「AS DUSK FALLS」は、30年にわたる2つの家族の複雑な絡み合いを描くINTERIOR/NIGHT制作のオリジナルインタラクティブドラマです。
物語は、1998年、アリゾナ州の小さな町で起こった強盗事件があらぬ展開を迎えたところから始まります。
犠牲か、生存か。自身の人生を縛る家族からの解放は叶うのか? 愛する者のために何を犠牲にできるのか? 忌まわしい過去を乗り越えられるのか?
プレイヤーの取る選択が、裏切りと犠牲、再生の入り混じる容赦なき物語を大きく変化させていきます。
プレイする者を魅了する2冊のブックを通して、数十年にわたる多数のキャラクターの人生と関わり合いを体験するのです。
また、ローカルやオンラインで最大8人のプレイヤーと協力してプレイすることができ、各選択が物語る価値観を知る中で自分や一緒にプレイする人々の性格も明らかになっていきます。
INTERIOR/NIGHTは、2017年にイギリスのロンドンで誕生した若いインディーゲームスタジオです。
クリエイティブディレクターのキャロライン・マーシャルによって設立されましたが、彼は「HEAVY RAIN」、「BEYOND: TWO SOULS」といったインタラクティブドラマでリードゲームデザイナーを務めています。
両作品ともQUANTIC DREAMが開発し、ソニー・コンピュータエンタテインメントが発売しています。
「AS DUSK FALLS」は、INTERIOR/NIGHT初の作品となり、Xbox Game Studiosの発売となります。
ゲームは、「BOOK 1: 衝突」と「BOOK 2: 展開」という2つのブックで構成され、それぞれのブックに3つのチャプターがあります。
もっとも、チャプターは、「BOOK1: 衝突」はチャプター1からチャプター3まで、「BOOK 2: 展開」はチャプター4からチャプター6までとなっています。
そのことからもうかがえるように、それぞれのブックは独立したものではなく、「BOOK 1: 衝突」から「BOOK 2: 展開」へとつながっていきます。
2つのブックで30年にわたる2つの家族の複雑な絡み合いを描いているのですが、その2つの家族がホルト家とウォーカー家です。
ホルト家は、ダンテ・ロメロ保安官の金庫から現金を強奪してモーテルに人質を取って籠城。家族構成は、父ベア、母シャロン、長男タイラー、次男デール、三男ジェイ。
ウォーカー家は、引っ越しの道中でモーテルにいたところを人質となってしまいます。家族構成は、父ヴィンス、母ミシェル、娘ゾーイ、祖父ジム。
「BOOK 1: 衝突」では、1998年にホルト家の家族が金庫から現金を強奪してモーテルに立てこもり、そのモーテルから脱出するまでを描きます。
「BOOK 2: 展開」は、モーテル脱出後を中心に、モーテル籠城前の話と、2012年の後日譚を描きます。
本作が海外ドラマみたいなゲームと言われることがよくありますが、それはゲームが持つ雰囲気や現金強盗のモーテル立て籠もりといったシチュエーションや派手なストーリー展開だけを指したものではありません。
私は海外ドラマは大好きで何百本も見ていますが、海外ドラマの常道として複数のストーリーを並行して視聴者に見せるというものがあります。
犯罪ドラマであれば、警察と犯人、追うものと追われるもの、犯人を追うものと犯人に捕らわれているもの。それらのストーリーを同時に見せることで、視聴者がより深くドラマにかかわっていけるのです。
本作では、ホルト家とウォーカー家のお話を交互に見せることで、プレイヤーは両者に対して感情移入するとともに、物語の大筋が見えてきます。
また、時間軸を行き来することで、そうなることに至った経緯や理由も知ることができるとともに、プレイヤーとして物語の流れもにより深く介入することができます。
このあたりがインタラクティブドラマの真骨頂でもあり、私も含めてこの手のアドベンチャーゲームが大好きな人の心をつかんで離さないのです。
ちなみに、1チャプターあたり45分から65分ぐらいなので、そのあたりも海外ドラマみたいだと感じるところです。
さて、本作ではホルト家とウォーカー家のお話が交互に語られるわけですが、それぞれの家族の主人公となるのがジェイとヴィンスです。
プレイヤーが登場人物に感情移入して物語に介入できるのも、ジェイとヴィンスを介してで、「BOOK 1: 衝突」では特にその要素が強くなります。
もっとも、ジェイとヴィンスが物語の主人公かというとそうでもなく、タイトルカットからも分かるように、ジェイが主人公で、ヴィンスとゾーイが脇役となります。
さらに言うと、ゾーイはブックやチャプターの最初に登場してひとり語りすることが多く、ストーリーテラー的な役割を担っています。
「BOOK 1: 衝突」と「BOOK 2: 展開」を通じてジェイが主人公であるとともに、「BOOK 2: 展開」ではジェイとヴィンスだけでなく、より多くの人たちとなって物語にかかわれるようになります。
そうすることで、数十年にわたる多数のキャラクターの人生と関わり合いを体験するだけでなく、物語がより深みを増したものになっていくのです。
実際のところ、「BOOK 1: 衝突」ではクライムアクションの要素が強くなっていますが、「BOOK 2: 展開」ではそこに人間ドラマの要素が加わってきます。
プレイヤーがストーリーを進める過程でインタラクティブな要素を通じてそれぞれのキャラクターに対する思い入れが強くなっているということもあるのでしょうが、ストーリーそのものも物語の構成のうまさもそれに貢献しています。
構成のうまさという点では、インタラクティブドラマらしく、プレイヤーがキャラクターになりきって決断を迫られる場面が多々あります。
通常の選択は、15秒や20秒などといった時間制限があるとともに、選択肢が単に列挙されているだけでなく、画面に点在していたり、特定の選択肢が大きく書かれていたりして、プレイヤーの判断をより難しくしています。
また、[分岐点 選択は慎重に]という重要な選択を迫られる場面も少なからずあり、こちらはプレイヤーがじっくりと考えて判断できるようにという配慮からか時間制限はありません。
このあたりのプレイヤーの気持ちを揺さぶる選択肢の作り方には感心させられます。
もっとも、通常の選択が後々重要な意味を帯びてくる場合があり、通常の選択と言えども限られた時間内で慎重に選ぶ必要はあります。
QTE(クイックタイムイベント)は、アクションゲームやアドベンチャーゲームなどでは昔から使われる手法ですが、本作ではプレイヤーがキャラクターを直接は操作できない分、ちょっとしたアクションシーンにQTEが使われます。
アクションゲームのQTEの場合、時間制限がけっこう厳しめですが、本作のQTEは時間制限自体は緩めです。ただ、突然現れるため、心の準備ができていない場合もあり、結果的にQTEらしさを感じさせられることもあります。
また、QTEは、物語の進行に深くかかわってくる場合とそうでない場合があり、前者の場合もそれとは分からないため、できる限り100%成功させたいところです。
本作では、チャプターを終えるごとに概要と物語の軌跡が表示されます。概要は「価値観」、「特性」、「プレイスタイル」について評価が下されるもので、それぞれに何種類もあり、少し選択が異なるだけで結果が違ってきます。
これ自体、ストーリー展開には関与しないのですが、自分のプレイスタイルが分かるという点では面白いシステムです。
物語の軌跡は、プレイヤーが選択肢を選ぶことでどのように物語が進んだかをフローチャートで見ることができるものです。
ここで、「現在のタイムライン」、「以前に到達」、「未到達」、「分岐点の結果」、「ここからプレイ」、「ストーリーの転換点」、「死亡」、「分岐点」、「コミュニティの選択」を見たり実行したりできます。
チャートと言うと、私はアドベンチャーゲームの傑作「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」を思い出します。「セガサターン」でプレイしたのですが、このチャートを見ながらプレイしたものです。
本作では、それよりもビジュアル的に分かりやすくなっており、ストーリー展開を後から分析したり、プレイし直したりするのに役立ちます。
物語の軌跡を見ると選ばなかった選択が空白になっていることの多さに驚かされますが、幸いなことに「物語の軌跡をすべて埋める」という実績はないため少し気が楽です。
グラフィックは、リアル系で4K/HDR10で美しく描かれているのですが、「LIFE IS STRANGE」シリーズのようにキャラクターを直接操作することはできません。
本作は紙芝居と言われていますが、プレイヤーが選んだ選択肢に応じて、それぞれのキャラクターがコマ数が少ないパラパラ漫画のような動き方をします。
もっとも、背景に関してはパラパラ漫画ではなく、滑らかにアニメーションします。
つまり、滑らかなアニメーションをする背景の前で、コマ数の少ないキャラクターがパラパラ漫画のような動きをするというわけです。
これは最初こそ違和感を覚えるものの少しずつ慣れてきますが、それでも容量が大きなゲームだけにキャラクターも滑らかにアニメーションしてほしかったところです。
サウンドは、フルボイスになっており、経験豊かな声優陣が迫真のボイスアクティングをします。
ただ、せっかくの熱演なのに、音量が一定しないのが残念なところです。普通にしゃべっているのに声が小さくなったり大きくなったりするため、せっかくの熱演も台無しなのです。
また、日本語字幕と日本語音声のセリフが異なっていることも珍しくありませんでした。字幕と異なるセリフが流れてくるのは少し気になりました。
音量も字幕とセリフも、しっかりとチェックしてリリースしてほしかったものです。
このように本作は気になるところもあるにはあるのですが、本作がインタラクティブドラマとして楽しめるのは間違いないところで、キャロライン・マーシャルが独立して作ったスタジオのデビュー作としては十分に合格点がつけられます。
「BOOK 1: 衝突」のクライムアクション的な楽しさから、「BOOK 2: 展開」のそこに人間ドラマの要素が加わった物語の展開など、プレイするものを惹きつけて離さないものがあります。
また、終盤にかけてのストーリーの盛り上がりや奥深さは、良質な海外ドラマを見ているように心に染み入るものがあり、プレイし終えてから余韻に浸ることができます。
そして、途中でストーリーが分岐することによるバリエーション豊かな展開は、セリフを早送りできないことを差し引いても、複数回プレイしたくなるだけの魅力があります。
特に、エンディングは枝分かれしたマルチエンディングになっているのですが、どのエンディングにも奥行きがあり、どのエンディングを見ても心に刺さるものがあるため、複数回プレイするべきです。
クライムアドベンチャーゲームかなと思ってとりあえず始めてみたとしても、ゲームを終わってみれば良質な人間ドラマを味わえたと思えるはずなので、ドラマ性やストーリー性があるゲームが好きだという人はぜひプレイしてみてください。
【ウォークスルーインデックス】
#1(BOOK 1: 衝突(チャプター1: デザート・ドリーム))
#2(BOOK 1: 衝突(チャプター2: 基礎交渉術))
#3(BOOK 1: 衝突(チャプター3: 数秒間))
#4(BOOK 1: 衝突(チャプター1: デザート・ドリーム(アナザーチョイス)))
#5(BOOK 1: 衝突(チャプター2: 基礎交渉術(アナザーチョイス)))
#6(BOOK 1: 衝突(チャプター3: 数秒間(アナザーチョイス)))
#7(BOOK 2: 展開(チャプター4: シーマ))
#8(BOOK 2: 展開(チャプター5: エデンの園))
#9(BOOK 2: 展開(チャプター6: 連鎖))
#10(BOOK 2: 展開(チャプター4: シーマ(アナザーチョイス)))
#11(BOOK 2: 展開(チャプター5: エデンの園(アナザーチョイス)))
#12(BOOK 2: 展開(チャプター6: 連鎖(アナザーチョイス)))
#13(実績コンプリートへの道(#1-12で未解除の4実績解除法))
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