「’74全日本選手権鈴鹿ダイヤモンドレース」

1974年9月7、8日/鈴鹿サーキット
8月4、5日に開催された「’74鈴鹿グレート20ドライバーズレース」では、富士スピードウェイのグランチャンピオン(GC)シリーズ第2戦で起こった大事故の余波を受けてメインレースのF-2000が中止されていますが、今回から復活しています。
もっとも、エントリーは4台、予選参加は3台と寂しいものになっています。予選順位は、1.高原敬武(マーチ742BMW)2分02秒1、2.長谷見昌弘(サーティーズTS-15BDA)2分04秒2、3.米山二郎(サーティーズTS-15BDA)2分07秒3、となっています。豪雨の決勝は、長谷見昌弘が快勝しています。

サポートイベントで、実質的なメインイベントであるFJ-1300は、1.長谷見昌弘(KE-FJ日産)2分11秒3、2.鮒子田寛(マーチホンダ)2分12秒6、3.歳森康師(ベルコ98A日産)2分12秒9、4.星野一義(マーチ733日産)2分12秒9、5.森泰章(マーチ743トヨタ)2分13秒5、6.杉崎直司(マーチ743日産)2分13秒6、7.西野弘美(ウメダSPL日産)2分13秒8、8.高田忠政(ノバ日産)2分14秒5、9.水谷敬一(ベルコ98A日産)2分13秒8、10.谷口芳浩(アルピーヌA364日産)2分15秒3、となっています。
長谷見昌弘は、FJ-1300でも快勝し、2カテゴリーを制覇しています。また、その他のサポートイベントは、FL-500は力身修(ハヤシ709スズキ)が2分25秒5で、ツーリングチャンピオンレースは長坂尚樹(サニークーペ)が2分28秒9で、それぞれポールポジションを獲得しており、相変わらずの強さを見せています。

プログラムの読み物は、「鈴鹿ダイヤモンドレースの展開と焦点」と題して、星島浩がレースの見どころを解説しています。FL500は、30台以上のエントリーがあり、参加台数も増え続けています。
レースの車両規定が安定していて、鈴鹿サーキットでも年間6回以上のレース開催が保証されており、マシンも、すべて日本製で、小島エンジニアリング、鴻池スピード、ハヤシ、マルチ、鈴木板金、伊藤レーシング、戸田レーシング、など、多数のコンストラクターが製造していて、1台当たりの価格も200万円しません。これらの要素によって参加者にとって魅力的なカテゴリーになっているわけです。
「鈴鹿ダイヤモンドレース出場ドライバー紹介」は、各カテゴリー出場予想ドライバー30人を紹介しています。高原敬武は、まだ22歳ながら、4月にはイギリスで日本人初のF1ドライバーになっています。「F1マシンは、とてもパワフルで、いい加減な精神力や技術力ではとても乗りこなせない」と語っています。
星野一義の評価は、「無口で、ひょうひょうとしたところがあるがフォーミュラに適した走行センスを持っている」と、興味深いものになっています。「グレート20観戦記」は、「AUTO SPORT」編集長の小川騏文による観戦記です。

「海外マシンに一矢むくわんと頑張る日本のコンストラクター」は、「AUTO TECHNIC」編集長の尾崎桂治による日本のコンストラクターの紹介です。
小島エンジニアリングは、スズキのオートバイチームを率いてきた京都の小島松久がリーダー。果実の輸入業を営みながら趣味のモータースポーツに足を突っ込み、小島エンジニアリングをひとりで動かしている実力者です。
「長谷見のように速いドライバーがマーチに乗っていては日本のレース界のためにならん。率先して国産マシンに乗ってもらわんといけないと思っているんですよ」と語っており、海外の優秀なマシンでレース活動をして得られるデータを基に、小島エンジニアリング製のマシンを作っています。
将来は、ヨーロッパにも国産マシンに日本人ドライバーでチャレンジしたいと考えています。
ノバエンジニアリングは、社長がレーシング・クォータリー(RQ)レーシング主宰者の山梨信輔、チーフデザイナーが同じくRQの解良喜久雄、で、FL500から出発し、FJ-1300をメインにしています。
F-2000の製作にも入っており、7月28日の富士のレースには、解良喜久雄が出場しています。また、レーシングマシンのメンテナンスも請け負っており、レース活動、マシンの製作・市販、マシンメンテナンスを6人でこなしています。
鈴木板金は、横浜のトラックのボディなどの板金が中心の会社で、社長の鈴木義雄がレースメカニックとして活躍した関係からレース部門を置いています。
ベルコ72シリーズは、日本で製作されたレーシングカーとしては最も完成されて優秀な成績を収めましたが、現在ではFJ-1300を中心に活動しています。チーフエンジニア兼メカニックは、日本のスターリング・モスの異名を持つ滝沢元営です。

「高原敬武のF2000レーシング・テクニック」は、彼の鈴鹿サーキットにおけるレーシング・テクニックを紹介しています。「ある部分にだけ力を入れることはない」と語るように、特別に好きなコーナー、苦手なコーナーというものは存在しないそうです。
「ニュースターが輩出するF1/F2世界」は、今宮純による注目ドライバーの紹介で、ニキ・ラウダ、ジョディ・シェクター、パトリック・ドゥパイエ、ジャック・ラフィー、桑島正美、などを取り上げています。「鈴鹿シルバーカップ・レース・シリーズ中間報告」もあります。

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