1974年5月19、20日/鈴鹿サーキット
F-2000・FJ-1300、FL-500、T1の4レースが開催されています。折からのオイルショックで、トヨタ、ニッサン、マツダなどのワークスは表立ったモータースポーツ活動を自粛し、ワークスドライバーがプライベーターとしてレース活動を開始しています。また、田中弘は、ドライバーとしては引退し、ヒーローズレーシングを結成してチームオーナーとして参戦しています。
F-2000のエントリーは5台と少なく、例によってFJ-1300との混走になりますが、少数精鋭の豪華な顔ぶれになっています。予選順位は以下の通りです。
1.北野元(マーチ742BMW)2分01秒7
2.黒沢元治(マーチ742BMW)2分02秒3
3.生沢徹(マーチ732BMW)2分03秒6
4.高原敬武(マーチ742BMW)2分03秒8
5.真田睦明(サーティーズTS-15BDA)2分05秒1
6.星野一義(マーチ733日産)2分11秒0
7.長谷見昌弘(マーチ733改日産)2分12秒5
8.歳森康師(ベルコ98A日産)2分13秒7
9.谷口芳浩(アルピーヌA364日産)2分13秒9
10.森泰章(マーチ743トヨタ)2分15秒0
F-2000では上位4台が旧来のコースレコード2分04秒0を破り、FJ-1300ではこれまでの記録を6秒も上回っています。ちなみに、レースは北野元が速さを見せながらも2度に渡ってスピンし、黒沢元治が優勝、2位生沢徹、3位高原敬武、となっています。FJ-1300は、星野一義が優勝、長谷見昌弘が2位でゴールしています。
サポートイベントとなるFL-500・チャンピオンレースは、力身修(ハヤシ709スズキ)が2分25秒9で、2位の佐々木修六(KS-05ホンダ)の2分28秒7をぶっちぎってのポールポジションを獲得しています。
もうひとつのサポートイベントのツーリングチャンピオンレースは、常勝・長坂尚樹(サニークーペ)の2分28秒8を差し置いて、川瀬守弘(サニークーペ)が2分28秒5でポールポジションを獲得しています。
プログラムの読み物は、「<<鈴鹿>>グランプリシリーズの意義と見どころ」と題して、星島浩がレースの意義と見どころを解説しています。
黒沢元治は、「今年は石油ショックの影響で、カネのかかるレース出場は経済的には大変なんです。しかし、今年こそは自分で納得できるレースをやりたいと心に決めていましたし、そのためにニューマシンも用意したことです。
なによりも、私のレース出場を待っていて下さった観客のみなさんのためにも、きびしい社会情勢のなかにありながら、せっかく私に援助してくださろうというスポンサーさんのためにも、一生懸命やらなくっちゃ、そう思ったんです。ぜひご声援ください」と意欲を語っています。
また、高原敬武も、F1のノンタイトル戦で13位に入り、有力ドライバーとしてピックアップしています。更に、北野元のF2000初参戦にもふれ、「フォーミュラでは新人ですから」という謙遜とは裏腹に期待していいと言います。真田睦明、生沢徹の参戦にもふれています。
「フォーミュラレースに賭ける男の群像」では、「AUTO TECHNIC」編集長の尾崎桂治が、出場ドライバーにスポットライトを当てています。黒沢元治は自らのレーシングチームを設立して万全の体制を敷き、北野元はフォーミュラレースで最もその真価を発揮するとし、高原敬武はF1参戦の経験が生かせ、真田睦明や漆原徳光にも期待するとしています。
「出場マシンとコンストラクター」では、鈴鹿サーキットを走るコンストラクターのマシンを紹介しています。マーチエンジニアリング、GRD(グループレーシングデベロップメント)、MRD(モーターレーシングデベロップメント=ブラバム)、チーム・サーティース、アルピーヌ、鈴木板金(ベルコ)、ノバエンジニアリング(元レーシング・クオーターリー)、ハヤシカーショップ、小島エンジニアリング、鴻池スピード、マルチレーシング、の各コンストラクターです。
「黒沢元治のレーシング・テクニック」では、横越光広が彼のレーシング・テクニックを解説しています。黒沢元治は、ヨーロッパ遠征でウィルソン・フィッティパルディのきれいなコーナリングラインを見て感服し、オーソドックスな走りを実践します。
また、サスペンション・セッティングに非凡な才能を見せもします。そして、黒沢元治によると、「ツーリングカーやフォーミュラカーといった、マシンの違いによるドライビング・テクニックにほとんど変わりはない」そうです。
彼は、すべてのコーナーで早めにインに切り込むそうです。つまり、理想的なコーナリングラインよりも、進入時からクリッピングポイントまで、やや内側を通ることになります。
なぜなら、極限を追求する理想的なコーナリングでわずかでもミスしてスピンやクラッシュするよりも、それが安全で確実な方法だからです。更に、彼は、コーナー進入の際の目標物を持たないそうです。
6km程度のコースであれば”感覚”で覚えてしまうことができるため、コース外に視線をそらすよりも、感覚に頼った方がいいからだそうです。
それ以外の読み物では、「これからのツーリングカーレース<<その1>>」、「コース記録の更新なるか」、「第1回鈴鹿エコランに寄せて」などが掲載されています。
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