます。
これまでは戦闘を重ねることでレベルアップしたのですが、本作では物語の進行に連れてレベルが上がっていくようになっています。また、能力アップの宝石を装備することでも、レベルアップを図れます。
そのため、悪魔はレベルを上げる対象ではなく、あくまでも仲魔を集めるための対象へと変化しています。
そのせいか、悪魔との会話も、これまでよりも簡単になっていますし、悪魔の種類に応じたパターンを覚えてしまえば、簡単に仲魔にすることもできるようになりました。
それぞれの悪魔には容量があり、仲魔にした悪魔の総容量がその時点の主人公の許容総容量を越えてしまうと、戦闘中に一切のコマンドが使えなくなり、ただ戦闘を眺めているだけの状態になってしまいます。また、容量ギリギリでも、コマンドやアイテムの使用に制限が出てきます。
そのため、悪魔の総容量に余裕を持たせるか、一緒のパーティで行動することで悪魔の容量を減らす必要があります。一緒に戦うと容量の減りが早くなるため、ここで悪魔との戦闘の意味が出てきます。
レベル上げの概念を排除したことに関しては、強力な仲魔さえそろえれば難易度はそれほど高くもないため、大きな問題とはならないでしょう。
ちなみに、本作にはLAW(秩序)、CHAOS(混沌)という2つの対立する概念に、LIGHT(善行)、DARK(悪行)を絡めた9つのマトリックス(属性)が存在し、仲魔にしたい悪魔と主人公の属性が異なる場合や、その悪魔と属性の異なる悪魔が既に仲魔にいる場合にはパーティには加えられません。
なお、私のクリア時のパーティは、天使ドミニオン(LV64)、魔神オーディン(LV67)、天津神アマテラス(LV76)、天津神ツクヨミ(LV65)(前列左から)、私(LV89)です。このパーティで、ラスボスの神も1回で倒すことができています。

【LONGEVITY】9
メガテンと言えば、ダンジョン攻略とレベル上げ、仲魔集めと悪魔合体に多大な時間を要したものでした。本作では、前者に要する時間はなくなったものの、後者に要する時間は相変わらずです。
第7章まではRTS用に多くの仲魔を集める必要がありますし、第8章以降はRTSこそ存在しないものの主人公のパーティを強化するための合体用の仲魔集めに大きな時間を割かなければなりません。
それでも、単にクリアをめざすだけなら、50時間もあれば十分でしょう。仲魔集めやアイテム集めに精を出したり、より多くのエンディングを見ようとするなら、50時間以上かける必要があります。

【OVERALL】9
「真・女神転生 NINE」は、これまでの「女神転生」シリーズのダークでサイバーな世界観と大人びた雰囲気は継承しながらも、「Xbox」という新天地を得て大きな変貌を遂げました。
イデアスペースと仲魔集めなどに使う地下街予定地は3Dとなり、メガテンではお馴染みだった3Dダンジョンは完全に姿を消してマップも消滅したこと。悪魔を3Dで表現したこと。RTSを導入したこと。レベル上げの概念を排除したこと。
これらの変更点には、これまで述べてきたように良いところもあれば悪いところもあります。
しかし、ゲーム自体はまぎれもない”メガテン”ですから、この「スタンドアローン版」をβ版的に捉えて練り込んでいけば、「ネットワーク対応版」ではより進化したメガテンの姿が見られることでしょう。
本作は、メガテンをやり込んだまさにメガテニストのための孤高のゲームなのかもしれません。
しかし、メガテン未経験者が手にしたとしたら、第2章までは我慢して進めてください。ここまではチュートリアルのようなもので、本格的に楽しくなってくるのは第3章からなのです。そこからは、メガテン本来のストーリー展開や仲魔集め、戦闘を堪能できるに違いありませんから。

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